楽楽精算の経費精算のやり方は、領収書を撮影してAI-OCRの読み取りを確認し、勘定科目・部門を選んで申請するという基本の流れに、部門ごとの承認ルート設計を組み合わせるのが要点です。部門や拠点が複数ある会社ほど、申請の流れそのものより承認ルートの設計で差がつきます。本記事では、申請から承認までの流れ・複数部門の承認ルート設計・申請ルールチェック・法人カード連携・既存の会計ソフトへの仕訳連携・よくある失敗まで解説します。
この記事は、部門や拠点が複数ある中小企業の経営者・経理担当者や、楽楽精算の承認フロー設計に悩む管理部門向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 申請から承認までの一連の流れ
- 複数部門・複数拠点の承認ルート設計
- 申請ルールチェックと法人カード連携の範囲
- 既存の会計ソフトへの仕訳連携とfreeeとの違い
楽楽精算とは?freeeとの違いとどんな会社に向くか
楽楽精算とは、株式会社ラクスが提供する経費精算に特化したクラウドシステムのことです。領収書のスマホ撮影から承認、会計ソフトへの仕訳出力までを一連の流れで処理します。
楽楽精算とは、AI-OCRによる領収書の自動入力、申請ルールチェック、部門や金額に応じた承認ルート設定を組み合わせ、経費精算業務そのものを効率化するために作られた専門システムのことです。
楽楽精算は承認ルート設計から始まる
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。部門が増えた会社ほど、ツールの機能より先に承認ルートの設計で行き詰まる相談が目立ちます。
デロイト トーマツ ミック経済研究所が公表した「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」があります。この調査では、楽楽精算が経費精算システムの累計導入社数で1位という結果が示されています。部門や承認者が多い組織での採用実績が多い点が、この結果の背景にあります。
freeeなどの会計ソフトは経費精算を機能の一部として持ちますが、楽楽精算は経費精算そのものに特化し、部門や拠点が多く承認段階が複雑な組織向けの機能を厚く持っています。両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 |
楽楽精算 |
freeeの経費精算 |
| 位置づけ |
経費精算特化のシステム |
会計ソフトの一機能 |
| 得意な組織規模 |
部門・拠点が複数ある中堅企業 |
個人事業主〜中小企業 |
| 会計ソフト連携 |
CSV出力で既存の会計システムへ取り込み |
freee自身の会計ソフトに直接反映 |
| 料金の目安 |
初期10万円+月額3万円〜(税抜) |
月額利用料のみ(規模により変動) |
freeeの経費精算については、freeeの経費精算のやり方|申請から承認までの4ステップでも解説しています。すでに別の会計ソフトを使っていて経費精算だけ強化したい会社は、楽楽精算のような特化型のほうが選択肢に入りやすくなります。
申請から承認までの一連の流れ
楽楽精算での経費精算は、領収書を撮影する・AI-OCRの読み取りを確認する・勘定科目や部門を選ぶ・申請する・承認者が処理する、という5ステップで進みます。
申請から承認までの5ステップ
ステップ1〜2では、スマホアプリで領収書を撮影し、AI-OCRが自動で読み取った金額・日付・支払先を確認します。かすれた文字は誤読することもあるため、金額と日付だけは必ず目視で確認してください。
ステップ3〜4では、勘定科目と部門を選び、内容を確定して申請します。部門を選ぶ操作が加わる点が、部門管理をしない小規模な運用との違いです。
ステップ5では、承認者が申請内容を確認し、承認・差し戻し・却下のいずれかを選びます。
| 処理 |
内容 |
申請者側の対応 |
| 承認 |
内容に問題がなく確定する |
対応不要(仕訳へ自動反映) |
| 差し戻し |
科目や金額の修正が必要 |
内容を修正して再提出する |
| 却下 |
経費として認められない |
申請を取り下げる |
ラクスが公表している楽楽精算の紹介ページがあります。この情報では、社員数100名の会社が導入した場合、経費精算にかかる作業時間が年間で約80%削減されるという試算が示されています。申請から承認までを一気通貫で処理できる点が、この削減効果につながっています。
