管理部門の人手不足は、増員・派遣やアルバイトの活用・ツール導入・業務の絞り込み・BPOへの委託という5つの選択肢を比較し、自社に合うものを選ぶことで解決できます。1つの方法にすぐ飛びつくと、コストだけがかさんで負担が減らないという失敗も起こります。本記事では、人手不足が起こる原因、5つの解決策の内容と比較基準、解決を進める3ステップ、やってはいけないNG対応まで解説します。
この記事は、経理・人事・総務のいずれか、または複数を兼務する担当者の人手が足りず、どの解決策を選べばいいか迷っている中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 管理部門で人手不足が起こる4つの原因
- 人手不足を解決する5つの選択肢
- 5つの選択肢を比較する4つの基準
- 解決を進める3ステップとNG対応
管理部門の人手不足とは?経理・人事・総務に共通する状態
管理部門の人手不足とは、経理・人事・総務の業務を少人数で兼務し、担当者の負荷が限界に近づいている状態です。
近い論点を経理の残業を減らす7つの方法で扱っています。
管理部門とは、経理・人事・総務など、売上を直接生まないものの会社の運営に欠かせない部門の総称です。本記事では、これらの部門で「人が足りず業務が回らない」状態を人手不足として扱います。
経理・人事・総務は業務内容こそ違いますが、専任者を置きにくく、1人が複数部門を兼務しやすいという共通点があります。兼務している担当者が1人でも欠けると、複数部門の業務が同時に止まるリスクが生じます。
現場でよく見られるのは、経理担当者が採用や労務手続きまで兼務しているケースです。当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。兼務している担当者ほど、繁忙期に手が回らなくなる傾向があります。
会社の規模が大きくなるほど、経理・人事・総務を分けて専任者を置きやすくなります。一方、従業員数十人規模の会社では、1人が複数部門の業務を横断的に担っていることが珍しくありません。部門を分けて考えるより、担当者1人あたりの業務量で考えたほうが、実態に近い課題が見えてきます。大切なのは、部門名ではなく業務量というものさし。
管理部門で人手不足が起こる4つの原因
管理部門の人手不足は、採用難・兼務による分散・繁忙期の集中・属人化の4つが重なって起こります。
管理部門で人手不足が起こる4つの原因
帝国データバンクが2026年4月16日〜30日に実施した「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」を見ると、状況の厳しさがわかります。有効回答1万538社のうち、正社員の人手不足を感じている企業は50.6%にのぼりました。4月としては4年連続で5割を超えています。管理部門も例外ではなく、成長業種に採用競争で競り負けやすい状況にあります。
原因は採用難だけではありません。経理・人事・総務を1〜2人で兼務していると、繁忙期に業務が集中し、手順が特定の担当者にしか分からない属人化も進みます。採用がうまくいかないまま兼務を続けると、属人化がさらに進むという悪循環に陥りやすくなります。
属人化が進むほど、休職や退職のたびに業務が止まりやすくなり、採用の緊急度も上がっていきます。原因ごとの対処を後回しにすると、次に人が欠けたときの影響がさらに大きくなる点に注意してください。4つの原因は独立していないため、1つだけを直しても他の原因が残っていれば、人手不足はすぐぶり返します。
2026年4月24日に閣議決定された「2026年版中小企業白書」も、労働供給制約社会の到来により中小企業の人手不足がさらに深刻化するおそれがあると指摘しています。管理部門だけの問題ではなく、社会全体の構造として長期化する前提で対策を考える必要があります。
人手不足を放置すると起こる3つのリスク
管理部門の人手不足を放置すると、業務の遅延・ミスの増加・担当者の離職という3つのリスクが連鎖します。
まず起こるのは、月次決算や給与計算といった締め切りのある業務の遅延です。確認作業を省略せざるを得なくなり、ミスが増えることも珍しくありません。
さらに深刻なのは、負荷が集中した担当者から順に離職していく連鎖です。私は、管理部門の責任者から「兼務していた担当者が退職し、他の業務まで止まった」という相談を受けたことがあります。1人の離職が連鎖のきっかけになるため、早めの対処が欠かせません。
