経理の残業を減らすには、原因を「繁忙期」「手作業」「属人化」「承認待ち」の4つに切り分けたうえで、今日からできる対応と、自動化や経理BPOによる仕組み化を同時に進めることが必要です。原因を1つに絞り込むと対策も一面的になり、効果が長続きしません。
この記事は、経理担当者の残業が慢性化しており、繁忙期のたびに人海戦術で乗り切っている中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理の残業が減らない4つの原因
- 今日からできる4つの対応
- 根本から減らす3つの仕組み化
- 繁忙期・経理BPO活用の具体策
経理の残業はなぜ減らない?4つの原因
経理の残業は、繁忙期の業務集中・手作業の多さ・属人化・承認待ちの4つが重なって減りません。原因を切り分けずに対策すると、一部が改善しても全体は変わりません。
経理の残業とは、所定労働時間内に処理しきれない業務が積み残り、時間外に対応せざるを得なくなっている状態を指します。原因ごとに対策が異なるため、まず切り分けが必要です。
経理の残業削減は、効率化だけでなく法令順守の観点でも欠かせません。厚生労働省の「時間外労働の上限規制」では、36協定の特別条項があっても時間外労働は単月100時間未満・複数月平均80時間以内と定められています。
Sansan株式会社が2024年8月22日〜27日に経理担当者1,000名(20〜50代・正社員/契約社員)を対象に実施した「インボイス制度開始1年後の実態調査」があります。インボイス対応で「残業時間が増えた」と回答した割合は25.0%、経理1人あたりの月間業務時間は制度開始前より平均約5.5時間増加しました。
経理の残業が起こる4つの原因
第一に、繁忙期に業務が集中することです。月次決算・四半期決算・年末調整の時期は作業量が跳ね上がり、少人数の体制では対応しきれません。
第二に、手作業の多さです。請求書のスキャン確認や仕訳の手入力など、判断を伴わない繰り返し作業に時間を取られています。同調査では適格請求書の要件確認を約7割の企業が目視で実施していることも分かりました。
第三に、属人化で頼れる人がいないことです。特定の担当者しか手順を把握していないと、他の人に振ることができず、残業が1人に集中します。
第四に、承認待ちで時間が溶けることです。上長の確認や押印を待つ間、担当者の作業が止まり、締切間際に処理が集中してしまいます。
4つの原因は連鎖しています。繁忙期に手作業が重なり、属人化で他の人に振れず、承認待ちで締切直前に業務が集中する悪循環です。
私たちが補助金申請の支援でお会いする中小企業でも、経理担当者が1〜2名という体制は珍しくありません。少人数だからこそ、原因が1つ改善しても別の原因が残業として残る傾向があります。
経理の残業を今日から減らす4つの対応
経理の残業には、優先順位の見直し・繰り返し作業の削減・繁忙期の分散・承認の電子化という4つの対応がすぐ始められます。
実際の進め方を先に押さえるなら、経理の仕事を効率化する9つの方法が参考になります。
業務フローそのものを見直したい場合は、経理の業務フロー見直し3ステップ|属人化と遅延を防ぐで手順を解説しています。
経理の残業を今日から減らす4つの対応
第一に、業務の優先順位を見直すことです。支払期日や法定期限に関わる業務を最優先にし、後回しにできる作業を明確にします。
第二に、繰り返し作業を減らすことです。二重チェックの重複や、使われていない報告資料の作成など、慣習で続けているだけの作業を洗い出します。
第三に、繁忙期を分散させることです。取引先との合意が取れる範囲で請求書の締め日をずらすなど、業務の山を平準化する方法もあります。
第四に、承認を電子化することです。紙の押印を電子承認に置き換えるだけでも、担当者が出社や上長の在席を待たずに処理を進められます。
4つとも、外部への委託や採用を待たずに社内だけで始められる対応です。まずはここから着手し、次章の仕組み化に進んでください。
即効性はありますが、限界もあります。優先順位を見直しても業務量そのものは減らないため、繁忙期が重なると再び残業が増えることがあります。大切なのは、応急処置で終わらせず中長期の対策と組み合わせること。
経理の残業を根本から減らす3つの仕組み化
経理の残業を根本から減らすには、クラウド化・自動化・経理BPOという3つの仕組み化が有効です。
