経理の人手不足対策は、今日からできる業務の見直しと、クラウド化・自動化・経理BPOの活用による中長期の体制づくりを同時に進めることです。採用だけに頼ると解決まで時間がかかります。原因4つとリスク3つ、今すぐできる対応4つ、中長期の対策4つを解説します。
この記事は、経理担当者の採用や定着に苦労しており、限られた人数で業務を回している中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理の人手不足が起こる4つの原因
- 放置した場合の3つのリスク
- 今すぐできる4つの対応
- 中長期で効果を出す4つの対策
経理の人手不足はなぜ起こる?4つの原因
経理の人手不足は、採用難・繁忙期の偏り・退職者の補充遅れ・属人化という4つの要因が重なって起こります。
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経理の人手不足とは、必要な経理業務量に対して対応できる人員や時間が不足している状態を指します。採用だけでなく、業務量そのものの見直しも対策の対象です。
Sansan株式会社が2024年3月28日に公表した「経理の人手不足に関する実態調査」(経理担当者1,000名対象)があります。経理の人手不足を感じている割合は50.1%、そのうち85.2%が「深刻」と回答しています。
要因の1位は「インボイス制度・電子帳簿保存法対応に伴う業務増加」で51.3%でした。制度対応の負荷が、現場の人手不足に直結しています。
経理の人手不足が起こる4つの原因
第一に、求人を出しても応募が集まりにくいことです。求職者1人あたりの求人数を示す有効求人倍率は、数値が高いほど採用が難しいことを意味します。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2024年9月時点で会計事務従事者の有効求人倍率は0.61倍と、一般事務の0.32倍を上回ります。会計事務は、事務職の中でも採用の難易度が相対的に高い職種です。
第二に、繁忙期に業務が集中することです。月次決算や年末調整の時期は作業量が跳ね上がり、少人数の体制では対応しきれません。閑散期との差が大きいほど、常勤の増員だけでは非効率になりがちです。
第三に、退職者の補充が遅れることです。応募が少ない職種のため、欠員が出てから採用を始めても、補充までに数か月かかることも珍しくありません。
第四に、属人化で余力がないことです。特定の担当者しか手順を把握していない状態では、増員しても引き継ぎに時間がかかります。属人化そのものの解消法は、経理の属人化を解消する5つの方法で詳しく解説しています。
4つの原因は連鎖しています。採用が難しいまま繁忙期を迎え、退職者が出ても補充できず、残った担当者に業務が集中する悪循環。
経理の人手不足を放置する3つのリスク
経理の人手不足を放置すると、月次決算の遅れ・ミスの増加・退職の連鎖という3つのリスクが強まります。
第一に、月次決算や支払い業務の遅れです。限られた人数で業務が回らなくなると、経営判断に必要な数字の把握そのものが遅れます。
第二に、ミスの増加です。忙しさのあまりダブルチェックを省略すると、仕訳や支払いの誤りが決算直前まで見つからないことがあります。
第三に、退職の連鎖です。残った担当者の負担がさらに増え、疲弊した担当者から順に離職していく悪循環に陥りやすくなります。私たちが中小企業のバックオフィス支援で相談を受ける中でも、経理担当者が1人しかいない会社で、その担当者の退職をきっかけに月次決算が2か月止まったという相談を受けたことがあります。
株式会社ミロク情報サービスのMJS税経システム研究所が2024年6月に経理担当者362名を対象に実施した「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」があります。仕事の悩みで最も多かった回答は「業務の属人化」で50.0%、次いで「業務量の多さ」が32.0%でした。人手不足がそのまま個人の悩みとして表れている結果です。
リスクが顕在化してから対策を始めると、選べる手段が限られます。人手不足を感じ始めた段階で、早めに手を打つことが重要です。
経理の人手不足にすぐできる4つの対応
