インボイス制度で増えた経理の負担は、2割特例と簡易課税による納税額の軽減、請求書システムと経理BPOによる確認作業の外部化を組み合わせることで軽減できます。確認作業そのものを減らす方向と、確認作業を人に頼らず仕組みで済ませる方向の両方を進めることが、負担を根本から減らす近道です。本記事では、インボイス対応で経理負担が増える原因、調査データで見る実態、2026年8月時点で使える6つの負担軽減策を解説します。

この記事は、インボイス制度への対応で経理担当者の負担が増え、「このままでは回らない」と感じている中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。

※ 2026年8月時点の情報です。

この記事でわかること

  • インボイス制度で経理の負担が増える3つの原因
  • 調査データで見る経理担当者の負担増加の実態
  • 2割特例・簡易課税で消費税の負担を軽減する方法
  • システム化・経理BPOで確認作業を減らす具体策

インボイス制度で経理の負担が増える3つの原因

経理の負担は、適格請求書の要件確認・登録番号確認・目視でのチェック作業が増えたことが主な原因です。

インボイス制度とは、正式名称を適格請求書等保存方式といい、仕入税額控除を受けるために、登録番号や税率区分などの記載要件を満たした請求書(適格請求書)の保存を求める制度です。2023年10月1日から始まりました。「請求書を受け取って処理する」だけだった経理業務に、「要件を満たしているか確認する」という新しい工程が加わったことが、負担増の根本にあります。 原因の1つ目は、取引先ごとの登録番号確認です。取引先が適格請求書発行事業者として登録済みかどうかを、請求書1件ごとに確認する必要があります。 原因の2つ目は、記載要件のチェックです。確認項目は登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額など複数。すべてが記載されているかを目視で確認する作業が増えました。 原因の3つ目は、消費税区分の仕分けです。**適格請求書と非適格請求書、8%と10%の税率が混在する請求書を、経理担当者が1件ずつ仕分けて処理する必要があります。** 私たちが経理BPOの相談を受ける中でも、「制度開始前は月末にまとめて処理していた請求書チェックが、今は毎日少しずつ発生している」という声をよく聞きます。作業量そのものより、*確認の頻度*が増えたことを負担に感じている担当者が多い印象です。 さらに、確認作業は一度覚えれば終わりというものではありません。取引先が新しく増えるたびに登録状況を確認し直す必要があり、**取引先数の多い企業ほど、負担が積み上がりやすい構造**になっています。仕入先・外注先が多い業種は、この点を特に意識しておく必要があります。 ## インボイス対応で経理の負担はどれくらい増えた?(調査データで見る実態) 商工会議所の調査では82.2%が事務負担の増加を感じ、月次決算の時間も1人あたり月11.9時間増えています。 日本商工会議所・東京商工会議所は2024年10月26日、「インボイス制度導入後の事務負担等に関する調査」を公表しました。会員企業3,149件を対象に2024年5月20日〜6月14日に実施した調査です。**インボイス制度の導入で「事務負担が増えた」と回答した事業者は82.2%**にのぼりました。 増加した業務の内訳は、「仕入先の登録状況の確認・管理」が66.0%で最も多く、「登録番号の確認(受領時)」57.8%、「記載要件の確認(発行時)」54.3%と続きます。 Sansan株式会社も2023年11月20日、「インボイス制度開始後の実態調査」を公表しています。経理部門500名・非経理部門500名を対象にした調査です。**経理部門の70.2%が対応に課題を感じている**ことが分かりました。月次決算業務の時間は1人あたり約11.9時間、営業日換算で約1.6日分増加したと報告されています。請求書の確認方法は、約70%が目視によるものでした。 同じ調査では、非経理部門でも69.8%が「業務が増えた」と回答しています。**インボイス対応は経理部門だけの問題ではなく、適格請求書の発行・確認を担う営業や購買の現場にも負担が広がっている**ことが分かります。経理担当者だけで抱え込む問題ではないと捉え直すことが、負担軽減の第一歩になります。 2つの調査に共通するのは、負担増の中心が「確認」と「照合」という、機械的だが人の目を必要とする作業だという点です。ここを自動化できるかどうかが、負担軽減の分かれ目になります。 ## インボイス経理の負担を軽減する6つの方法 負担軽減策は、消費税額を抑える方法・確認作業を自動化する方法・確認作業を外部に任せる方法の3方向に分かれます。
