バックオフィスのコンサルとは、経理・総務・人事の業務の流れを外から見直し、手順や仕組みの設計を助言する支援です。助言を受けても、社内で手を動かす人がいなければ提案書が残るだけになります。毎月の入力や処理まで外に任せたいなら、コンサルではなく代行(BPO)が合います。
当社は2023年4月から2026年9月までに、経理代行・記帳代行を48社で担当しました。そのうち31社は継続中です。この記事は、その現場で見た「仕組みを変える支援」と「作業を回す支援」の分かれ目をもとに書いています。
この記事は、経理や総務の手が回らず、バックオフィスのコンサルに頼むか、作業ごと代行に任せるかで迷っている中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。当社の数字は2023年4月〜2026年9月の支援実績です。
この記事でわかること- バックオフィスのコンサルが提案書だけで終わる3つの原因
- 助言で足りる仕事と、手を動かす人が要る仕事の分け方
- コンサル・代行・組み合わせを会社の状態で選ぶ基準
- 相談の前に今日やること
バックオフィスのコンサルとは?業務の仕組みを設計する支援
バックオフィスのコンサルは、間接部門の手順や道具を設計して助言する支援で、作業そのものは社内が行います。
バックオフィスのコンサルとは、経理・総務・人事の業務を洗い出し、手順・役割分担・使うシステムを見直す計画を作って、導入までを助言する支援を指します。
支援の中身は、主に次の3つです。
- 業務の洗い出しと、時間のかかる作業の特定
- 手順書・承認の流れ・役割分担の設計
- 会計ソフトや経費精算システムの選定と導入の助言
検索で「コンサル バックオフィス」と調べると、コンサル会社の管理部門の求人も混ざります。この記事は、自社のバックオフィスを外に相談するか迷う会社の側の話です。コンサル会社自身の管理部門の回し方は、「コンサル会社自身のバックオフィスを回す方法」の節で扱います。
業務改善の進め方そのものは、バックオフィス業務改善の4ステップで整理しています。
助言で足りる仕事と、手を動かす人が要る仕事
バックオフィスの困りごとは、手順を変えれば社内で回る仕事と、作業量が多く人手そのものが足りない仕事に分かれます。
コンサル・代行・組み合わせでできること
困りごとごとに合う支援を並べると、次の表のとおりです。
| 困りごと |
合う支援 |
理由 |
| 担当者ごとに手順が違う |
コンサル |
手順をそろえれば社内で回るため |
| 承認が止まって締めが遅れる |
コンサル |
承認の流れの設計で解けるため |
| 銀行明細や請求書の入力に追われる |
代行 |
作業量そのものが多いため |
| 経理担当が辞め、回す人がいない |
代行 |
設計しても実行する人がいないため |
| 入力に追われ、手順もばらばら |
組み合わせ |
設計と作業がともに足りないため |
当社が手順と道具を切り替えた例を、数字で示します。銀行・カードの連携とExcelの手入力からの切り替えを行った15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました(2023年4月〜2026年9月)。
紙・Excelの経費精算をクラウドに切り替えた12社では、1社あたり月8〜15時間の手間が減りました。締め作業も約3日短くなっています(同じ期間)。
入力が月平均20時間から6時間になった15社と、月8〜15時間減った12社で減ったのは、仕組みを変えた分の時間です。数字は社ごとに幅があり、全社が同じ時間だけ減ったわけではありません。入力の元になる書類を集める作業や、残った月6時間の作業は、誰かが毎月続けます。続ける人が社内にいるかどうかで、コンサルか代行かが決まります。
外部に作業を任せる仕組みの全体像は、バックオフィスBPOとは?にまとめています。
バックオフィスのコンサルが提案で終わる3つの原因と避け方
バックオフィスのコンサルが提案書だけで終わる原因は、実行する人の不在・範囲の広げすぎ・書類の回収の後回しの3つです。
提案で終わる頼み方と仕組みが残る頼み方
原因1: 実行する社内の担当者が決まっていない
起きるのは、手順書や新しい承認の流れが完成しても、翌月から元のやり方に戻ることです。原因は、新しい手順を毎月回す人が決まっていないことにあります。
避け方は、依頼の前に社内で手順を回す人を1人決めることです。当社の判断では、1人も決められない会社はコンサルを見送り、代行から始めてください。使う人がいない設計は、受け取っても動かないためです。
原因2: 経理・総務・人事を一度に見直そうとする
起きるのは、洗い出しの資料が膨らみ、実行の前に予算か期間が尽きることです。原因は、効果を測る作業を1つに絞っていないことです。
避け方は、止まっている作業を1つだけ選んで頼むことです。経費精算を切り替えた12社で締めが約3日短くなったように、1つの作業で効果を数えられれば、次の作業へ同じ型を広げられます。
原因3: 書類の回収を後回しにする
起きるのは、会計ソフトを入れ替えても、領収書や請求書が届かず入力が進まないことです。原因は、現場から書類を集める決まりが無いことです。
