経費精算がめんどくさいのは、申請者・承認者・経理の3か所で別々の手間が出るためです。手間の出どころによって、効く打ち手が変わります。申請の入力が重い会社には、クラウド精算が効きます。差し戻しが多い会社は、ルールの見直しが先です。経理のチェックと記帳が重い会社には、外注が向きます。当社が紙・Excelの経費精算をクラウド経費精算に切り替えた12社では、1社あたり月8〜15時間の手間が減りました(2023年4月〜2026年9月)。
この記事は、社員から「経費精算がめんどくさい」と言われ、仕組みを変えるか外に出すかを迷っている中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。制度の記載は国税庁の案内(2026年10月に確認)に基づきます。
この記事でわかること- 経費精算の手間が出る3か所と、その見分け方
- 集めなくてよい領収書(帳簿だけで足りる取引)
- ルールの見直し・クラウド精算・外注の選び方
- 外注しても楽にならない会社の条件
経費精算がめんどくさい原因は、申請者・承認者・経理の3か所にある
経費精算の手間は、申請者の入力、承認者の差し戻し、経理の直しと記帳の3か所で別々に生まれます。
経費精算の手間が出る3か所
経費精算とは、社員が立て替えて払った交通費や備品代を、領収書をもとに会社が払い戻し、帳簿に記録する一連の作業です。申請・承認・支払・記帳の4つの工程に分かれます。
「めんどくさい」という声は、どこから出ているかで中身が違います。
- 申請者の手間は、領収書を保管し、日付・金額・目的を書き写す作業です
- 承認者の手間は、ルールに合うかを確かめ、合わなければ差し戻す作業です
- 経理の手間は、科目を直し、領収書と照らして会計ソフトへ入力する作業です
3か所のうち、社員の不満として聞こえるのは申請者の手間です。ところが、時間を一番使っているのは経理であることが少なくありません。声の大きさで打ち手を選ぶと、手間の大きい所が残ります。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。当社の判断では、手間を3か所に分けて測ることが、仕組みを変える前の最初の作業です。
経費精算が難しいと感じる理由:判断が人によってぶれる
経費精算が難しいと感じるのは、ルールの判断と書類集めが人によってぶれ、直しが重なるためです。
作業そのものは、書き写しと照らし合わせが中心で、むずかしくはありません。難しいのは、次のような判断が申請のたびに必要になる点です。
- どの科目で落とすかが分かりにくく、備品か消耗品かで迷います
- どの領収書が必要かが分かりにくく、帳簿だけで足りる取引まで集めてしまいます
- 経費にしてよいかの線引きが、交際費と会議費などで人によって違います
判断の基準が規程に書かれていないと、申請者も承認者も経理も、自分の感覚で決めます。その結果、差し戻しと直しが増え、全員が「難しい」と感じます。
対策は、迷いやすい判断を規程に書き出すことです。科目は選択肢を絞り、領収書が要る取引と要らない取引を分けて示してください。税務の判断が要る支出は、税理士に聞く扱いにします。
経費精算の手間を1か月だけ測る方法
経費精算の手間は、差し戻しの件数と経理の作業時間の2つを1か月数えれば、どこにあるかが分かります。
測るのは次の2つだけです。
- 差し戻しの件数と、その理由(領収書が無い・科目が違う・金額が合わない)
- 経理が精算にかけた時間のうち、入力と転記の時間と、直しの時間
差し戻しが多い会社は、承認者の手間が中心です。申請のルールがあいまいで、人によって判断が違う状態です。経理の時間のうち入力と転記が大半なら、手入力が手間の正体です。
以下は実績ではなく、考え方を示す仮の計算です。仮に経理担当者が経費精算に月12時間かけ、うち8時間が転記だったとします。転記を無くす仕組みに替えれば、8時間分が浮く計算になります。
当社が銀行・カードの連携とExcelの手入力からの切り替えを行った15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました(2023年4月〜2026年9月)。手入力の時間が長い会社ほど、測った数字がそのまま削れる時間の目安になります。
当社の判断では、経理側の手間が月8時間に満たない会社は、まずルールの見直しから始めます。紙・Excelから切り替えた12社の削減幅が、1社あたり月8〜15時間だったためです。
測った手間がこの下限より小さいと、移行の作業に見合わない可能性があります。システムの料金は各社の公式サイトで確かめ、削れる時間と並べて比べてください。
集めなくてよい領収書がある:帳簿だけで足りる9種類
国税庁は、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められる取引を9種類定めています。
経費精算が重くなる原因の1つは、すべての支払いに領収書をそろえようとすることです。インボイス制度のもとでも、領収書やインボイスが無くてよい取引があります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内では、帳簿のみの保存で足りる取引として9種類を挙げています。経費精算でよく出るのは次の3つです。
| 取引 |
よくある経費 |
経費精算での扱い |
| 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送 |
