営業経理と経理の違いは、受け持つ範囲です。営業経理は受注から請求・入金消込・売掛金の管理までを担い、取引先とのお金のやり取りに近い場所で動きます。経理(一般経理)は記帳・支払・月次決算まで、会社全体のお金を扱います。
中小企業では、営業経理という担当を置かずに、営業担当が請求と入金確認を兼ねている会社が少なくありません。本記事では、2つの違いを表で比べたうえで、兼任で起きる失敗と、社内に置くか外に出すかの分け方を示します。
この記事は、営業担当が請求書の発行や入金の確認まで抱えていて、経理との分け方に迷っている中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。営業経理の範囲は会社ごとに異なるため、一般的な分け方として示します。
この記事でわかること- 営業経理と経理が受け持つ範囲の違い
- 営業経理・一般経理・財務の分け方
- 営業経理が毎月回す5つの作業
- 営業が兼任したときの失敗と、外に出す判断
営業経理と経理は「受け持つ範囲」が違う
営業経理は取引先ごとの請求と回収を、経理は会社全体の記帳と決算を受け持ちます。仕事の中身は重なりますが、見ている単位が違います。
営業経理とは、受注・売上の計上・請求書の発行・入金消込・売掛金の管理など、販売に伴うお金の処理を担う経理の仕事です。経理とは、会社のすべての取引を記帳し、支払と月次・年次の決算までまとめる仕事です。
バクラクの解説は、入金管理を「提供したサービス等の対価に対する入金状況を確認し、売掛債権の回収状況や残高を管理する業務」としています。営業経理の中心は、この入金管理です。
営業経理は、取引先と営業担当の間に立つ仕事です。「どの取引先に、いくら請求し、いつ入るか」を1件ずつ追います。
経理は、その結果を含めた会社全体の数字を締めます。営業経理が売掛金を正しく消し込まないと、経理の月次決算も締まりません。営業経理は経理の上流にある仕事と考えると、関係がつかめます。
会計・経理・財務という言葉の範囲は、会計と経理の違い|税理士に任せても社内に残る経理の作業で整理しています。
営業経理と経理を5項目で比べる
営業経理と経理は、扱う相手・単位・締めの時期で差が出ます。表で並べると、自社でどちらが手薄かが見えます。
| 比較項目 |
営業経理 |
経理(一般経理) |
| 主な相手 |
取引先・営業担当 |
社内の全部門・税理士 |
| 扱う単位 |
取引先ごと・請求書ごと |
会社全体の勘定科目 |
| 主な作業 |
請求書の発行・入金消込・売掛金の管理 |
記帳・支払・給与・月次決算 |
| 締めの時期 |
取引先の締め日・入金日ごと |
月末・期末 |
| 遅れたときの影響 |
未入金に気づけず回収が遅れる |
試算表が出ず経営判断が遅れる |
大きな会社では、営業経理を営業部の近くに置くことがあります。中小企業では、1人の経理担当が両方を受け持つか、営業経理の分だけ営業担当が抱えている形が多くなります。
経理と財務の分け方は、経理と財務の違い|兼任の社長が資金繰りで詰まる3つの落とし穴で扱っています。
経理の仕事はどう分かれる?3つの呼び方
経理の仕事は、営業経理・一般経理・財務の3つに分けると、誰が何を持つかを決めやすくなります。呼び方は会社ごとに違いますが、中身はこの3つに収まります。
1つ目の営業経理は、請求・入金消込・売掛金の管理です。取引先の数と請求書の枚数に比例して重くなります。
2つ目の一般経理は、記帳・支払・給与・月次決算です。会社の規模が変わらなければ、毎月の量はあまり動きません。
3つ目の財務は、資金繰りと銀行との交渉です。社長が兼ねている会社がほとんどでしょう。
私たちの見方では、中小企業でいちばん担い手が曖昧になるのは営業経理です。営業は「売るのが仕事」、経理は「締めるのが仕事」と考え、間の請求と回収が誰の仕事か決まらないまま残ります。
営業経理が毎月回す5つの作業とは?