当社が2023年4月から2026年9月までに経理代行をお断りした・合わなかった例は7件でした。そのうち3件は、現金取引が中心で証憑がそろわないことが理由です。残る4件の理由は、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)と、税務の判断まで求められた(2件)です。
書類がそろわない会社では、コンサルの設計も代行の作業も始められません。当社は、証憑の渡し方を先に決められる会社だけ受けています。決算直前の丸投げは期限に間に合わず、税務の判断は税理士の業務なので、見送りました。
避け方は、書類の提出の期限と渡し方を、仕組みの見直しより先に決めることです。
設計を1人だけが知っている状態はNG
新しい手順を知る人が1人だけだと、その人が辞めた時点で設計は使われなくなります。新しい手順は、必ず2人以上が回せる形で残してください。手順書は画面の写真つきの1枚にまとめ、毎月の締めのたびに、担当と控えの2人で交代して回します。
兼務の担当者しかいない会社は、手順を回す人を「締めの作業を持つ人」として1人決めます。その人の他の仕事を減らせないなら、当社の判断では代行から始めてください。回す時間が取れないと、手順が定着しないためです。
担当者が1人に偏る問題の直し方は、経理の属人化を解消する5つの方法で解説しています。
コンサル・代行・組み合わせのどれを選ぶか
社内に回す人がいればコンサル、足りなければ代行、設計と作業がともに足りなければ代行から始めるのが分かれ目です。
会社の状態ごとの選び方は、次の表のとおりです。
| 会社の状態 |
選ぶ支援 |
| 担当者はいるが、手順が人ごとに違う |
コンサルで手順をそろえる |
| 担当者が辞めた、または辞める予定がある |
代行で毎月の作業を止めない |
| 入力に追われ、手順を見直す時間が無い |
代行で時間を空けてから手順を整える |
| 月の作業が少なく、社長が全体を把握している |
外に頼まず自社で回す |
経理担当が離職した大手コンサル会社から、経理BPOを導入したいという問い合わせがあり、当社は契約を結びました。担当者が辞めた後は、手順を設計し直すより、毎月の作業を止めないことが先になります。辞めた後に助言だけを受けても、回す人がいないためです。
表の状態に2つ以上当てはまるなら、当社の判断で「担当者が辞めた・辞める予定」を先に扱ってください。作業が止まると、締めの遅れが毎月積み重なるためです。手順の違いを直すのは、毎月の作業が回り始めてからにします。
代行を頼んだ後は、社内の人が委託先の担当者へ直接作業を指示する運用を避けてください。厚生労働省の労働者派遣と請負の区分に関する案内は、派遣か請負かを契約の形式ではなく実態で判断するとしています。直してほしい点は、決めた窓口を通して伝えます。
自分の会社に当てはめる計算例を1つ置きます。仮に、経費精算の確認と差し戻しに担当者が月12時間かけているとします。
当社が経費精算を切り替えた12社では、1社あたり月8〜15時間の手間が減りました(2023年4月〜2026年9月)。同じ幅で減るなら、浮く時間は月8時間以上になる計算です。
当社の判断では、月8時間は12社の下限なので、定着に使える時間の目安にします。浮く時間が月8時間に届かないなら、代行を選んでください。
浮いた時間を新しい手順の定着に使えるなら、コンサルで仕組みを変える意味があります。浮いた時間が別の作業に消えるなら、代行で作業量そのものを外に出してください。
見送ってよい場合もあります。当社の判断では、月の請求書が数枚で、担当者が困っていない会社には、コンサルも代行も向きません。手順を変えて減る時間より、外部と打ち合わせる時間のほうが長くなるためです。見送った会社は、半年ごとに作業時間を測り直してください。
税額が変わる判断は、コンサルにも代行にも頼めません。国税庁の税理士制度のQ&A(問6-1)は、税理士でない者が税理士業務を行うことを、税理士法第52条が原則として禁じていると説明しています。
分かれ道は次のとおりです。経費の区分のように帳簿の付け方が決まっている作業なら、代行に任せてかまいません。経費にできるか・どの税率かで税額が変わる判断なら、税理士に聞いてください。
手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、当社は業務を分担する提携を結びました。記帳は当社、税務の判断は税理士という線引きです。
コンサル会社自身のバックオフィスを回す方法
コンサル会社のバックオフィスは、案件ごとの請求書と立替経費の精算を代行に出し、請求額の判断と承認を社内に残すと回ります。
コンサル会社は、顧客ごと・案件ごとに請求書を出し、出張の交通費などを立て替える場面が多い業態です。請求と精算の件数が月ごとに動くため、経理担当1人で回すと、案件の多い月に締めが遅れます。
当社が2023年4月から2026年9月までに請求書の発行代行を担当したのは18社です。1社あたりの枚数は月20〜150枚と幅がありました。枚数の幅が大きい作業ほど、社内の1人で抱えると忙しい月に止まります。