複数部門・複数拠点がある会社の承認ルート設計
部門や拠点が複数ある会社では、部門ごとの承認者・金額による承認段階の分岐・承認者不在時の代理設定という3つを先に決めておく必要があります。
承認ルート設計で先に決めておく3つ
1つ目は、部門ごとの承認者です。本社の管理部門が全部門の一次承認を兼ねると、拠点が増えるほど処理が滞ります。
2つ目は、金額による承認段階の分岐です。少額の経費は部門長1人の承認で完結させ、一定額を超える経費だけ本社の承認を必須にする、といった二段構えが機能します。
3つ目は、承認者不在時の代理設定です。拠点ごとに承認者が1人しかいない体制では、出張や休暇のたびに承認が止まります。
私も経理BPOの相談を受ける中で、拠点が増えたのに承認ルートを本社1人のままにしていた会社に出会ったことがあります。拠点数が増えたタイミングは、承認ルートを見直す自然な区切りになります。
部門ごとの承認者を置く場合は、誰が一次承認者で誰が最終承認者かを、組織図と合わせて文書化しておくことをおすすめします。
口頭だけの取り決めは、担当者が異動や退職をした瞬間に引き継がれず、承認ルートが空白になる原因になります。拠点が増える会社ほど、この文書化を後回しにしないことが運用の安定につながります。
承認者の一覧表を作る際は、氏名だけでなく代理承認者と連絡先も併記しておくと、緊急時にすぐ確認できます。経理自動化ツール全般の選び方は、経理自動化ツールとは?機能5分類と失敗しない選び方でも解説しています。
申請ルールチェックと法人カード連携でどこまで防げるか
楽楽精算には、金額上限や規定違反を自動で検知する申請ルールチェックという機能があります。
この機能は、ルールに反する申請を自動でブロックまたは警告し、承認者や経理担当者が目視でチェックする手間を減らします。部門ごとに上限額が違う会社でも、部門マスタと連動させておけば誤った申請を入口で止められます。
法人カードの利用明細は、提携しているカード会社であれば自動で取り込め、交通系ICカードもスマホで読み取るだけで乗降区間と金額が入力されます。定期区間を除いた運賃を自動算出できるため、営業担当者が複数の取引先を回る日でも、区間ごとに手入力する手間がなくなります。
明細の全件が自動で経費データになるわけではなく、利用履歴から経費に該当する項目を選んで申請する操作は必要です。全件が自動で確定するわけではない点は、事前に理解しておくと戸惑いません。
ラクスが公表している同ページでは、サービスの継続率が2025年3月期実績で99%だったと報告されています。申請ルールチェックで入口の誤りを防げることが、この継続率を支える要素のひとつです。
既存の会計ソフトへの仕訳連携で気をつけること
楽楽精算は、勘定科目や税区分を自動で振り分けたうえで、CSV形式のデータを出力し、既存の会計システムへ取り込む形で仕訳連携します。
freeeのように経費精算から会計帳簿までを1つのソフトで完結させる仕組みとは違い、楽楽精算はすでに使っている会計ソフトを変えずに、経費精算の部分だけを強化したい会社に向いています。すでに別の会計システムを長年使っている中堅企業で、この連携方式が選ばれる場面が多くなります。
取り込み時に気をつけたいのは、勘定科目のコード体系のすり合わせです。楽楽精算側の科目コードと会計ソフト側の科目コードが対応していないと、取り込み後に手直しが発生します。導入前に、自社の会計ソフトの科目コード一覧を用意し、対応表を作っておくと手戻りを防げます。
連携先のソフトを乗り換える予定がない会社ほど、この仕訳連携の設計を丁寧に行う価値があります。会計ソフトを乗り換えるとなると、過去データの移行や従業員への操作教育など、経費精算とは別の負担が発生します。楽楽精算のように既存ソフトを変えずに済む選択肢は、そうした負担を避けたい会社にとって現実的な落としどころになります。
承認ルートを整えたうえで経費精算のルールそのものを見直したい場合は、経費精算ルールの作り方|中小企業の5ステップと規程項目も参考になります。
仕訳の自動化そのものについては、仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップでも解説しています。
