自営業の経理のやり方は、事業用口座を分ける・記帳の頻度を決める・経費の判断基準を決める・記録ツールを1つに絞るという、4つの土台を先に作ることです。この順番を後回しにすると、確定申告の直前になって慌てて数字を整理する状況に陥りやすくなります。
本記事では、4つの土台の具体的な作り方、つまずきやすい失敗パターン、自分で回す限界を感じたときに外注へ切り替える判断基準まで解説します。
この記事は、自営業を始めたばかりで経理のやり方を自分で決めたい方向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理を自分で回すための4つの土台
- 記録ツールの選び方(手書き・エクセル・クラウド会計)
- 自営業の経理でつまずきやすい失敗パターン
- 自分で回す限界と外注に切り替える判断基準
自営業の経理のやり方は「4つの土台」を先に作ると崩れにくい
自営業の経理は、土台を先に4つ決めておくと、取引が増えても自分だけで回しやすくなります。
近い論点を飲食店の経理のやり方で扱っています。
実際の進め方は会社の経理のやり方|個人事業主と違う4つのポイントで整理しています。
自営業の経理を自分で回す4つの土台
経理の4つの土台とは、口座・頻度・判断基準・ツールという、経理を続けるうえで最初に固定しておくべき4つの決めごとのことです。
あわせて個人事業主の経理のやり方もご覧ください。周期での仕組み化と、本記事の4つの土台は組み合わせて使えます。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。つまずきの多くは、この4つを決めないまま記帳を始めてしまうことが原因です。
| 土台 |
決めること |
決めないとどうなるか |
| 口座 |
事業用と生活用を分ける |
経費の判断が毎回複雑になる |
| 頻度 |
記帳する曜日を固定する |
レシートが溜まり内容を忘れる |
| 判断基準 |
経費・按分の線引きを決める |
迷うたびに時間がかかる |
| ツール |
記録方法を1つに絞る |
二重管理で入力が漏れる |
この4行を先に決めるだけで、記帳のたびに悩む場面が大きく減ります。次の章から、土台ごとの具体的な決め方を見ていきます。
土台1: 事業用口座とプライベート口座を最初に分ける
土台の1つ目は、事業用の口座と生活用の口座を、記帳を始める前に分けておくことです。
あわせて通帳だけで記帳するやり方もご覧ください。
法律上、口座を分ける義務はありません。ただし同じ口座に事業と生活のお金が混ざると、1件ずつどちらの支出か判断する手間が発生します。この手間は取引が増えるほど重くなり、月末にまとめて処理しようとすると内容を思い出せなくなります。
事業用口座を作る際は、屋号付き口座である必要はなく、個人名義の口座を1つ事業専用に決めるだけでも十分です。売上の入金と経費の支払いをこの口座に集約すると、通帳の記録だけで大まかな資金の流れを把握できます。
注意: 生活費を事業用口座から直接引き出すのはNG
生活費を都度引き出すと、通帳の記録に事業と無関係な出金が混ざります。生活費は月1回まとめて「事業主貸」として引き出す形に統一してください。
クレジットカードも同様に、事業用と生活用を分けておくと、明細から経費を拾う作業が速くなります。会計ソフトと口座・カードを連携させれば、この分離がそのまま自動仕訳の精度にも直結します。
口座を分けるタイミングは、開業の直後がもっとも負担が軽く済みます。取引が積み上がってから分けようとすると、過去分をさかのぼって仕分け直す作業が発生し、かえって手間が増えます。すでに取引が混ざってしまっている場合も、直近の取引から新しい口座へ切り替え、過去分は概算で整理するといった割り切りで十分です。完璧に遡ろうとせず、今日から新しい口座を使い始めることを優先してください。
土台2: 記帳の頻度を「週1回」など先に固定する
土台の2つ目は、記帳する頻度をあらかじめ固定し、レシートを溜めない仕組みを作ることです。
記帳の頻度を決めずに「時間があるとき」に回そうとすると、そのまま数か月放置してしまいがちです。曜日を先にカレンダーへ入れておくと、後回しにしにくくなります。
