バックオフィスの業務改善とは、経理・人事・総務など間接部門の業務を見直し、無駄な作業や属人化をなくして生産性を高める取り組みです。進め方を誤ると、ツールを導入しただけで終わり、現場の負担が変わらないという失敗も起こります。本記事では、業務改善が進まない原因、4ステップの進め方、可視化・標準化・ツール化・外部委託という4つの手段の使い分け、部門別の着眼点、やってはいけないNG例まで解説します。
この記事は、バックオフィスの業務量に対して人手が足りず、何から手をつければいいか迷っている中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- バックオフィスの業務改善が進まない4つの原因
- 業務改善を進める4ステップ
- 可視化・標準化・ツール化・外部委託の使い分け
- 部門別の着眼点とやってはいけないNG例
バックオフィス業務改善とは?対象になる業務と進め方の基本
バックオフィスの業務改善とは、間接部門の業務プロセスを見直し、無駄な作業や属人化を減らして生産性を高める取り組みを指します。
あわせて経理の残業を減らす7つの方法もご覧ください。
バックオフィス業務改善とは、経理・人事・総務など直接売上を生まない部門の業務を対象に、作業の無駄・属人化・情報共有の不足を洗い出して見直すことです。目的はコストを削ることではなく、限られた人員で業務が回る状態をつくることにあります。
対象になる業務は部門によって異なります。着眼点を整理すると次のとおりです。
| 部門 |
主な業務 |
改善の着眼点 |
| 経理 |
記帳、請求書処理、月次決算 |
入力の二重化、締め作業の遅れ |
| 人事 |
勤怠管理、給与計算、社会保険手続き |
申請書の紙運用、確認作業の重複 |
| 総務 |
契約書管理、備品管理、来客対応 |
情報の属人的な管理、探す時間 |
業務改善とひとくくりに言っても、経理の締め作業を速くすることと、総務の書類を探す時間を減らすことでは、必要な打ち手が違います。まず改善したい業務を1つに絞り込むことが、遠回りに見えて最も早い進め方です。
私たちがG-ranで3,200店舗以上の運営を支援してきた中でも、経理や総務の担当者が1〜2人しかいない会社ほど、業務改善に手が回らない傾向を数多く見てきました。改善に必要なのは大がかりな刷新ではなく、負担の大きい作業を1つ選ぶという小さな一歩。
バックオフィスの業務改善が進まない4つの原因
バックオフィスの業務改善が進まない原因は、無駄な業務の放置・人員補充の後回し・属人化・ミスが許されない重圧の4つに整理できます。
バックオフィスの業務改善が進まない4つの原因
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」は、業務改善が進まない要因として4つを挙げています。無駄な業務プロセスの放置、コスト部門として人員補充が後回しにされやすい体質、ベテラン社員の経験なしでは回らない属人化、そしてミスが許されない重圧です。
株式会社kubellが2026年4月29日〜5月8日に実施した調査(従業員300名未満企業のバックオフィス担当者86名対象)でも、属人化を課題と感じている担当者は55.8%にのぼりました。同調査では、担当者の退職・休職時に「重大な支障または大きな混乱が生じる」と回答した割合は44.2%と、半数近くに達しています。
同調査では、ノンコア業務に追われてコア業務に集中できないと感じる担当者も65.1%にのぼりました。原因を放置したまま忙しさだけが続くと、改善に着手する余裕そのものが失われていきます。
4つの原因は互いに関係し合っています。属人化した業務ほど手順の無駄が放置されやすく、人員が補充されないままノンコア業務に人手を取られる悪循環が生まれます。原因を1つずつ切り分けて対処することが、悪循環を断つ近道です。
バックオフィス業務改善の4ステップ
バックオフィス業務改善は、問題の洗い出しから効果の振り返りまで、4つのステップを順に進めます。
選ぶときの基準を先に押さえるなら、バックオフィスBPOとは?が参考になります。
バックオフィス業務改善の4ステップ
ステップ1: 業務を洗い出し問題を定義する
まず、日々の業務を書き出し、どこに時間がかかっているかを可視化します。感覚ではなく、作業ごとの所要時間を数値で押さえることが、次のステップの精度を左右します。
