税理士事務所の記帳代行料金表は、月額の欄だけでなく、単位・資料の渡し方・顧問料との関係・年1回の別料金・件数超過の5つの欄で読みます。料金表は事務所ごとに作りが違います。同じ「月1万円」でも、含まれる作業が違えば年間の支払いは変わります。この記事では、料金表を年額に直して比べる手順を、架空の料金表を使って説明します。
この記事は、税理士事務所の記帳代行料金表を2〜3件見比べていて、どれが自社にとって安いのか判断できない中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。報酬の決め方は、近畿税理士会のサイトで公開されている資料で2026年10月に確認しました。
この記事でわかること- 税理士事務所の料金表が事務所ごとに違う理由
- 料金表で見落としやすい5つの欄
- 架空の料金表を年額に直す計算例
- 税理士事務所と経理BPOの選び分け
税理士事務所の料金表が事務所ごとに違う理由
税理士の報酬は、各事務所が自分で決めているため、料金表の作りも事務所ごとに違います。かつては税理士会の会則に報酬の規定がありました。
近畿税理士会のサイトで公開されている報酬に関する資料によると、2001年の税理士法改正で税理士会の報酬規定は廃止されました。2002年4月以降は、税理士が自らの責任で報酬額を決める方式です。
記帳代行料金表とは、税理士事務所などが記帳を引き受けるときの料金を、仕訳の件数や作業の範囲ごとに並べた表です。表に無い作業は、別の料金になると考えて読みます。
決まった様式が無いので、ある事務所は「仕訳件数ごと」、別の事務所は「売上規模ごと」に料金を並べます。私たちが料金表を見比べるときは、金額より先に何を単位に料金が変わるのかを確かめます。単位がそろわないまま金額を比べても、答えは出ません。
相場の水準そのものは、税理士の記帳代行報酬相場と経理BPO比較で整理しています。
料金表で見落としやすい5つの欄
料金表は、単位・資料の渡し方・顧問料との関係・年1回の別料金・件数超過の5つの欄で読みます。月額の欄はその後に見ます。
| 欄 |
確かめること |
見落とすと起きること |
| 1. 料金の単位 |
仕訳1件の数え方・税込か税抜か・月額か年額か |
安く見えた事務所が実は高い |
| 2. 資料の渡し方 |
整理済みと未整理で料金が分かれるか |
丸投げで加算が付く |
| 3. 顧問料との関係 |
記帳代行料が顧問料に含まれるか別か |
顧問料を二重に見落とす |
| 4. 年1回の別料金 |
決算料・年末調整・法定調書の有無 |
決算期に想定外の請求 |
| 5. 件数の超過 |
区切りを超えたときの単価と最低料金 |
繁忙月だけ請求が跳ねる |
1件の数え方は特に差が出ます。通帳の1行を1件と数える事務所もあれば、複合仕訳を行数で数える事務所もあります。見積もりの前に「1件とは何か」を聞いてください。
資料の渡し方も料金を動かします。領収書を月ごとに台紙へ貼って渡すのか、箱に入れて渡すのかで作業量は変わります。料金表に丸投げの区分があれば、自社の実際の渡し方で計算します。
料金表を年額に直す計算例
料金表は、毎月の欄を12倍し、年1回の欄を足して年額に直すと比べられます。ここでは架空の料金表で計算します。
前提は、月の仕訳が150件の法人です。架空の料金表は、顧問料が月2万円、記帳代行料が101〜200件で月1万5,000円です。決算料は顧問料の4か月分、年末調整は年2万円とします。
| 項目 |
計算 |
年額 |
| 顧問料 |
月2万円×12か月 |
24万円 |
| 記帳代行料 |
月1万5,000円×12か月 |
18万円 |
| 決算料 |
顧問料2万円×4か月分 |
8万円 |
| 年末調整 |
年1回 |
2万円 |
| 合計 |
— |
52万円 |
上の表の『年額』をグラフにしたもの(「合計」の行は除く)
月額の欄だけを見ると、この料金表は月3万5,000円です。年額に直すと52万円、月にならすと約4万3,000円になります。月額の差が5,000円の2つの事務所でも、決算料の決め方が違えば年額の順番は入れ替わります。
決算料が「顧問料の◯か月分」と書かれた料金表は、顧問料が上がると決算料も一緒に上がります。顧問料の欄を変える見積もりを受けたら、決算料も計算し直してください。
料金表の比べ方でよくある失敗
よくある失敗は、月額の合計だけで2つの料金表を比べ、決算期に年額の差に気づくことです。起きたこと・原因・避け方の順に整理します。
失敗1: 月額の安い方を選んだら年額で高かった