私たちが導入支援の現場で相談を受ける中でも、レシートを月末にまとめて処理しようとして、内容を思い出せず仕訳を誤るケースは珍しくありません。少なくとも週に1回、決まった曜日に処理する形が挫折しにくい頻度です。
スマートフォンで領収書を撮影し、その場で会計ソフトのアプリに取り込む方法も有効です。移動中や外出先での支払いも、その場で処理してしまえば、週1回の記帳日にまとめる負担がさらに軽くなります。判断に迷う取引が出てきたら、無理にその場で確定させず、仮の科目で記帳して週次のタイミングで見直す方法も実用的です。
土台3: 経費と家事按分の判断基準を先に決めておく
土台の3つ目は、経費に計上できる範囲と家事按分の割合を、取引が発生する前に決めておくことです。
関連する内容として楽楽精算の経費精算のやり方も公開しています。
家事按分とは、自宅家賃や電気代のように事業と生活の両方に使う費用を、業務で使った割合分だけ必要経費に計上する処理のことです。
国税庁の所得税基本通達45-2があります。この通達では、業務の遂行上必要な部分が支出全体の50%を超える場合、その全体を必要経費にできるとされています。50%以下であっても、必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分を必要経費に算入して差し支えないとされています。
按分の比率は、面積比や使用時間など、説明できる根拠で決めます。比率を先に固定し、年1回だけ見直すルールにしておくと、あとから根拠を聞かれても説明に困りません。毎月比率を変えると、根拠を自分でも説明できなくなります。
勘定科目も、迷いやすいものほど先にルールを作っておきます。「消耗品費」と「事務用品費」のように判断が割れやすい科目は、事業の実態に沿って基準を1つ決め、以降は機械的に当てはめると判断の時間を減らせます。
より体系的な仕組み化を検討する場合は、個人事業主の帳簿の付け方も参考にしてください。
判断基準を決める作業とあわせて、帳簿と書類の保存義務も確認しておく必要があります。国税庁の個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存についてでは、2014年1月の改正により白色申告者にも記帳と帳簿・書類の保存義務が課されているとされています。帳簿は原則7年、請求書や領収書などの書類は5年の保存が必要です。
「白色申告だから記帳は不要」という思い込みが、あとから慌てる原因になりがちです。私も相談を受ける中で、この保存義務を正確に把握していない自営業の方に何度も出会ってきました。土台を決めるタイミングで、保存の仕組みもあわせて作っておくと安心です。
土台4: 記録ツールを1つに絞る(手書き・エクセル・クラウド会計の選び方)
土台の4つ目は、記帳に使うツールを1つに絞り、複数のツールを並行して使わないことです。
近い論点をfreeeの経費精算のやり方で扱っています。
記録ツールの向き不向き
当社が導入支援の現場でよく使う目安は、月の取引件数20件です。20件以下で科目判断もシンプルな場合は、手書きの帳簿やエクセルで十分に運用できます。無料で始められる手軽さが利点です。一方で取引件数が月20件を超える、複数の口座やカードを使う、申告時期に慌てたくないという場合は、クラウド会計への切り替えが向いています。
クラウド会計は、freeeやマネーフォワード クラウドのように口座やカードの明細から仕訳候補を自動で提示してくれるサービスが中心です。入力の手間そのものを減らせます。エクセルで記帳している場合の限界と移行のタイミングは、経理の自動化はエクセルでどこまで可能?で詳しく解説しています。
ツール選定の軸をさらに広げたい場合は、経費精算システムの選び方|比較する軸も参考になります。
ツールを途中で複数並行させると、片方に記帳した内容がもう片方に反映されず、二重計上や記帳漏れの原因になります。1つに絞ると決めたら、既存のメモや手書き帳簿はそのツールへ集約してください。
自営業の経理でつまずきやすい3つの失敗パターン
自営業の経理でつまずく典型は、レシートを溜める、口座を分けない、判断基準を決めないまま始めることの3つです。
あわせて開業したばかりの経理代行、使うべき?判断基準3つもご覧ください。
自営業の経理でつまずきやすい3つの失敗パターン