ステップ2: 原因を特定する
時間がかかっている業務について、その原因を特定します。二重入力なのか、確認作業の重複なのか、属人化した手順なのかによって、有効な打ち手は変わります。
ステップ3: 施策を計画し実行する
特定した原因に対して、標準化・ツール化・外部委託のいずれかで施策を計画し、実行します。例えば月次決算が遅れている場合、単純な入力ミスなのか、承認フローの停滞なのかで、有効な打ち手はまったく異なります。複数の施策を同時に進めず、1つずつ効果を確かめながら進めると、失敗しても原因を切り分けやすくなります。
ステップ4: 効果を振り返り次の施策につなげる
施策の前後で作業時間や件数を比較し、効果を振り返ります。改善しなければ、原因の特定に戻ってやり直します。
この4ステップは1回で終わらせるものではありません。1つの業務で成果が出れば、同じ型を別の業務にも展開できます。逆に、複数の業務を一度に変えようとすると、何が効果につながったのか分からなくなるため注意してください。
改善の4つの手段|可視化・標準化・ツール化・外部委託
業務改善の手段は、現状を可視化する・手順を標準化する・ツールで自動化する・外部に委託するという4つに分けられます。
| 手段 |
内容 |
向いている場面 |
| 可視化 |
業務の洗い出しと作業時間の計測 |
すべての改善の出発点 |
| 標準化 |
手順書・マニュアルの整備 |
担当者ごとにやり方が違う業務 |
| ツール化 |
クラウドツールやRPAでの自動化 |
定型的な繰り返し作業 |
| 外部委託 |
専門会社への業務委託 |
社内に知見がない専門業務 |
4つの手段のうち、最初に検討されがちなのがツール化。ただし、業務を整理せずにツールだけ導入すると、かえって負担が増えることがあります。
ワークフロー総研が公表した「人手不足に悩むバックオフィス担当者に聞いた業務実態調査」によると、システム化を行った担当者のうち82.2%が業務負担の軽減を実感できていません。主な理由は「システム連携ができておらずデータの二重入力が発生」で、60.8%を占めました。
標準化も、手順書を作るだけでは定着しません。作った手順書を実際に別の担当者が使ってみて、分かりにくい箇所を直す工程まで含めて、初めて属人化対策として機能します。
ツール化の前提として、まず業務の流れを整理する必要があります。帳簿まわりの入力作業を自動化する具体的な手順は、仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップで解説しています。
生成AIを事務作業に取り入れる方法に関心がある場合は、店舗の事務作業をAIで効率化する5つの方法も参考になります。
標準化や可視化を社内だけで進める余裕がない場合、外部委託という選択肢もあります。委託できる業務範囲やメリットは、バックオフィスアウトソーシングの5つのメリット【2026年】で詳しく整理しています。
部門別に見る業務改善の着眼点(経理・人事・総務)
業務改善の着眼点は、経理・人事・総務のどの部門を対象にするかによって変わります。
経理は、記帳や請求書処理のように定型化しやすい業務が多く、標準化とツール化の効果が出やすい部門です。一方で、月末月初に業務が集中しやすく、属人化していると担当者が休むだけで締め作業が止まるリスクがあります。
経理の属人化を防ぐ具体策は、経理の属人化を解消する5つの方法|原因とリスクも解説にまとめています。
帝国データバンクが2026年2月20日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」(有効回答1万620社)では、正社員の人手不足を感じている企業が52.3%にのぼりました。
経理担当者の採用が難しい状況を踏まえた対策は、経理の人手不足対策8つ|原因とすぐできる対応を解説で解説しています。
人事は、勤怠管理や給与計算のように、紙の申請書とExcelの併用で二重確認が発生しやすい部門です。申請から承認までの経路を1本化するだけでも、確認漏れは大きく減ります。紙の申請書を電子化するだけでも、承認までの日数が縮まったという声を、支援先の管理部門からよく聞きます。
総務は、契約書や備品の管理が特定の担当者の記憶に依存しやすい部門。管理台帳を整備し、誰が見ても現状が分かる状態にしておくことが、属人化を防ぐ第一歩になります。