インボイス経理の負担を軽減する6つの方法: 2割特例で消費税額を抑える、簡易課税で計算を簡素化する、少額特例で保存義務を減らす、請求書システムで確認を自動化する、登録番号を一括確認する、経理BPOに確認作業を任せる
インボイス経理の負担を軽減する6つの方法
2割特例と簡易課税は、消費税の計算そのものを簡略化し、納税額の負担も抑える方法です。少額特例は、一定額未満の取引でインボイスの保存を不要にし、確認・保存の手間を減らします。 請求書システムの導入と登録番号の一括確認は、目視で行っていたチェック作業を仕組みで自動化する方法です。経理BPOへの委託は、確認作業そのものを社外のプロに任せる方法にあたります。 **すべてを同時に導入する必要はありません。**まずは自社の負担が「消費税の計算」に集中しているのか、「確認作業の量」に集中しているのかを切り分けてから、合う方法を選んでください。次の章から、それぞれを具体的に見ていきます。 ## 2割特例・簡易課税で消費税の申告負担を軽減する 2割特例と簡易課税はどちらも消費税の計算を簡略化できますが、業種や仕入の割合によって有利さが変わります。 | 項目 | 2割特例 | 簡易課税 | |:--|:--|:--| | 対象 | 免税事業者から登録した課税事業者 | 基準期間の課税売上5,000万円以下 | | 消費税額の計算 | 売上税額の2割 | 業種ごとのみなし仕入率 | | 事前の届出 | 不要(申告時に選択) | 原則、前年末までに届出が必要 | | 適用期限 | 2026年9月30日を含む課税期間まで | 制限なし(届出を継続する限り) | 国税庁の適格請求書等保存方式(インボイス制度)の説明によると、**2割特例は免税事業者からインボイス発行事業者に登録した事業者の消費税額を、売上税額の2割まで軽減する経過措置**です。事前の届出が不要で、申告のたびに選べる手軽さが特徴ですが、2026年9月30日を含む課税期間までという期限があります。 法人は個人事業主より適用の終了が早いため、決算期によっては2026年中に最後の適用機会を迎えます。期限を確認せず本則課税に切り替わってしまうと、想定より納税額が増えることがあるため注意してください。 国税庁の簡易課税制度は、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使い、仕入の実額を集計せずに消費税額を計算できる制度です。**仕入が少ない業種ほど有利になりやすい**一方、原則として適用したい課税期間の前年末までに届出が必要です。
2割特例と簡易課税、自社に合う選び方3ステップ: 免税事業者から課税事業者になったか確認する、簡易課税なら業種のみなし仕入率を試算する、2割特例と簡易課税の納税額を比較して選ぶ
2割特例と簡易課税、自社に合う選び方3ステップ
自社に合う制度を選ぶ手順はシンプルです。まず自社が免税事業者から課税事業者になったかを確認し、次に業種のみなし仕入率で簡易課税の税額を試算します。最後に2割特例の税額と比較し、負担が軽いほうを選んでください。 消費税額の計算とは別に、確認・保存の手間そのものを減らす制度もあります。国税庁の少額特例によると、基準期間の課税売上高が1億円以下等の事業者は、**税込1万円未満の課税仕入れであればインボイスの保存なしで仕入税額控除を受けられます**。適用期間は2023年10月1日から2029年9月30日までです。 インボイスの保存自体は不要になりますが、一定事項を記載した帳簿の保存は引き続き必要です。**「1万円未満だから確認しなくてよい」ではなく「1万円未満だから保存の手間だけ省ける」**という違いを、社内のルールに落とし込んでおくと運用の混乱を防げます。 ## 請求書システム・経理ソフトで確認作業を自動化する 請求書システムを導入すると、登録番号の確認や記載要件のチェックを自動化し、目視作業を減らせます。 請求書受領システムの多くは、登録番号を国税庁の公表サイトと自動照合する機能を持っています。**経理担当者が1件ずつ検索して確認していた作業を、システムが自動で行う**ため、確認の抜け漏れも減らせます。 記載要件のチェックについても、必要項目が欠けている請求書を自動で検出する機能があれば、目視確認の負担を大きく減らせます。仕訳への反映まで自動化できれば、確認から記帳までを一気通貫で処理できます。