楽楽精算の導入でよくある失敗と対処法
楽楽精算でよくある失敗は、承認ルートを本社の1人に集約してしまうことと、部門ごとの科目ルールを統一しないまま運用することです。
複数部門で失敗する運用と失敗しない運用
注意: 承認ルートを1人に集約しない
本社の担当者1人がすべての部門の承認を兼ねると、拠点が増えるほど処理が滞ります。部門が3つ以上ある場合は、部門ごとに一次承認者を置いてください。
1つ目は、承認ルートを本社1人に集約してしまうケースです。担当者が休暇や出張で不在になると、全社の経費精算が止まります。
2つ目は、部門ごとの科目ルールがバラバラなまま運用してしまうケースです。似た科目が複数あると、部門間で月次の集計が合わなくなります。
3つ目は、申請ルールチェックの警告を放置してしまうケースです。警告が出ても内容を確認せず承認していると、チェック機能そのものが形骸化します。警告が出た申請は、理由を確認したうえで承認するかどうかを判断する運用にしてください。
4つ目は、会計ソフト側の科目コードとのすり合わせをせずに導入してしまうケースです。取り込むたびに手直しが必要になり、結局手作業が残ります。導入前の対応表づくりは、地味でも省略しない方がよい工程です。
自社での運用が回らない場合は、経理BPOの無料相談で承認ルートの設計から記帳までの流れを一緒に整理することもできます。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
紙の領収書をどう扱うか
電子帳簿保存法の要件を満たすかどうかで、紙の扱いが変わります。ここを決めずに運用を始めると、あとで全部やり直しになります。
決めるのは次の2点です。
| 決めること |
選択肢 |
影響 |
| 紙の領収書 |
スキャンして原本を捨てる/原本も保管する |
捨てる場合はタイムスタンプなどの要件を満たす必要がある |
| 電子で受け取った領収書 |
印刷して紙で保管する(不可)/電子のまま保存する |
電子取引は電子のまま保存が原則 |
2つ目は間違えやすいところです。メールやWebで受け取った領収書を印刷して紙で保管する運用は、原則として認められません。
要件は改正で変わります。運用を決める前に、税理士か顧問先に現行の要件を確認してください。ツールの機能があることと、自社の運用が要件を満たすことは別の話です。
よくある質問
楽楽精算はどこから経費を申請しますか?
スマホアプリで領収書を撮影するか、Web版の申請画面から金額や科目を入力して申請します。
複数の部門がある会社でも承認ルートを分けられますか?
部門・金額・申請内容ごとに承認者や承認段階数を分けて設定できます。
申請ルールチェックとは何ですか?
金額上限や規定違反を自動で検知し、違反する申請をブロックまたは警告する機能です。
既存の会計ソフトに仕訳データを取り込めますか?
勘定科目や税区分を自動で振り分けたうえで、CSV形式で出力して取り込めます。
freeeの経費精算と何が違いますか?
freeeは会計ソフトの一機能、楽楽精算は経費精算に特化し複雑な承認フローに強い点が違います。
楽楽精算の導入でよくある失敗は何ですか?
承認ルートを本社の1人に集約し、部門ごとの科目ルールを統一しないまま運用することです。
まとめ: 楽楽精算は承認ルート設計が近道
楽楽精算は、部門ごとの承認者・金額による承認段階・代理承認者という3つを先に設計しておけば、部門や拠点が増えても経費精算の運用を止めずに回せます。申請ルールチェックを活用し、警告を放置しない運用にしておくことも重要なポイントです。
まずは自社の部門構成を洗い出し、承認ルートが今の組織に合っているか見直すところから始めてください。会計ソフト側の科目コードとのすり合わせも、導入前に済ませておくと安心です。申請ルールチェックの設定内容も、あわせて確認しておくと入口の誤りを防げます。承認ルートの設計から記帳までまとめて整理したい場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。
ツールを入れただけで複数部門の運用が自動的に回るわけではありません。承認ルート設計という一手間を惜しまないこと、それが経費精算を実際に楽にする分かれ目です。部門や拠点が増えるタイミングで、承認ルートを見直すことも忘れないようにしてください。棚卸しの目安は半年に一度。