電車・バスの運賃 |
インボイスの保存は不要。帳簿に記載が要る |
| 3万円未満の自動販売機・自動サービス機からの購入 |
自販機の飲み物、コインロッカー |
同上 |
| 通常必要と認められる出張旅費等 |
出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当 |
同上 |
帳簿のみで足りる9種類の取引は、消費税の仕入税額控除のための書類の扱いです。領収書を集めない取引でも、出張の目的と行き先は社内の記録として残してください。
出張旅費には、国内と海外で違いがあります。国税庁の出張旅費・日当・通勤手当の取扱いでは、国内出張の旅費・宿泊費・日当のうち通常必要な部分は課税仕入れになるとしています。一方、海外出張の旅費・宿泊費・日当は、原則として課税仕入れになりません。
国内出張の日当を規程で定額にしておけば、日当の部分は帳簿への記載で処理できます。承認者が毎回金額を確かめる手間も減ります。宿泊費を実費で精算している会社は、宿泊先の領収書を残す運用のままにしてください。
当社の判断では、社員に集めさせる書類を減らすことが、システムを入れる前にできる一番安い手です。3万円未満の電車・バスの運賃まで領収書を求めている会社は、規程から外せないかを確かめてください。
規程の書き方は、経費精算ルールの作り方|中小企業の5ステップと規程項目で項目ごとに整理しています。領収書を無くした社員への対応は、経費精算の領収書を紛失したときの対応4手順にまとめました。
手間の減らし方3つを比べる:ルールの見直し・クラウド精算・外注
経費精算の手間を減らす方法は、ルールの見直し・クラウド精算・外注の3つで、効く手間がそれぞれ違います。
あわせて月次決算はいつまでに終えるかもご覧ください。
手間の減らし方3つの比べ方
3つの違いを表にまとめます。
| 方法 |
効く手間 |
向く会社 |
向かない会社 |
| ルールの見直し |
承認者の差し戻し |
申請件数が少なく、経理側の手間が月8時間未満 |
申請件数が多く、入力そのものが重い |
| クラウド精算 |
申請者の入力と経理の転記 |
カード払い・交通系ICが多い |
現金払いが中心 |
| 外注 |
経理のチェックと記帳 |
経理が1人で、辞めると止まる |
領収書がそろわない |
当社が紙・Excelの経費精算をクラウド経費精算に切り替えた12社では、1社あたり月8〜15時間の手間が減り、締め作業が約3日短くなりました(2023年4月〜2026年9月)。
システムの選び方は、経費精算システムの選び方4つの軸と導入前の注意点で比べています。
会社の状態ごとの選び方は次のとおりです。
- 差し戻しの理由がいつも同じなら、ルールの見直しを選んでください。システムを入れても、判断の基準が無いまま差し戻しが続きます
- カード払いが多く、経理が転記に時間を使っているなら、クラウド精算を選んでください
- 経理担当が1人で、休むと精算が止まるなら、外注が向いています
上の3つのうち2つ以上に当てはまる会社は、ルールの見直しを先にしてください。差し戻しの原因が残ったままでは、システムに入れても委託先に渡しても、同じ差し戻しが続くためです。
ルールを決めた後に、転記が重ければクラウド精算、経理の人手が足りなければ外注へ進みます。
経理担当が離職した大手コンサル会社から、経理BPOを導入したいという問い合わせがあり、当社は契約を結びました。担当者が1人だけの会社では、その人がいなくなった時点で経費精算も止まります。
外注に進む目安は、当社の判断では、経理が1人で、その人が休むと月次の締めが止まる状態かどうかです。当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(2023年4月〜2026年9月)。
経費精算だけを切り出して任せる形は、経費精算BPOとは?任せられる業務3つと費用相場で詳しく扱っています。経費精算の外注を決めた後の準備は、経費精算の外注で渡す資料5点にまとめました。
経費精算を外注しても楽にならない会社の条件
現金取引が中心で領収書がそろわない会社は、経費精算を外注しても手間が減りません。
外注で減るのは、そろった書類をチェックして記帳する手間です。書類が集まらない会社では、委託先からの問い合わせが増え、社内の手間はかえって増えます。
当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした。(出典: 業種調査)
同じ調べでは、費用・選び方・税理士との違い・依頼できる範囲を調べる質問で、回答の85.0%が経理代行会社の公式サイトを1つ以上出典にしていました。外注先を探すときは、公式サイトの料金と対応範囲を読み比べてください。
当社が2023年4月から2026年9月までに経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件でした。理由の内訳は次のとおりです。
| 理由 |
件数 |
| 現金取引が中心で証憑がそろわない |
3件 |
| 決算直前の丸投げで期限に間に合わない |
2件 |
| 税務の判断まで求められた |
2件 |
上の表の『件数』をグラフにしたもの
経理代行をお断りした・合わなかった理由(当社の支援実績)
当社の7件の例から言える、経費精算の外注を見送ったほうがよい会社の条件は次の3つです。
- 現金払いが中心で、領収書の多くが手元に残っていない会社は、外注の前に法人カードへ切り替えてください