経理・人事・総務のどこから着手するか迷う場合は、担当者の残業時間が最も長い部門から見直すと、効果を実感しやすくなります。
業務改善でやってはいけないNG例と注意点
業務改善でやってはいけないのは、現状把握をせずにツール導入から始めることと、全業務を一度に変えようとすることです。
業務改善のNG対応とOK対応
注意: 効果検証をしないまま次の施策に進まない
改善策を実行した後に効果を数値で確認しないと、負担が本当に減ったのか分からないまま次の施策に手を広げてしまいます。1つの施策ごとに、作業時間の変化を必ず確認してください。
担当者1人だけの判断で進め方を決めてしまうこともNG対応です。進め方を共有していないと、担当者が変わった途端に元のやり方に戻ってしまいます。私は、管理部門の責任者から「担当者が退職した途端、整えたはずの手順が使われなくなった」という相談を受けたことがあります。手順書を作るだけでなく、複数人で運用する体制まで整えておくことが定着の分かれ目です。
どの業務から整理すべきかは、バックオフィスの現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
改善を定着させるための振り返り方法
改善を定着させるには、施策の効果を定期的に数値で振り返る仕組みが欠かせません。
月に一度、作業時間や件数の変化を確認する場を設けると、効果が出ていない施策に早く気づけます。振り返りの頻度は、月次決算のタイミングに合わせると社内の習慣として定着しやすくなります。
振り返りの場は、必ず責任者を1人決めて運営してください。担当者任せにすると、忙しい月は振り返り自体が後回しにされてしまいます。月次業務の締めまで含めた見直し方は、月次決算の早期化とは?中小企業ができる5つの方法で解説しています。
振り返りを重ねても改善が進まない業務については、外部委託への切り替えも検討してください。自社の業務のうち、どこまでを社内に残し、どこから外部に任せるべきか判断に迷う場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。
改善できたかを、何で測るか
「楽になった」という感想では、続けるかどうかを判断できません。測る対象を先に決めてください。
測るのは3つで足ります。
- その作業にかかる時間(1件あたり何分か。合計時間ではない)
- 手戻りの回数(差し戻し・修正・問い合わせの件数)
- その作業ができる人の数(1人しかできない作業が減ったか)
3つ目が見落とされがちです。時間が半分になっても、できる人が1人のままなら、その人が休むと止まります。属人化の解消は、時間短縮とは別に数えてください。
測り方は、改善の前に1〜2週間ぶんを手で記録するだけで構いません。改善後に「前はどうだったか」を思い出そうとしても正確には出ません。先に取っておく必要があります。
よくある質問
バックオフィスの業務改善とは何ですか?
経理・人事・総務など間接部門の業務を見直し、無駄や属人化をなくして生産性を高める取り組みです。
バックオフィスの業務改善が進まない主な原因は何ですか?
無駄な業務の放置、人員補充の後回し、属人化、ミスが許されない重圧の4つが主な原因です。
業務改善は何から始めればいいですか?
現状の業務を洗い出し、時間がかかっている作業を特定することから始めてください。
ツールを導入するだけで業務改善は進みますか?
業務を整理せずツールだけ導入すると、二重入力が増えて負担が軽減しないことがあります。
業務改善の効果はどう確認すればいいですか?
作業時間や件数を数値化し、施策の前後で比較して効果を振り返ります。
まとめ: バックオフィス業務改善は「1つの業務を数値で見直す」ことから始まる
バックオフィスの業務改善は、いきなり全業務を変えようとせず、負担の大きい1つの業務を数値で見直すことから始めるのが近道です。原因を特定し、可視化・標準化・ツール化・外部委託のうち適した手段を選び、効果を振り返りながら次の業務へ広げてください。
kubellの調査でも、バックオフィス担当者の55.8%が属人化を課題と感じています。放置すれば担当者の退職・休職時に大きな支障を招きかねません。自社だけで進め方に迷う場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。まずは今、最も時間がかかっている業務を1つ書き出すところから始めてください。