経理の人手不足には、優先順位の見直し・応援体制・作業の削減・締め時期の調整という4つの対応がすぐ始められます。
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経理の人手不足にすぐできる4つの対応
第一に、業務の優先順位を見直すことです。支払期日や法定期限に関わる業務を最優先にし、後回しにできる作業を明確にします。
第二に、繁忙期だけ応援を頼むことです。他部署からの一時応援や、月次決算の時期だけ稼働するスポット人材の活用で、山を越えられます。
第三に、ムダな作業をやめることです。二重チェックの重複や、使われていない報告資料の作成など、慣習で続けているだけの業務を洗い出します。
第四に、締め時期を調整することです。取引先との合意が取れる範囲で請求書の締め日をずらすなど、繁忙期の山を分散させる方法もあります。
4つとも、外部への委託や採用を待たずに社内だけで始められる対応です。まずはここから着手し、時間を作ってから次章の中長期対策に進めてください。
経理の人手不足を中長期で解消する4つの対策
中長期では、クラウド化・自動化・経理BPO・採用条件の見直しという4つの対策で、人手不足そのものを解消します。
あわせて経理の業務フローテンプレート4選もご覧ください。
| 対策 |
概要 |
効果が出るまでの目安 |
| クラウド化 |
会計ソフトをクラウド型に切り替える |
1〜2か月 |
| 自動化 |
定型業務をシステムで自動処理する |
2〜3か月 |
| 経理BPO |
業務ごと外部に委託する |
1〜3か月 |
| 採用条件の見直し |
求人条件や働き方を再設計する |
3か月〜半年 |
経理の人手不足を中長期で解消する4つの対策
第一に、会計をクラウド化することです。freee会計やマネーフォワードクラウドなどのクラウド会計は入力の一部を自動化でき、複数人での同時作業もしやすくなります。仕訳の自動化については仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップで具体的な手順を解説しています。
第二に、定型業務を自動化することです。請求書発行や経費精算など、判断を伴わない繰り返し作業ほど自動化の効果が出やすい領域です。
第三に、経理BPOへの委託です。業務フローごと外部に任せることで、採用や教育の負担を抱えずに人手不足を解消できます。
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第四に、採用条件を見直すことです。給与水準だけでなく、在宅勤務やフレックスタイムなど働き方の柔軟性を条件に加えると、応募が集まりやすくなります。募集経験がない業務範囲を条件から外すだけでも、応募のハードルが下がることがあります。
4つの対策は、同時にすべて着手する必要はありません。自社の状況に合わせた選択がカギ。
経理業務のDX化・自動化で人手不足を補う方法
経理のDX化は、入力作業の削減とチェック体制の強化を同時に実現し、少人数でも業務を回せる体制を作ります。
クラウド会計は、請求書や領収書をスキャンするだけで仕訳の候補を自動生成する機能を備えています。入力そのものにかかる時間を減らせるのが利点です。
銀行口座やクレジットカードの明細も自動で取り込めるため、通帳を見ながら手入力する作業がなくなります。担当者は、内容の確認と修正だけに集中できます。
私たちセブンセンシズは、2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に中小企業の集客とバックオフィス支援に携わってきました。MEO運用サービス「G-ran」では通算3,200店舗以上を運用しており、人手が限られる店舗ほど経理業務が後回しになりやすい実態を数多く見てきました。
DX化は一度に全部を変える必要はありません。まずは入力の手間が最も大きい業務から、クラウド化を試してみるとよいでしょう。
承認フローも見直しの対象です。紙の押印を電子承認に置き換えるだけでも、担当者が出社を待たずに処理を進められるようになり、繁忙期の停滞が減ります。
経理BPO(外部委託)で人手不足を解消する方法
経理BPOは、採用や教育の負担なく即戦力の体制を得られる、人手不足解消の即効性が高い選択肢です。