起きたこと: 決算期に、月額では見えなかった決算料の請求が届く。
原因: 決算料が年1回の別欄で、比べた表に入っていなかった。
避け方: 年1回の欄をすべて足した年額で比べる。
失敗2: 繁忙月だけ請求が跳ねた
起きたこと: 年末や決算月に、区切りを超えた分の料金が加わる。
原因: 月平均の件数で見積もり、件数の多い月を数えていなかった。
避け方: 直近12か月で最も仕訳の多い月の件数も伝えて見積もる。
区切りを超えたときの扱いは、事務所によって「1件ごとの追加」と「上の区分へ切り替え」に分かれます。どちらなのかを料金表の注記で確かめてください。
税理士事務所の料金表か経理BPOか
決算と申告まで1か所に任せたいなら税理士事務所、記帳だけを切り出したいなら経理BPOの料金表を比べます。比べる相手を間違えると、料金表を読み込んでも答えは出ません。
あわせて税理士に記帳代行を丸投げすると月次が遅れる?もご覧ください。
関連する内容は税理士に記帳代行を丸投げすると月次が遅れる?で整理しています。
税務書類の作成と税務相談は、税理士法第2条で税理士の業務と定められています。経理BPOの会社が受けるのは、記帳・請求書の発行・支払処理などの事務です。境界の詳しい説明は記帳代行は税理士法違反?3つの独占業務とNG事例にまとめています。
| 自社の状況 |
比べる料金表 |
| 顧問税理士がいない・決算も任せたい |
税理士事務所の料金表どうし |
| 顧問税理士はいて、記帳の手が足りない |
経理BPOの料金表(決算は今の税理士) |
| 仕訳が少なく、会計ソフトで自分で回せている |
頼まずに続ける選択もある |
今の顧問税理士との関係を変えずに記帳の手だけを増やしたい会社は、経理BPOが合います。当社の経理BPOは、2023年1月から2026年8月までに10社へ導入しました。契約した10社のうち、2年以内に解約したのは1社です(継続率90%)。
導入した10社では、月次決算が締まるまでの日数が中央値で15日から7日に短縮しました(2024年4月〜2026年8月・10社の中央値。個社差が大きい数字です)。経理BPOの範囲は経理BPOとは?メリット3つと費用相場で説明しています。
見積もりを頼む前に用意する3つのこと
料金表を正しく当てはめるには、仕訳の件数・資料の渡し方・決算を誰が担うかの3つを先にそろえます。
1つ目は、直近12か月の月ごとの仕訳件数です。平均だけでなく、最も多い月の件数も書き出します。2つ目は、領収書や請求書をどの状態で渡せるかです。
3つ目は、決算と申告を誰が担うかです。ここが決まると、比べるのが税理士事務所の料金表か経理BPOの料金表かが決まります。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援も手がけています。その現場では、仕訳件数を数えた時点で、頼む範囲が自然に決まる会社を多く見てきました。今日できる一歩は、会計ソフトから月ごとの仕訳件数を出すことです。
料金を抑える工夫は記帳代行の費用相場と抑える4つのコツで、法人の目安は記帳代行費用の相場は法人でいくら?で整理しています。
よくある質問
税理士事務所の記帳代行料金表で最初に見る欄はどこですか?
料金の単位の欄です。仕訳の何件ごとに料金が変わるか、税込か税抜か、月額か年額かを先に確かめます。
料金表の月額が安い事務所を選べば年間の費用も安くなりますか?
そうとは限りません。決算料や年末調整は年1回の別料金で、年額に直すと順番が入れ替わることがあります。
領収書を整理せずに渡すと料金は変わりますか?
変わる事務所が多いです。料金表に資料整理の加算や丸投げの区分があれば、自社の渡し方で計算します。
記帳だけを任せて決算は自社で行うことはできますか?
税理士事務所は顧問契約が前提のことが多いです。記帳だけなら経理BPOの会社に切り出す方法もあります。
記帳を外に任せると月次の締めは早くなりますか?
当社が経理BPOを導入した10社では、月次決算が締まるまでの日数の中央値が15日から7日に縮みました。
まとめ: 料金表は5つの欄を読んでから年額で比べる
税理士事務所の記帳代行料金表は、5つの欄を読み、年1回の別料金まで足した年額で比べると判断できます。決算まで任せるなら税理士事務所どうし、記帳だけなら経理BPOと、比べる相手を先に決めてください。まずは会計ソフトから、直近12か月の月ごとの仕訳件数を出すところから始めましょう。
経理BPO・経理代行の比較表を見る / 士業(税理士・社労士ほか)の記事をまとめて見る