営業経理の作業は、売上計上・請求書の発行・入金消込・未入金の確認・営業への連絡の5つを毎月回します。1つ止まると、次の月に積み残しが出ます。
- 売上を計上する(納品・検収の記録から、その月の売上を決める)
- 請求書を出す(取引先の締め日に合わせて発行する)
- 入金を消し込む(入った金額をどの請求書の分か突き合わせる)
- 未入金を確かめる(期日を過ぎた売掛金を一覧にする)
- 営業へ知らせる(督促するか、取引を続けるかを営業と決める)
いちばん手間がかかるのは3つ目の入金消込です。弥生の解説は、入金消込を「売掛金や未収金などが入金された際に行う、債権の残高を減らす作業」と説明しています。
同じ解説は、消込が漏れる原因として、明細にカタカナの名義と合計額しか出ないこと、複数の請求書がまとめて振り込まれることを挙げています。取引先が増えるほど、突き合わせの手間は膨らみます。
売掛金の管理の手順は、売掛金管理の方法とは?にまとめています。
営業が請求と入金確認を兼ねると何が起きるか
営業担当が営業経理を兼ねると、未入金に気づくのが遅れ、月次決算も締まらなくなります。よくある失敗を、起きたこと・原因・避け方の順に示します。
失敗1: 未入金に気づくのが翌々月になる
起きること: 入金の確認が営業担当の手元に止まり、期日を過ぎた請求に誰も気づきません。
原因: 営業担当は新しい受注を優先します。入金の確認は「手が空いたら見るもの」になりがちです。
避け方: 未入金の一覧を作る人を、営業とは別に1人決めます。一覧は毎月の決まった日に出すことにします。
失敗2: 請求書の控えが営業担当ごとに散らばる
起きること: 請求書を各自のパソコンで作り、経理が売上の全体をつかめません。
原因: 請求書の書式と保存先が決まっていないためです。
避け方: 請求書の発行を1か所にまとめ、営業は請求の依頼だけを出す形に変えます。
失敗3: 消込が終わらず、試算表が出ない
起きること: 売掛金の残高が合わず、経理が月次決算を締められません。
原因: まとめて振り込まれた入金を、どの請求書の分か営業に聞かないと分からないためです。
避け方: 取引先の名義と請求書番号の対応表を作り、消込を経理側で完結させます。
請求書まわりで外に出すときの失敗は、請求書の経理BPOでやりがちな失敗5つでも扱っています。
営業経理は社内に置くか、外に出すか?会社の状態で決める
営業経理は、取引先の数と入金のずれ方で、社内に置くか外に出すかを決めます。専任を1人雇う前に、作業ごと外に出す道もあります。
| 会社の状態 |
営業経理の担い手 |
次の一歩 |
| 取引先が数社・毎月同じ金額 |
社長か営業+会計ソフト |
銀行明細の自動取り込みを使う |
| 取引先が数十社・経理担当1人 |
経理担当(請求の依頼は営業) |
請求書の発行を1か所にまとめる |
| 未入金に気づくのが月末以降・締めが遅れる |
経理BPOに作業ごと委託 |
督促の判断と与信だけを社内に残す |
取引先が数社で、請求も入金も毎月同じなら、外に出す必要はありません。会計ソフトの自動取り込みで足り、委託費の方が重くなります。
未入金に気づくのが月末以降になっているなら、分ける時期です。当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけ、中小企業が経理のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。私たちの見方では、ソフトを入れても「請求と回収を誰が持つか」が決まらない会社は、入れる前と同じところで止まります。
当社の経理BPOを導入した10社では、月次決算が締まるまでの日数が中央値で15日から7日に短くなりました(2024年4月〜2026年8月・当社の一次データ。個社差は大きいです)。2023年1月〜2026年8月に契約した経理BPO10社のうち、2年以内に解約したのは1社でした(継続率90%)。
外に出すときも、取引先への督促の判断と与信は社内に残します。どこまで任せられるかは、経理の外注は丸投げNG?任せてはいけない4業務で確かめられます。
よくある質問
営業経理と経理の違いは何ですか?
受け持つ範囲です。営業経理は請求・入金消込・売掛金を、経理は記帳から決算・支払まで会社全体を扱います。
営業経理の仕事は営業担当が兼ねてもよいですか?
取引先が少なく入金が毎月ずれないなら兼ねられます。未入金に気づくのが月末以降なら分ける時期です。
営業経理の仕事はどこまで外に頼めますか?
請求書の発行・入金消込・未入金の一覧づくりまで頼めます。取引先への督促の判断と与信は社内に残します。
経理BPOに頼むと何をしてもらえますか?
記帳・請求書の発行・支払の準備・月次の締めまでを受けます。支払の承認と資金の判断は社内に残します。
頼んでからどのくらいで変化が見えますか?
当社の10社では、月次決算の日数が中央値で15日から7日になりました。個社差は大きく、本文で条件を示しています。
営業経理を外に出さないほうがよいのはどんな場合ですか?
取引先が数社で、請求も入金も毎月同じ金額の会社です。会計ソフトの自動取り込みで足り、委託費の方が重くなります。
まとめ: 営業経理の担い手を、営業と別に決める
営業経理は請求と回収を、経理は会社全体の記帳と決算を受け持ちます。営業経理が止まると、経理の月次決算も締まりません。
今日できる一歩は、先月の請求書のうち、まだ入金を確かめていないものを数えることです。1件でも営業担当の記憶に頼っているなら、未入金の一覧を作る人を決めてください。
請求書の処理を軽くする方法は、請求書処理の効率化と5つの改善策でも紹介しています。
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