経理の属人化とは、業務の手順や判断基準が特定の担当者の頭の中にしかない状態のことで、退職や休職をきっかけに月次決算や支払い業務が止まるリスクを持ちます。原因の多くは、人手不足による業務集中と、手順が書面化されていないことです。本記事では、属人化が起こる4つの原因、放置する3つのリスク、解消する5つの方法、マニュアル化を進める3ステップ、アウトソーシングとの関係、やってはいけないNG対応まで解説します。
この記事は、経理担当者が1〜2名しかおらず、業務が特定の個人に集中している中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理が属人化する4つの原因
- 属人化を放置する3つのリスク
- 属人化を解消する5つの方法
- マニュアル化を進める3ステップと注意点
経理の属人化とは?起こる仕組みと見分け方
経理の属人化とは、業務の手順や判断基準が特定の担当者しか分からない状態のことです。
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経理の属人化とは、記帳・支払い・給与計算などの手順や判断基準を、特定の担当者しか把握していない状態を指します。マニュアルがなく、本人が休むと業務が止まる状態が典型例です。
株式会社ミロク情報サービスのMJS税経システム研究所が2024年6月に経理担当者362名を対象に実施した「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」があります。仕事の悩みで最も多かった回答は「業務の属人化」で50.0%でした。次いで「業務の煩雑さ」が43.1%、「業務量の多さ」が32.0%という結果です。
属人化の見分け方はシンプルです。担当者が1日休むと支払いが遅れる、他の社員が請求書の処理方法を説明できない、担当者本人しか承認フローを把握していない、といった状態が続く場合は、既に属人化が進んでいるとみてよいでしょう。
属人化は一気に生まれるものではありません。日々の忙しさの中で増員のタイミングを逃し、引き継ぎ書を作る余裕がないまま、担当者の頭の中にだけ手順や例外対応のノウハウが少しずつ蓄積されていくのが典型的な経過です。気づいたときには、本人以外の誰も業務の全体像を説明できない状態になっています。
経理が属人化する4つの原因
経理の属人化は、人手不足・手順の未整備・評価制度・引き継ぎ機会の欠如という4つの要因が重なって起こります。
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当社が会計ソフトの導入を支援する現場でも、属人化の相談は「担当者が辞めると決まってから」持ち込まれることがほとんどです。辞める前に手を打てた会社は少数でした。
経理が属人化する4つの原因
第一の原因は人手不足です。帝国データバンクが2025年2月21日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」(有効回答1万1,014社)によると、正社員の人手不足を感じている企業は53.4%にのぼります。経理も例外ではなく、1人に業務が集中しやすい状況です。
第二は、業務手順が書面化されていないことです。担当者の経験と勘に頼った処理が積み重なると、他の人が引き継げる形にならないまま業務が固まってしまい、途中から手を入れることも難しくなります。
第三に、属人化を前提にした評価制度もあります。「この人がいないと回らない」状態が担当者の評価につながっている会社では、本人も周囲もマニュアル化に消極的になりがちです。業務を抱え込むほど社内での存在感が増すという構造が、無意識のうちに属人化を後押ししてしまいます。
第四は、引き継ぎの機会自体がなかったことです。増員のタイミングがなく、日々の業務に追われる中で、棚卸しの時間を確保できないまま何年も経過するケースが目立ちます。
4つの原因は互いに独立していません。人手不足が手順の書面化を後回しにし、書面化の遅れがそのまま評価制度や引き継ぎ機会の欠如を固定化するという悪循環を生みます。原因のどれか1つだけを解消しようとしても、他の要因が残っていれば属人化は再発しやすくなります。
属人化を放置する3つのリスク
属人化を放置すると、退職時の業務停止・ミスの発見遅れ・法改正への対応遅れという3つのリスクが顕在化し、経営判断にも影響します。
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第一のリスクは、退職や休職をきっかけとした業務停止です。