1つ目はレシートを溜めて月末にまとめて処理することです。2つ目は口座を分けずに事業と生活のお金が混ざることです。3つ目は科目の基準を決めず、その都度判断してしまうことです。どれも「あとでまとめてやろう」という先送りが根っこにあります。
開業直後は取引が少ないため、自己流でもなんとか回ってしまいます。ところが取引が増えた段階で急に破綻する、というのがよくあるパターンです。原因の多くは、取引が少ないうちに土台を決めていなかったこと。
一度崩れた経理を立て直すときは、過去分を完璧に遡って修正しようとしないことも大切です。今日から新しいルールを守ることに集中したほうが、結果的に早く軌道に戻ります。優先度の高い直近3か月分から手を付け、それ以前は概算でまとめて処理するといった割り切りも、実務上は有効な選択肢です。
3つの失敗パターンに共通するのは、「あとでまとめてやろう」という先送りの積み重ね。負担を感じ始めてから土台を作るのではなく、負担が軽いうちに先回りして決めておくことが、結果的にいちばんの近道です。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
自分で回す限界と外注に切り替える判断基準
自分で回す限界のサインは、月次確認が3か月以上滞り、本業の時間を圧迫し始めた状態です。
自分で続ける目安と外注を検討する目安
取引件数が少なく変動が小さい、月次確認が滞っていない、申告時期に余裕があるなら、自分で続けても大きな負担にはなりません。逆に月次確認が3か月以上滞る、科目判断に毎回時間がかかる、本業の時間を圧迫しているという状態なら、外注を検討する段階です。
| 状態 |
自分で続ける目安 |
外注を検討する目安 |
| 月次確認 |
滞りなく毎月終えられている |
3か月以上滞っている |
| 科目判断 |
基準どおり機械的に決められる |
毎回時間がかかる |
| 本業への影響 |
圧迫を感じていない |
本業の時間を圧迫している |
経理代行の費用相場や選び方は、経理代行は個人事業主でも使える?で解説しています。外注するかどうかをさらに細かく判断したい場合は、経理外注の判断基準5つも参考にしてください。
外注する範囲は、記帳のすべてを任せる必要はありません。日次の記帳だけを依頼し、月次確認や年次の申告準備は自分で続けるといった、部分的な組み合わせ方もあります。まずは負担が大きい部分だけを切り出して相談してみると、費用と手間のバランスを取りやすくなります。判断に迷う場合は、無理に一人で結論を出さず、一度相談してみるだけでも進め方が整理しやすくなります。
よくある質問
自営業の経理のやり方は何から始めればいいですか?
まず事業用口座を分け、記帳の頻度を週1回など先に固定してください。
経理の記帳は手書き・エクセル・クラウド会計のどれがいいですか?
月の取引が20件以下なら手書きやエクセル、超えるならクラウド会計が向きます。
事業用口座は必ず分けないといけませんか?
法律上の義務ではありませんが、分けないと経費の判断が毎回複雑になります。
家事按分の割合はどう決めればいいですか?
業務で使った部分を明らかに区分できれば、50%以下でも必要経費にできます。
自分で経理を回す限界はどう見極めますか?
月次確認が3か月以上滞り、本業の時間を圧迫し始めたら外注を検討する段階です。
記帳の頻度はどのくらいが適切ですか?
レシートを溜めない頻度として、少なくとも週1回の記帳を目安にしてください。
まとめ: 自営業の経理は4つの土台を先に決めると自分でも回せる
自営業の経理のやり方は、事業用口座を分ける・記帳の頻度を決める・経費の判断基準を決める・記録ツールを1つに絞るという4つの土台を先に作ることが出発点です。取引が少ないうちに決めておけば、増えてからも慌てずに済みます。
経理が崩れるきっかけは、たいてい「あとでまとめてやろう」という先送りです。まずは事業用口座を分けることから試してみてください。
月次確認が3か月以上滞り、本業の時間を圧迫し始めたら、無理に一人で抱え込む必要はありません。経理BPOの無料相談で、自分に合う進め方を一緒に整理することもできます。
4つの土台のうち、まだ決めていないものがあるなら、そこから1つずつ着手してみてください。全部を一度に整えようとせず、優先度の高いものから手を付けることが、無理なく続けるいちばんの近道です。