BPO事務とは、請求書や経費精算などの事務を、作業ではなく手順ごと外部の会社に任せる委託です。分け方の基本は、件数が多く手順が決まった事務を任せ、判断・承認と書類の回収を社内に残すことです。
当社が2023年4月から2026年9月までに担当した会社では、請求書の発行代行が18社、受け取り・支払処理の代行が25社でした。事務の範囲が違うため、枚数は1社あたり月20〜150枚、発行と受け取りを合わせた全体で月約1,800枚と分けて読んでください。
この記事は、経理や総務の事務が1人に集まり、BPO(外部委託)でどの事務を任せるか迷っている中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。当社の数字は2023年4月〜2026年9月の支援実績です。
この記事でわかること- BPOに任せやすい事務と、社内に残す事務の分け方
- 当社が経理代行をお断りした7件の理由
- 自社で回すか、BPOか、派遣かの分かれ道
- 今日から始める仕分けの手順
BPO事務とは?作業ではなく手順ごと任せる委託
BPO事務は、事務の手順と仕上がりの責任まで外部の会社に任せる委託で、指示を出して働いてもらう派遣とは違います。
あわせてコーポレートとバックオフィスの違いは?もご覧ください。
BPO事務とは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のうち、請求書・経費精算・記帳・給与の集計などの事務を、手順ごと外部の会社に任せる形を指します。
BPOという言葉の意味や種類は、BPOとは?意味と業務の種類5つで整理しています。この記事では、事務のどこを任せるかに絞ります。
求人サイトで見る「BPO事務」は、BPO会社の中で受託した事務を処理する仕事のことです。言葉は同じでも立場が違います。この記事は、事務を頼む会社の側の判断を扱います。
経理・人事・総務まで広く任せる形は、バックオフィスBPOとは?で説明しています。
BPOに任せやすい事務は?件数が多く手順が決まった事務
BPOに任せやすいのは、毎月の件数が多く、誰がやっても同じ手順で終わる事務です。
関連する内容として経費精算がめんどくさい会社の落とし穴も公開しています。
BPOに出す事務と社内に残す事務
当社が2023年4月から2026年9月までに担当した事務の範囲と数字は、次の表のとおりです。
| 事務 |
当社が担当した数 |
担当して分かったこと |
| 請求書の発行 |
18社 |
1社あたり月20〜150枚 |
| 受け取った請求書の処理・支払 |
25社 |
全体で月約1,800枚(発行と合わせた数) |
| 経費精算のクラウド化 |
12社 |
1社あたり月8〜15時間の手間が減った |
| 銀行・カード連携による入力 |
15社 |
入力作業が月平均20時間から6時間に |
| 経理代行・記帳代行 |
48社 |
うち31社が継続中 |
上の表の『当社が担当した数』をグラフにしたもの
表の事務には共通点があります。請求書や明細という「元の書類」があれば、判断をはさまずに処理できる点です。
経費精算をクラウドに切り替えた12社では、手間の減少に加えて締め作業が約3日短くなりました(2023年4月〜2026年9月)。経費精算だけを任せる形は、経費精算BPOとは?で詳しく解説しています。
経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(2023年4月〜2026年9月。最も早い会社は翌月5日)。9社の内訳は公開していないため、平均ではなく自社の締め日で比べてください。
総務や人事の事務でも、勤怠の集計や備品の発注のように手順が決まったものは、同じ考え方で任せられます。
社内に残す事務は?判断・承認と書類の回収
社内に残すのは、支払の承認、取引条件の判断、現場からの書類の回収の3つです。
承認と判断を外に出すと、お金の流れを決める人が社内からいなくなります。たとえば、値引きに応じるか、支払いを待ってもらうかは、取引先との関係で決まります。BPOの会社は、決まった条件どおりにしか処理できません。
書類の回収も残ります。領収書や納品書は、受け取った社員の手元にあります。回収の声かけは、社内の人のほうが早く進みます。
承認まで外に任せるのはNG
支払の承認を委託先に預けると、誤った支払いに社内の誰も気づけません。承認ボタンを押す人は、必ず社内に1人置いてください。
私が仕訳の誤りを見た現場の話をします。建設業の会社3社の経理代行で、実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした(2026年10月時点)。支払の目的を知るのは社内の人だけなので、判断できる人を社内に残す理由の1つです。
お断りした7件とは別に、当社が経理代行で担当した7社では、実際に直した仕訳の誤りが年間約90件ありました(2023年4月〜2026年9月)。多かったのは外注費と給与の区分で、約40件です。区分の判断材料は、社内の契約の中身にあります。契約の中身を説明できる人を社内に残すことが、誤りを減らす近道です。