担当者が突然いなくなると、月次決算や支払い処理が滞り、取引先への支払い遅延につながります。実際に、経理担当者が1人しかいない企業では、入院や家族の介護といった予期せぬ事情による急な休職が、資金繰りの把握そのものを止めてしまうという相談を受けることがあります。
第二は、ミスの発見遅れです。1人だけで処理を完結させる体制では、誤りをチェックする仕組みがなく、決算直前まで問題が見つからないことがあります。修正のための時間が足りなければ、税理士への相談や申告のスケジュールにも影響します。
第三に、法改正への対応遅れがあります。国税庁の「電子帳簿等保存制度特設サイト」で案内されている電子取引データの保存義務化のように、経理は法改正への継続対応が欠かせません。属人化した状態では、担当者だけが最新ルールを把握し、周囲が対応できないまま放置されるリスクが高まります。
担当者が異動や退職で入れ替わった場合、新しい担当者が法改正への対応履歴を把握できず、同じ確認作業をゼロからやり直すことにもなりかねません。
インボイス対応など制度変更が続く分野については、インボイス経理の負担を軽減する6つの方法でも詳しく触れています。
経理の属人化を解消する5つの方法
属人化の解消は、業務の可視化・複数担当制・システム化・第三者チェック・外部委託の組み合わせで進めます。
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あわせて経理業務の自動化事例5つもご覧ください。
| 方法 |
概要 |
始めやすさ |
| 業務の可視化 |
手順を書き出し誰でも分かる状態にする |
高い |
| 複数担当制 |
1つの業務を2人以上が経験する体制にする |
中程度 |
| システム化 |
クラウド会計で処理履歴を残す |
中程度 |
| 第三者チェック |
担当者以外が月次数字を確認する |
高い |
| 外部委託(経理BPO) |
委託先が業務フローを標準化して引き継ぐ |
中程度 |
第一に、業務の可視化です。日々の作業を書き出し、誰が読んでも同じ手順で進められる状態にします。次の章で3ステップに分けて具体的に説明します。
第二に、複数担当制への移行です。1つの業務を必ず2人以上が経験する体制にすると、属人化の再発を防げます。繁忙期だけでも交代で担当する運用から始めると、負担が少なく済みます。
第三は、freee会計やマネーフォワードクラウドといったクラウド会計システムの活用。処理履歴が個人のメモではなくシステム上に残るため、引き継ぎの負担が減ります。仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップで紹介した自動化も、属人化解消と同時に進めやすい施策です。
第四に、第三者チェックの導入です。担当者以外の目でも月次の数字を確認する体制を作ると、ミスの発見が早まり、業務内容の透明化も同時に進みます。
第五は、外部委託(経理BPO)の活用。委託先が業務フローを標準化して引き継ぐため、社内に属人化した状態が残りにくくなります。詳しくは後述します。
5つの方法は、同時にすべて着手する必要はありません。人手不足が特に深刻な場合は、まず業務の可視化と第三者チェックから始め、システム化や外部委託は後から検討するという順序でも構いません。自社の状況に合わせて、無理のない範囲から着手することが継続の鍵になります。
マニュアル化を進める3ステップ
マニュアル化は、業務の棚卸し・手順書の作成・第三者による確認という3ステップで進めます。
関連する内容としてバックオフィスアウトソーシングの5つのメリットも公開しています。
マニュアル化を進める3ステップ
第一に、業務を棚卸しして書き出します。日次・月次・年次の業務を担当者にヒアリングし、頻度と所要時間、関係する取引先まで含めて一覧化します。
第二に、手順書のひな形に沿って書きます。画面キャプチャや入力例を添え、判断が分かれる場面には「迷ったときの基準」も明記すると、実務で使えるマニュアルになります。
第三に、第三者が試して抜けを確認します。担当者以外の社員が実際にマニュアルどおりに作業し、書かれていない前提や省略された手順がないかを洗い出します。私たちが中小企業のバックオフィス支援で関わる中でも、この最終確認を省いたためにマニュアルが実際には使えないという相談を受けることがあります。