- 決算まで1か月を切っている会社は、今期は自社で締め、来期の頭から外注を始めてください
- 経費にしてよいかの税務判断まで任せたい会社は、税理士との契約が先です
2026年10月に当社が2つのAI(ChatGPT・Gemini)に本記事の論点5問を聞き、10件の答えを集めました。10件の答えのうち、専門家への相談に触れたものは0件でした。(出典: 当社調べ)
最後の条件は、判断の内容で分けると決めやすくなります。社内規程に書いた範囲の経費かどうかは、自社で決めてかまいません。交際費か会議費か迷う支出や、個人の私用が混ざる支出は、税理士に聞いてください。
手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、当社は業務を分担する提携を結びました。記帳は当社、税務の判断は税理士、と分ける形です。
関連する内容として、建設業の記帳代行が合わない3つの状況も公開しています。
経費精算でよくある失敗:備品を消耗品で落とす
経費精算で多い誤りは、資産に計上すべき備品を、立替で買ったまま消耗品として処理することです。
関連する内容として外注費の請求書の仕訳で起きる誤り4つも公開しています。
当社が経理代行で担当した7社では、実際に直した仕訳の誤りが年間約90件ありました(2023年4月〜2026年9月)。
多い順に、外注費と給与の区分が約40件、資産に計上すべき備品の消耗品処理が約25件です。続いて前払費用の計上漏れが約15件、源泉徴収の漏れが約10件でした。
備品の消耗品処理(約25件)について、起きたこと・原因・避け方は次のとおりです。
- 起きたことは、社員が立替で買ったパソコンや機材が、精算のときに「消耗品費」で入力されていたことです
- 原因は、申請画面の科目の選び方が社員任せで、金額による区分のルールが無かったことです
- 避け方は、一定の金額を超える購入は精算の前に経理へ相談する、と規程に書くことです
金額で区分せずに社員に科目を選ばせるのはNGです。申請の手間を減らすつもりで科目の選択を任せると、経理の直しの手間が増えます。
建設業の会社3社の経理代行で、当社が実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。業種によって、精算で間違いやすい科目は変わります。自社で直しが多い科目を1つ決め、そこだけ申請画面に注意書きを入れてください。
同じ調べでは、10件の答えのうち、注意点・失敗・リスクに触れたものは3件でした。(出典: 当社調べ)
今日やること:まず1か月分の差し戻しを数える
経費精算の手間を減らす最初の一歩は、先月分の差し戻しの件数と理由を数えることです。
まず先月の差し戻しを全部書き出してください。理由ごとに件数を数えると、ルールで減らせる手間が分かります。次の週に、経理担当者へ精算にかかった時間を聞いてください。
書き出しは、次の4列の表にすると集計しやすくなります。
| 日付 |
差し戻しの理由 |
直した内容 |
直した人 |
| (例)月日 |
領収書が無い/科目が違う/金額が合わない |
何をどう直したか |
申請者/経理 |
集計後の分かれ道は次のとおりです。
- 差し戻しの半分以上が同じ理由なら、その理由を規程に1行足す。1つの理由を消せば半分が減る、という当社の判断です
- 経理の時間の大半が転記なら、カードとの連携とクラウド精算を検討する。試すときは、1か月分の精算を移して、転記の時間がどれだけ減るかを測る
- 経理が1人で、休むと止まるなら、チェックと記帳の外注を相談する。公式サイトの料金と対応範囲を比べてから問い合わせる
当社は、手間を測る前にシステムを選ぶ順番は取りません。測らずに入れたシステムは、差し戻しの原因を残したまま費用だけが増えるためです。
まとめ: 手間を測ってから、減らす方法を選ぶ
経費精算がめんどくさいのは、申請者・承認者・経理の3か所で手間が別々に出るためです。差し戻しが多いならルール、転記が多いならクラウド精算、経理が1人なら外注が向きます。
3万円未満の電車・バスの運賃などは、帳簿の保存だけで足ります。集める書類を減らすのが一番安い手です。現金払いが中心で領収書がそろわない会社は、外注の前に法人カードへの切り替えを済ませてください。
よくある質問
経費精算がめんどくさいとき、最初に何をすればよいですか?
1か月分の差し戻しの件数と、経理が精算にかけた時間を数えてください。手間の出どころで打ち手が変わります。
クラウド経費精算に替えると、手間はどのくらい減りますか?
2023年4月〜2026年9月に紙・Excelから切り替えた12社は、各社で月8〜15時間減り、締めが約3日短縮しました。
交通費の領収書は全部集めないといけませんか?
3万円未満の電車・バスなどの運賃は、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。
経費精算だけを外注できますか?
できます。領収書のチェックと記帳を任せ、経費として認めるかの最終承認は自社に残す形が一般的です。
経費精算の外注が向かないのはどんな会社ですか?
現金払いが中心で領収書がそろわない会社です。当社が経理代行をお断りした・合わなかった7件のうち3件でした。
外注すると、社内の担当者には何が残りますか?
申請を経費として認めるかの承認と、精算ルールの見直しが残ります。入力とチェックは委託先が受け持ちます。
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