経理の残業を根本から減らす3つの仕組み化
第一に、会計をクラウド化することです。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めるため、通帳を見ながら手入力する作業がなくなります。仕訳の自動化については仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップで具体的な手順を解説しています。
第二に、定型業務を自動化することです。請求書発行や経費精算など、判断を伴わない繰り返し作業ほど自動化の効果が出やすい領域です。OCRで請求書の項目を読み取れば、転記そのものを省略できます。
第三に、経理BPOへの委託です。業務フローごと外部に任せることで、採用や教育の負担なく残業そのものを減らせます。繁忙期だけの部分委託でも、山を低くする効果があります。
私たちセブンセンシズは、補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけています。中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。手作業が残っている工程ほど、繁忙期の残業に直結しやすい実感があります。
3つの仕組み化は、同時にすべて着手する必要はありません。手作業が最も多い業務から、優先的に見直すとよいでしょう。
繁忙期(月次決算・年末調整)の残業を減らす方法
繁忙期の残業は、作業の前倒しと負荷の平準化によって、山そのものを低くすることで減らせます。
経理の繁忙期とは、月次決算・四半期決算・年末調整・年次決算など、通常より作業量が大きく増える時期を指します。時期が事前に分かっているからこそ、前倒しでの対策が有効です。
| 繁忙期 |
主な作業 |
前倒しできる対応 |
| 月次決算 |
仕訳計上・試算表作成 |
締め日前の証憑回収を早める |
| 四半期決算 |
各種引当金の見直し |
チェックリストの事前準備 |
| 年末調整 |
申告書回収・年税額計算 |
申告書の早期配布・回収 |
| 年次決算 |
決算整理・税務申告 |
前年資料の事前棚卸し |
月次決算を早く終わらせたい場合は、月次決算の早期化とは?中小企業ができる5つの方法で詳しく解説しています。
年末調整の負担は、制度改正の影響も受けやすい領域です。年末調整の効率化ポイント5つ|2026年の改正にどう備えるかもあわせてご覧ください。
前倒しの具体例として、月次決算なら締め日の3営業日前に証憑の未回収リストを取引先へ共有すると、締め日当日の督促作業が減ります。年末調整なら、申告書の配布を例年より2週間早めるだけでも、回収漏れの再確認にかかる時間が縮まります。
繁忙期の残業は、当日にどれだけ頑張るかではなく、繁忙期が来る前に何を終わらせておくかで決まります。
経理の残業を可視化してから減らす
経理の残業は、原因を可視化してからでないと、対策の優先順位を誤ります。感覚だけで対策すると、効果の小さい施策から手をつけてしまいがちです。
まず、勤怠データで残業が発生している月を確認します。毎月同じ時期に残業が集中しているなら、繁忙期そのものへの対策が必要です。逆に月によってばらつきがあるなら、属人化や承認待ちが疑われます。
次に、業務ごとの所要時間を洗い出します。請求書処理・仕訳入力・承認確認など、工程別に時間を記録すると、どこに時間が取られているかが具体的に見えてきます。
パーソルキャリアが2025年8月1日〜8日に一般労働者15,000名を対象に実施した「平均残業時間の実態調査【2025年版】」があります。事務系職種の平均残業時間は月11.0時間でした。自社の経理の残業がこれを大きく上回っているなら、繁忙期依存や属人化が強く疑われます。
可視化の結果は、次章の経理BPOへの委託範囲を決める判断材料にもなります。感覚ではなく数字で優先順位を決めることが、遠回りを避ける近道です。
勤怠管理システムに残業理由の入力欄を設けるだけでも、月次で原因の傾向が見えるようになります。特別なツールを導入しなくても、まずは既存の勤怠データを月別・原因別に集計するところから始められます。
経理BPOで残業を減らす具体的な進め方
経理BPOは、繁忙期だけの応援では追いつかない残業を、業務ごと外部に任せることで根本から減らせる選択肢です。