3つのリスクは別々に起こるのではなく、遅延がミスを招き、ミスの後始末がさらに残業を増やし、疲弊した担当者が離職するという順序で連鎖しやすい点も見逃せません。遅延の兆候が出た時点で対処を始めると、離職まで進む前に連鎖を断てます。取引先への支払いや請求が遅れると、会社としての信用にも関わるため、早期の対応が求められます。
連鎖が進んでからでは、対処に使える選択肢も限られてきます。人手を増やす余裕すらなくなり、目の前の業務を回すだけで手一杯になるためです。次の章で紹介する5つの選択肢は、いずれも連鎖が浅いうちに着手するほど効果を発揮しやすい方法です。
管理部門の人手不足を解決する5つの選択肢
管理部門の人手不足は、増員・派遣やアルバイトの活用・ツール導入・業務の絞り込み・BPOへの委託の5つで解決できます。
あわせて小規模事業者の経理体制の作り方もご覧ください。
管理部門の人手不足を解決する5つの選択肢
選択肢1: 社員を増員する
正社員を増やす方法は、社内にノウハウを蓄積できる一方、採用と教育に時間がかかります。すぐに戦力にならないため、繁忙期には間に合わないことがあります。中途採用でも一人前になるまで数か月かかることが多く、教育担当者の負担も一時的に増える点は見込んでおく必要があります。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」でも職種別の有効求人倍率が毎月公表されており、採用計画を立てる際の目安として確認しておくと役立ちます。
選択肢2: 派遣・アルバイトを活用する
定型業務であれば、派遣やアルバイトの活用で短期間に人手を補えます。ただし、繁忙期特有の判断業務までは任せにくいという制約があります。契約期間が決まっているため、繁忙期を過ぎたあとの人員調整がしやすい点はメリットです。
選択肢3: ツールを導入して自動化する
会計ソフトや勤怠管理システムの導入は、入力作業の削減に有効です。業務を整理せずに導入すると、二重入力が増えてかえって負担が増すこともあるため注意してください。既存の業務フローを洗い出したうえで、どの工程を自動化するかを先に決めておくと、導入後の手戻りを防げます。
選択肢4: 業務の範囲を絞り込む
すべての業務を維持しようとせず、優先順位の低い業務をやめる、または頻度を減らす方法です。手放す業務を先に決めてから、残す業務に人手を集中させると効果が出やすくなります。コストをかけずにすぐ着手できる一方、絞り込みだけでは根本的な人手不足の解消にはつながりにくい点も理解しておいてください。
選択肢5: BPO(外部委託)を活用する
経理・人事・総務の業務ごと外部の専門会社に委託する方法です。採用や教育の負担なく、専門知識を持つ体制をすぐに整えられることが強みです。委託範囲を業務の一部から始め、社内に残す業務との線引きを明確にしておくと、引き継ぎの混乱を避けられます。
経理BPOの詳しい内容は、経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説で解説しています。委託できる業務の範囲や費用感を相談したい場合は、経理BPOの無料相談を利用することもできます。
5つの選択肢を比較する4つの基準|コスト・スピード・機密性・属人化解消
5つの選択肢は、コスト・スピード・機密性・属人化解消の4つの基準で比較すると選びやすくなります。
| 選択肢 |
コスト |
導入スピード |
機密性 |
属人化解消 |
| 増員 |
高い |
遅い |
高い |
効果は限定的 |
| 派遣・アルバイト |
中程度 |
速い |
中程度 |
効果は限定的 |
| ツール導入 |
中程度 |
中程度 |
高い |
手順の標準化に貢献 |
| 業務の絞り込み |
低い |
速い |
高い |
効果は限定的 |
| BPO |
中程度 |
速い |
委託先次第 |
効果が高い |
機密性を最優先するなら増員かツール導入、スピードを優先するなら派遣やBPOが選びやすい傾向にあります。属人化そのものを解消したい場合は、業務の手順を見直す必要があるBPOやツール導入のほうが効果的です。経理の属人化を防ぐ具体策は、経理の属人化を解消する5つの方法|原因とリスクも解説で解説しています。
4つの基準は、どれか1つだけで決めるのではなく、優先順位をつけて組み合わせて使うのがコツです。例えば、給与計算のように機密性が高くスピードも求められる業務なら、増員よりツール導入かBPOのほうが現実的な選択になります。逆に、繁忙期だけ人手が足りない業務であれば、コストを抑えられる派遣やアルバイトが向いています。基準選びで重要なのは、コストの安さだけに引っ張られない視点。