BPO事務が合わない3つの場合と避け方
当社が2023年4月から2026年9月までに経理代行をお断りした・合わなかった例は7件で、理由は3つに分かれます。
経理代行が合わなかった7件の理由(当社の支援実績)
| 合わなかった理由 |
件数 |
| 現金取引が中心で証憑がそろわない |
3件 |
| 決算直前の丸投げで期限に間に合わない |
2件 |
| 税務の判断まで求められた |
2件 |
上の表の『件数』をグラフにしたもの
合わない場合1: 現金取引が中心で証憑がそろわない
起きたことは、領収書のない現金の支払いが多く、入力の元になる書類がそろわなかったことです。原因は、現金で払った分の記録を残す決まりがなかったことでした。
避け方は、BPOを頼む前に現金の支払いを記録する決まりを先に作ることです。証憑がそろわない会社は、BPOより先に回収の手順を整えてください。
合わない場合2: 決算直前の丸投げで期限に間に合わない
起きたことは、1年分の書類が決算の直前にまとめて届き、申告の期限までに処理が終わらない見込みになったことです。原因は、毎月の処理をしていなかったことです。
避け方は、決算の3か月前までに相談することです。当社の判断では、毎月の処理を数か月分さかのぼる時間が要るためです。
合わない場合3: 税務の判断まで求められた
起きたことは、記帳だけでなく、税金の扱いの判断まで頼まれたことです。税務の判断と申告は税理士の業務で、BPOの会社は代わりに行えません。手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、業務を分担する提携を結びました。記帳は当社、税務の判断は税理士と、線を引いた形です。
国税庁の税理士制度のQ&A(問6-1)は、税理士でない者が税理士業務を行うことを税理士法第52条が原則として禁じていると説明しています。
避け方は、記帳はBPO、税務の判断は税理士と、頼む先を分けることです。経費の区分のように帳簿の付け方が決まっているものは、BPOの会社に任せてかまいません。税額が変わる判断が絡む場合は、税理士に聞いてください。
自社で回すか、BPOに出すか、派遣かの分かれ道
事務の件数が多く手順が決まっているならBPO、人手が一時的に足りないだけなら派遣、件数が少ないなら自社で回すのが分かれ目です。
| 会社の状態 |
合うやり方 |
| 請求書や経費精算の件数が多く、手順が決まっている |
BPOに任せる |
| 繁忙期だけ人手が足りず、社内で指示を出せる人がいる |
派遣を使う |
| 件数が少なく、社長や担当者が全体を把握している |
自社で回す |
| 担当者が1人で、その人が休むと事務が止まる |
手順を書き出し、BPOも使う |
BPOで頼んだのに、社内の人が委託先の担当者へ作業の指示を出す運用は避けてください。厚生労働省の労働者派遣と請負の区分に関する案内は、派遣か請負かを契約の形ではなく実態で判断するとしています。直してほしい点は、決めた窓口を通して伝えます。
上の表で自社の状態が2つ以上に当てはまるときは、当社の判断で、書類の回収、担当者1人の対策の順に優先してください。証憑がそろわない状態に当てはまるなら、回収の決まりを先に作ってください。元の書類が無いと、BPOも派遣も処理を始められないためです。
書類がそろっていて担当者が1人だけなら、休んでも止まらない形を先に作るため、BPOを優先します。
自分の会社に当てはめる計算例を1つ置きます。仮に担当者が銀行の明細の手入力に月20時間かけているとします。当社が銀行・カード連携に切り替えた15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました(2023年4月〜2026年9月)。同じ程度に減れば、月14時間ほどが別の仕事に回せる計算です。
当社の判断では、ひとつの事務に月10時間以上かかっているなら、任せるかどうかを検討してください。経費精算を切り替えた12社で減った手間が、1社あたり月8〜15時間だったためです。測るときは、切り替え前の1か月に記録した時間と比べてください。
月10時間に届かない事務は、自社で回して手順だけ書き出してください。減らせる時間が小さく、頼む手間のほうが大きくなるためです。請求書や記帳など事務ごとに基準を持つ根拠は当社にはなく、事務の種類を問わず月の合計時間で見ます。
見送ったあとは、次の2つを3か月ごとに見直してください。1つ目は、月の合計時間が10時間を超えていないかです。2つ目は、担当者が1人に偏っていないかです。
費用は、次の考え方で判断します。税理士ドットコムの記帳代行の相場は、1仕訳あたり50〜100円です。例えば月の仕訳が200件なら、この下限と上限にそれぞれ200件を掛けた2つの額が、月の目安の幅になります。
その上限が、減る見込みの時間に担当者の時給を掛けた額を超えるなら、見送ってください。下限でも超えるなら、範囲を絞って見積もりを取り直します。
任せた後も見直します。当社の判断では、数回の締めを終えても減った時間が頼む前の半分に届かないなら、任せる範囲を戻すか、頼む先を変えます。