関連する内容として経理の求人が集まらない3つの原因|外注との費用比較も公開しています。
自社で経理担当者を採用しようとしても、前述の通り有効求人倍率が高く、応募が集まらないまま選考が長期化しがちです。
経理BPOであれば、委託先が既に確立した業務フローとチェック体制を使えるため、採用や教育にかける時間を省けます。
全部を任せる必要はありません。月次試算表の作成だけ、給与計算だけといった部分委託から始め、社内には確認・承認の役割だけを残す進め方もあります。自社に合う委託範囲が分からない場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。
委託先を選ぶ基準や、自社が外注に向いているかどうかは、経理外注の判断基準5つ|自社に向いているかのチェックリストで確認できます。
経理人材が定着しやすい職場にする方法
経理人材の定着には、業務量の適正化と評価・キャリアパスの明確化が欠かせず、採用と両輪で進める必要があります。
採用できても、入社後にすぐ辞めてしまっては人手不足は解消しません。まず、1人あたりの業務量が過大になっていないかを見直します。
属人化した状態で新人を迎えると、教育の負担が既存の担当者に集中し、双方が疲弊します。マニュアル化を先に進めておくことが、定着率を左右します。教える側の負担を減らせれば、新人が独り立ちするまでの期間も短くなります。
評価制度の見直しも欠かせません。ミスなく業務をこなすことだけでなく、改善提案やマニュアル整備への貢献も評価に反映すると、属人化を防ぐ動きが定着しやすくなります。
私も、経理担当者の定着で悩む経営者から、採用より先に「今いる人が辞めない仕組み」を整えたいという相談を受けることがあります。採用と定着は、どちらか一方では機能しません。
経理の人手不足対策でやってはいけないNG対応
経理の人手不足対策は、退職を待ってから動いたり、属人化を放置したまま増員したりすると効果が出ません。
経理の人手不足対策でのNGとOK
注意: 退職の意思表示後に動き出すのは遅い
欠員が出てから採用や委託を検討すると、業務が止まる期間が生まれます。余力があるうちに、対策の検討だけでも始めておく必要があります。
属人化を放置したまま増員するのもNG対応です。新しい担当者に手順を教えられる人がいなければ、増員しても業務は回りません。
繁忙期だけ乗り切ろうとするのも同様です。毎回同じ時期に同じ負荷がかかると分かっているなら、恒常的な対策に切り替えたほうが、長期的な負担は小さくなります。応援やスポット人材の確保も、毎年その場しのぎで探すのではなく、事前に候補先を決めておくと動きが早くなります。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
経理の人手不足はなぜ起こるのですか?
採用の難しさに加え、繁忙期の偏り・退職者の補充遅れ・属人化が重なって起こります。
経理の人手不足を放置するとどうなりますか?
月次決算の遅れやミスの増加に加え、担当者の退職が連鎖するリスクがあります。
経理の人手不足にすぐできる対策はありますか?
優先順位の見直しや応援体制の確保など、社内だけで始められる対応があります。
経理をクラウド化するとどんなメリットがありますか?
入力作業を自動化でき、複数人での同時作業もしやすくなります。
経理BPOは人手不足対策として有効ですか?
採用や教育の負担なく体制を整えられるため、有効な選択肢のひとつです。
経理人材の定着率を上げるにはどうすればいいですか?
業務量の適正化とマニュアル化、評価制度の見直しを組み合わせて進めます。
まとめ: 経理の人手不足対策は「今すぐ」と「中長期」の両輪で
経理の人手不足は、採用だけで解決しようとすると時間がかかり、その間にリスクが積み重なります。今すぐできる4つの対応で当面の負担を減らしながら、クラウド化・自動化・経理BPOといった中長期の対策を並行して進めることが、確実な解消への近道です。
まずは自社の業務のうち、どこに最も時間がかかっているかを洗い出すところから始めてください。原因の切り分けを誤ると、対策の順番も誤ります。
自社だけで進めるのが難しい場合は、経理BPOの無料相談で委託できる範囲を確認することもできます。人手不足は放置するほど選択肢が狭まる課題です。早めの着手が、結果的に負担を小さくします。