自社に向いている選択肢か迷う場合は、判断基準をチェックリスト化しておくと選びやすくなります。経理業務を対象にした判断基準は、経理外注の判断基準5つ|自社に向いているかのチェックリストにまとめています。
管理部門の人手不足解決を進める3ステップ
管理部門の人手不足解決は、現状の棚卸し・選択肢の比較・小さく始めて検証するという3ステップで進めます。
管理部門の人手不足解決を進める3ステップ
ステップ1: 現状を棚卸しする
まず、経理・人事・総務それぞれの業務量と、誰がどこまで兼務しているかを書き出します。感覚ではなく、業務ごとの作業時間を数値で把握することが次のステップの精度を左右します。
ステップ2: 選択肢を比較する
棚卸しした業務のうち、負担が大きい業務から順に、5つの選択肢のどれが向いているかを比較します。すべての業務を同じ方法で解決しようとしないことがポイントです。業務ごとに向いている選択肢は違うため、1つの方法にすべてを合わせようとすると、無理が生じます。
ステップ3: 小さく始めて検証する
いきなり全業務を切り替えるのではなく、最も負担の大きい業務1つから試し、効果を確認してから広げる方法が失敗を防ぎます。中小企業庁も「中小企業・小規模事業者の人手不足への対応」のなかで、新たな人材確保だけに頼らず、業務の見直しや多様な人材の活用を組み合わせる視点を挙げています。
解決を急ぐときにやってはいけないNG対応
管理部門の人手不足解決でやってはいけないのは、比較せずに1つの案へ即決することと、全業務を一度に外注することです。
管理部門の人手不足解決のNG対応とOK対応
注意: 人手が減ってから動き出さない
担当者の退職が決まってから動き出すと、比較検討の時間が取れず、条件の悪い選択肢を選ばざるを得なくなります。余力があるうちに、選択肢の比較だけでも進めておいてください。
後回しにした先で待っているのは、選択肢が狭まったなかでの苦しい決断。
全業務を一度に外注することも避けてください。引き継ぎの負担が一度に集中し、委託後に業務が回らなくなることがあります。業務を仕分けてから段階的に外注範囲を広げるほうが、失敗のリスクを抑えられます。
担当者1人だけの判断で決めることもNG対応です。私たちは、複数部門にまたがる意思決定ほど、経営者を含めた複数人で比較検討したほうが、後戻りが少ないと感じています。現場担当者だけに選択肢の決定を任せると、自分の負担が減る方法に偏りやすい点にも注意してください。
管理部門の業務改善そのものを見直したい場合は、バックオフィス業務改善の4ステップ|進まない原因と対策もあわせて参考にしてください。
どの業務から整理すべきかは、バックオフィスの現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
管理部門の人手不足とはどのような状態ですか?
経理・人事・総務の業務を少人数で兼務し、担当者の負荷が限界に近づいている状態です。
管理部門の人手不足はなぜ起こるのですか?
採用の難しさに加え、兼務による分散、繁忙期の集中、属人化が重なって起こります。
管理部門の人手不足を解決する方法にはどんな選択肢がありますか?
増員、派遣・アルバイト、ツール導入、業務の絞り込み、BPOの5つが主な選択肢です。
どの選択肢を選べばいいか迷う場合はどうすればいいですか?
コスト・スピード・機密性・属人化解消の4つの基準で比較すると選びやすくなります。
管理部門の人手不足解決で気をつけることはありますか?
比較せず1つの案に即決することは避け、小さく始めて検証してください。
まとめ: 管理部門の人手不足は「比較してから小さく始める」ことで解決できる
管理部門の人手不足は、増員・派遣やアルバイト・ツール導入・業務の絞り込み・BPOという5つの選択肢を比較し、負担の大きい業務から小さく始めることで解決できます。比較せずに1つの案へ即決したり、全業務を一度に外注したりすると、かえって負担が増えることもあるため注意してください。
帝国データバンクの調査でも、正社員の人手不足を感じる企業は50.6%と高い水準が続いています。管理部門は売上に直結しないぶん増員の優先順位が下がりやすい部門ですが、後回しにするほど業務の遅延・ミス・離職の連鎖が起こりやすくなります。自社だけで選択肢の比較に迷う場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。まずは、最も負担の大きい業務を1つ書き出すところから始めてください。