BPOを見送ってよい場合もあります。月に数枚の請求書しかなく、担当者が困っていない会社には向きません。
経理担当が離職した大手コンサル会社から、経理BPOを導入したいとの問い合わせを受け、当社は契約を結びました。担当者が辞めてから探すと、引き継ぎの資料がない状態で始めることになります。担当者がいるうちに手順を書き出しておくと、BPOへの移行は早く進みます。
BPOの会社に聞く3つの質問と費用の目安
BPO事務の見積もりを取るときは、費用の相場を知ったうえで、範囲・書類の受け渡し・誤りの直し方の3点を聞いてください。
費用は、任せる事務と件数で変わります。税理士ドットコムの経理代行の相場の解説では、記帳代行の相場が月5,000円〜5万円、1仕訳あたり50〜100円とされています(2026年10月21日に確認)。請求書の発行や経費精算を足すと、その分の料金が加わります。
2026年10月に当社が3つのAI(ChatGPT・Claude・Gemini)に「bpo 事務について教えてください」と聞きました。3件の答えのうち、費用の金額(◯円)に触れた答えは無く、期間(◯か月・◯日など)に触れた答えは無く、専門家への相談に触れた答えは無くでした(出典: 当社調べ)。
同じ調べでは、3件の答えの出典に挙がったページは7件でした。内訳は、公的機関・学会・業界団体が0件、ニュース・メディア・まとめが0件、ポータル・比較サイトが1件です。
AIの答えだけでは費用を決められないため、見積もりで確かめてください。
当社の料金は、事務の範囲と件数を伺ったうえでお伝えしています。相場と比べるときは、同じ件数・同じ範囲で見積もりをそろえることが欠かせません。
見積もりの場で聞く質問のひな形は、次の3つです。
- 「月◯枚の請求書と◯件の経費精算を任せた場合、料金に含まれる作業と含まれない作業は何ですか」
- 「領収書や納品書は、いつまでに、どの方法で渡せばよいですか。遅れたときはどうなりますか」
- 「入力の誤りが見つかったとき、誰が、いつまでに直しますか。直した内容はどう報告されますか」
1つ目の答えがあいまいな会社は、後から追加の費用が出やすくなります。2つ目と3つ目は、毎月の締めの速さに直結します。契約書で確かめる条項は、経理BPOの契約書|見落としやすい条項6つにまとめています。
今日やること:事務を1週間書き出して仕分ける
BPO事務の第一歩は、社内の事務を1週間分書き出し、件数と手順で「任せる・残す」に仕分けることです。
BPO事務を始めるまでの流れ
まず、今週行った事務を、名前・件数・かかった時間の3列で書き出してください。紙でも表計算でもかまいません。
次に、手順が毎回同じ事務に印を付けます。印の付いた事務のうち、件数の多いものが任せる候補です。
3つ目に、任せる事務の書類を誰が集めるかを決めます。書類を集める人が決まらない事務は、まだ任せる時期ではありません。
最後に、候補の中から1つだけ選んで相談します。当社の判断では、請求書の発行のように仕上がりを確かめやすい事務から始めるのが安全です。
任せる会社の比べ方は経理BPOの選び方6つで、契約までの期間は経理BPO導入の流れで確かめられます。
仕分けの結果がすべて「残す」だった場合は、件数より手順が決まっていないことが原因です。手順を書き出してから、もう一度仕分けてください。すべて「任せる」でも、最初は1つだけにします。
よくある質問
BPO事務は、どこまで自分の会社でやる必要がありますか?
支払の承認、取引条件の判断、領収書や納品書の回収は社内に残ります。入力と書類の作成は任せられます。
BPOに事務を頼むと、何をしてもらえますか?
請求書の発行、受け取った請求書の処理、経費精算の確認、記帳の入力、試算表の作成などを任せられます。
BPOに事務を任せると、どのくらいで変化が見えますか?
当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に早まりました。個社差は大きいです。
BPO事務が向かないのは、どんな会社ですか?
現金取引が中心で証憑がそろわない会社、決算直前にまとめて頼みたい会社、税務の判断まで任せたい会社です。
求人で見る「BPO事務」と、この記事のBPO事務は同じですか?
求人の「BPO事務」は、BPO会社の中で受託した事務を処理する仕事です。この記事は、事務を頼む会社の側の話です。
事務を一度に全部BPOへ移してもよいですか?
当社の判断では、1つの事務から始めるほうが安全です。手順のずれを、件数が少ないうちに直せるためです。
まとめ: BPO事務は「任せる・残す」の仕分けから始める
BPO事務は、件数が多く手順が決まった事務を任せ、承認・判断・書類の回収を社内に残すと失敗しにくくなります。
証憑がそろわない会社、決算直前にまとめて頼みたい会社、税務の判断まで求める会社には向きません。当てはまる場合は、先に社内の決まりを整えてください。
今日できる一歩は、今週の事務を名前・件数・時間の3列で書き出すことです。書き出した表があれば、相談の場で任せる範囲をすぐに決められます。
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