手順書には、操作手順だけでなく、取引先ごとの例外対応や、過去に発生したトラブルとその対処法も残しておくと、実務での再現性が高まります。完成後は棚上げにせず、実際の業務で使いながら随時更新していく運用にすると、形だけのマニュアルで終わりません。
属人化解消とアウトソーシング(経理BPO)の関係
経理BPOへの委託は、業務フローの標準化を伴うため、属人化の再発防止策としても機能します。
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経理BPO(アウトソーシング)は、委託先が業務範囲・手順・スケジュールを明文化したうえで運用します。
経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説で紹介した通り、任せる業務範囲を切り分ける工程そのものが、属人化の解消に直結します。
費用感については、経理アウトソーシングの費用相場【2026年】内訳と抑え方で解説した通り、委託範囲によって月5,000円〜30万円まで幅があります。
属人化リスクを抱えたまま担当者の退職を待つより、部分的にでも早めに委託範囲を切り分けておくほうが、結果的に移行の負担は小さく済みます。
社内の体制を大きく変えずに済む点も、経理BPOを選ぶ理由の一つです。私も、全部を任せるのではなく月次試算表の作成だけを外部委託し、属人化していた部分だけを切り離したという事例を聞いたことがあります。
委託後も自社に業務のノウハウを残したい場合は、全面委託ではなく一部の業務だけを切り出す部分委託から始める方法もあります。まずは属人化が最も深刻な業務から切り出し、社内には確認・承認の役割だけを残すという進め方も選択肢の一つです。自社のどの業務から切り出せるか分からない場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。
属人化解消でやってはいけないNG対応
属人化の解消は、退職直前の聞き取りだけで済ませたり、担当者任せにしたりすると失敗します。
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属人化解消でのNGとOK
注意: 退職の意思表示後に着手するのは遅い
退職者への聞き取りだけで引き継ぎを済ませようとすると、限られた期間の中で手順の抜けが残ります。在職中から余裕を持って可視化を進めないと、記憶頼りの引き継ぎになり重要な判断基準が抜け落ちます。
マニュアル化を担当者任せにするのもNG対応です。本人にとっては自分の仕事を手放す作業になるため、期限と担当を会社側が決めて進める必要があります。
一度作って更新しないマニュアルも、実務とずれていきます。法改正や手順変更があるたびに見直す運用を、最初から仕組みに組み込んでおくとよいでしょう。
同様にNGなのが、口頭だけの引き継ぎ。話した内容は時間の経過とともに忘れられていくため、書面と実務確認の両方をセットで行う必要があります。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
経理の属人化とはどのような状態ですか?
特定の担当者しか業務の手順や判断基準を把握していない状態のことです。
経理が属人化する主な原因は何ですか?
人手不足による業務集中と、手順が書面化されていないことが主な原因です。
属人化を放置するとどんなリスクがありますか?
退職や休職をきっかけに、月次決算や支払い業務が止まるリスクがあります。
マニュアル化はどこから始めればいいですか?
まず日々の業務を棚卸しし、担当者以外にも分かる手順書として書き出すことから始めます。
属人化解消にアウトソーシングは有効ですか?
業務フローが標準化されるため、有効な選択肢のひとつになります。
マニュアルは一度作れば安心ですか?
法改正や手順変更が起こるたびに内容を見直し、更新し続ける運用が必要です。
まとめ: 属人化の解消は「在職中の可視化」から始まる
経理の属人化は、退職や休職をきっかけに業務停止という形で表面化するリスクです。原因を4つに分解し、マニュアル化と複数担当制、必要に応じた外部委託を組み合わせることで、担当者が変わっても止まらない体制を作れます。
属人化の解消は一度で終わるものではなく、担当者の異動や退職、法改正のたびに見直しが必要な継続的な取り組みです。まず自社の業務のうち、担当者しか把握していない部分がどれだけあるか、棚卸しから始めてみてください。自社だけで進めるのが難しい場合は、経理BPOの無料相談で委託できる範囲を確認することもできます。