自社採用での増員は、応募が集まりにくく時間もかかります。経理BPOであれば、委託先が既に確立した業務フローとチェック体制を使えるため、教育にかかる時間を省けます。
委託範囲を決める判断材料は、前章で洗い出した可視化データです。工程別の所要時間が長い業務から委託候補に挙げると、残業削減の効果が出やすくなります。目安として、月の残業のうち特定の1〜2業務が半分以上を占めているなら、その業務から部分委託を検討する価値があります。
全部を任せる必要はありません。月次試算表の作成だけ、年末調整の申告書回収だけといった部分委託から始め、社内には確認・承認だけを残す進め方もあります。
経理BPOの詳しい仕組みは、経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説で確認できます。ただし、最終確認や承認権限までは委託できないため、社内に一定の関与が残る点には注意が必要です。
すでに人手不足で残業が慢性化している場合は、経理の人手不足対策8つ|原因とすぐできる対応を解説もあわせて参考にしてください。人手不足と残業は、原因が重なっていることが多い課題です。
自社に合う委託範囲が分からない場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。まずは委託できる範囲を確認するところから始めても構いません。
経理の残業削減でやってはいけないNG対応
経理の残業削減は、全員残業前提で回したり、属人化を放置したまま増員したりすると効果が出ません。
経理の残業削減でのNGとOK
注意: 繁忙期だけ人を増やすのはNG対応
毎回同じ時期に同じ負荷がかかると分かっているのに、その場しのぎで人を探すと対応が遅れます。恒常的な仕組みに切り替えたほうが、長期的な負担は小さくなります。
属人化を放置したまま増員するのもNG対応です。新しい担当者に手順を教えられる人がいなければ、増員しても残業は減りません。
私も、経理担当者が1人しかいない会社で、繁忙期のたびに全員が定時後まで残る状態が3年続いていたという相談を受けたことがあります。仕組みを変えない限り、人を足しても状態は変わりませんでした。
定型業務を手作業のまま残すのも同様です。自動化できる部分を後回しにし続けると、繁忙期のたびに同じ残業が繰り返されます。
原因の可視化を省略するのも避けたい進め方です。感覚だけで対策を選ぶと、実際には効果の小さい施策に時間を使ってしまい、残業は思うように減りません。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
経理の残業はなぜ減らないのですか?
繁忙期の業務集中・手作業の多さ・属人化・承認待ちの4つが重なって減らないためです。
経理の残業を今日から減らす方法はありますか?
優先順位の見直しや繰り返し作業の削減など、社内だけで始められる対応があります。
経理の残業を根本から減らすにはどうすればいいですか?
クラウド化・自動化・経理BPOの活用など、仕組みそのものを見直す必要があります。
繁忙期の残業はどう減らせますか?
月次決算や年末調整の作業を前倒しし、負荷を平準化することで減らせます。
経理BPOは残業削減に効果がありますか?
定型業務ごと外部に委託でき、採用や教育の負担なく残業を減らせます。
経理の残業削減で注意すべき点はありますか?
属人化を放置したまま人を増やしても、残業は根本的に減りません。
まとめ: 経理の残業は「原因の切り分け」と「仕組み化」で減らす
経理の残業は、頑張りや増員だけで解決しようとすると長続きしません。繁忙期・手作業・属人化・承認待ちという原因を切り分け、今日からできる対応とクラウド化・自動化・経理BPOによる仕組み化を同時に進めることが、確実な削減への近道。
まずは自社の残業のうち、どの原因が最も大きいかを洗い出すところから始めてください。原因を誤ると、対策の効果も限定的になります。
繁忙期だけの一時的な対応で終わらせず、今回紹介した可視化と仕組み化をセットで進めることが、来年以降の残業を減らす土台になります。
自社だけで進めるのが難しい場合は、経理BPOの無料相談で委託できる範囲を確認することもできます。残業は放置するほど「毎年のこと」として当たり前になり、見直す機会そのものを失いがちです。