当社の判断では、コンサル会社の作業は次のように分けてください。
| 作業 |
置き場所 |
理由 |
| 請求書の作成と送付 |
代行 |
件数が月ごとに動くため |
| 立替経費の確認と入力 |
代行 |
手順が毎回同じため |
| どの案件にいくら請求するか |
社内 |
顧客との契約で決まるため |
| 支払と精算の承認 |
社内 |
お金を動かす判断のため |
事務ごとに任せる・残すを仕分ける考え方は、BPO事務で失敗しない分け方で詳しく説明しています。
依頼の前にコンサル会社へ聞く3つの質問
バックオフィスのコンサルに見積もりを頼むときは、実行の担い手・効果の測り方・支援が終わった後の運用の3点を聞いてください。
見積もりの場で使う質問のひな形は、次の3つです。
- 「提案の後、新しい手順を毎月回すのは誰ですか。導入の作業はどこまで料金に含まれますか」
- 「効果は何で測りますか。作業時間や締めの日を、始める前にどう記録しますか」
- 「支援が終わった後に担当者が辞めたら、手順はどう引き継げますか」
1つ目に「助言のみ」と答える会社は、社内に回す人がいる場合だけ選んでください。回す人がいないなら、作業まで引き受ける代行の会社に同じ質問をして比べます。
代行会社を比べる段階では、AIの答えを下調べに使う人も増えています。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。
費用・選び方・税理士との違い・依頼できる範囲を調べる質問では、回答の85.0%が経理代行会社の公式サイトを1つ以上出典にしていました(当社の業種調査)。AIの答えは各社のサイトの書き方に左右されるため、範囲と料金は見積もりの場で直接確かめてください。
2026年10月に当社が2つのAI(ChatGPT・Gemini)に本記事の論点5問を聞き、10件の答えを集めました。費用の金額(◯円)に触れた答えは0件、期間(◯か月・◯日など)も0件でした。専門家への相談に触れたのは2件です(出典: 当社調べ)。
当社の料金は、作業の範囲と件数を伺ったうえでお伝えしています。見積もりを比べるときは、同じ範囲・同じ件数で各社の見積もりをそろえてください。比べる観点は経理BPOの選び方6つ、契約で見る条項は経理BPOの契約書|見落としやすい条項6つにまとめています。
今日やること:止まっている作業を1つ書き出す
コンサルか代行かを決める第一歩は、締めを遅らせている作業を1つ選び、1か月にかかる時間を記録することです。
相談の前にやること
まず、先月の締めで最後まで終わらなかった作業を1つ書き出してください。紙でも表計算でもかまいません。
次に、その作業に1か月でかかった時間と、締めが終わった日を記録します。始める前の数字が無いと、頼んだ後に効果を比べられません。
代行へ作業を出した結果の例です。当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(2023年4月〜2026年9月。最も早い会社は翌月5日)。自社の締めの日を記録しておけば、同じ物差しで比べられます。
3つ目に、その作業を社内で回し続ける人を決めます。決まればコンサル、決まらなければ代行が候補です。
最後に、記録した時間と担当者の有無を持って相談してください。契約までの期間は、経理BPO導入の流れで確かめられます。
よくある質問
バックオフィスのコンサルに頼むと、何をしてもらえますか?
業務の洗い出し、手順書や承認の流れの設計、会計ソフトなどの選定の助言です。毎月の作業は社内が行います。
コンサルに頼んだ場合、どこまで自分の会社でやる必要がありますか?
新しい手順を毎月回す作業と、領収書や請求書など書類の回収は社内に残ります。設計だけが外の仕事です。
仕組みを変えると、どのくらいで変化が見えますか?
2023年4月〜2026年9月に紙・Excelの経費精算をクラウドへ切り替えた12社では、締め作業が約3日短くなりました。
バックオフィスのコンサルが向かないのは、どんな会社ですか?
手順を回す社内の担当者を決められない会社と、月の作業が少なく担当者が困っていない会社です。
経理担当が辞めた後でも、コンサルに頼んでよいですか?
当社の判断では、先に代行で毎月の作業を止めないようにし、その後に手順を見直すほうが安全です。
税金の判断も、コンサルや代行の会社に頼めますか?
頼めません。税額が変わる判断と申告は税理士の業務です。帳簿の作業は代行、税務は税理士に分けてください。
まとめ: 回す人がいるかで、コンサルか代行かを決める
バックオフィスのコンサルは、社内に新しい手順を回す人がいるときに効く支援です。
回す人がいない、担当者が辞めた、入力に追われて時間が無い。こうした会社は、代行で作業を止めないことを先にしてください。月の作業が少なく担当者が困っていない会社は、外に頼まなくてかまいません。
今日できる一歩は、締めを遅らせている作業を1つ選び、1か月の時間を記録することです。記録があれば、相談の場で頼む範囲をすぐに決められます。
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