仕訳作業そのものの負担を減らす考え方は、[仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップ](https://corp.7senses.co.jp/blog/shiwake-jidoka-houhou/)でも詳しく解説しています。 **ただし、システムを導入しただけでは負担は減りません。**運用ルールを社内で統一し、例外的な取引の扱いを事前に決めておかないと、システムと手作業が二重に発生してしまいます。導入前に、自社の請求書の種類やパターンを洗い出しておくことをおすすめします。 ## 経理BPO(アウトソーシング)で確認作業そのものを外部に任せる 経理BPOに確認作業ごと委託すれば、担当者を増やさずにインボイス対応の負担を外部化できます。 登録番号の確認、記載要件のチェック、消費税区分の仕分けといった作業は、いずれも標準化しやすい業務です。**自社で担当者を採用・教育するより、すでにインボイス対応の運用に慣れた経理BPO会社に任せるほうが、立ち上がりが早い**ケースが多くあります。経理BPOの委託範囲や費用相場については、[経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説](https://corp.7senses.co.jp/blog/keiri-bpo-toha/)で整理しています。 私たちが経理BPOの相談を受ける中でも、インボイス対応をきっかけに委託を検討し始める企業が増えています。**担当者を1人増やすより、確認業務だけを切り出して委託するほうが、コストを変動費に抑えながら負担を減らせる**という判断です。 すでに経理担当者が1人しかいない体制では、インボイス対応の追加業務が決算の遅れにつながることもあります。決算業務全体の遅れが気になる場合は、[月次決算の早期化とは?中小企業ができる5つの方法](https://corp.7senses.co.jp/blog/getsuji-kessan-soukika-houhou/)もあわせてご覧ください。 ## インボイス経理の負担軽減でやってはいけないNG対応 確認作業を担当者1人に集中させたまま放置すると、負担軽減策を導入しても効果が出にくくなります。
インボイス経理の負担軽減でやってはいけないNG対応: NG例は登録番号の確認を後回しにする・特例の期限を確認せず放置する・確認作業を担当者1人に集中させる・システム未導入のまま目視で続ける、OK例は取引開始前に登録番号を確認する・2割特例の期限を早めに把握する・確認体制を複数人・外部で分散する・システムや代行で確認を自動化する
インボイス経理の負担軽減でやってはいけないNG対応
注意: 登録番号の確認を後回しにするのはNG
取引が始まってから登録番号を確認すると、未登録だった場合の対応が後手に回ります。取引開始前に確認する習慣をつけてください。
特例の期限を確認せず放置するのも避けたい対応です。2割特例のように期限がある制度は、切り替わるタイミングを見誤ると、想定外の納税額増につながります。私も、期限の存在を知らずに本則課税へ切り替わってしまった相談を受けたことがあります。制度の「終わりの日」の把握は、負担軽減策そのものより優先度が高い作業です。 確認作業を担当者1人に集中させる運用も、負担軽減とは逆方向です。**システムや代行を導入しても、最終確認を1人だけに任せていては、属人化の問題が形を変えて残るだけ**です。確認体制は複数人、または外部の委託先と分散させてください。 ## よくある質問
インボイス制度で経理の負担はどのくらい増えていますか?

商工会議所の調査では82.2%が事務負担の増加を感じ、月次決算も1人あたり月11.9時間増えています。

2割特例とはどんな制度ですか?

免税事業者から課税事業者になった場合の消費税額を、売上税額の2割に軽減できる経過措置です。

2割特例はいつまで使えますか?

2023年10月1日から2026年9月30日を含む課税期間まで、法人・個人ともに適用できます。

簡易課税と2割特例はどちらを選ぶべきですか?

業種のみなし仕入率次第で有利さが変わるため、両方で試算してから選ぶのが基本です。

経理BPOに任せるとインボイス対応の負担は減りますか?

登録番号確認や要件チェックを含めて委託できるため、確認作業そのものを社外に任せられます。

インボイス対応で経理担当者が特に注意すべき点は何ですか?

取引先の登録状況確認を後回しにすると、仕入税額控除の計算で手戻りが発生します。

## まとめ: インボイス経理の負担は「減らす」と「任せる」の両輪で軽減する インボイス経理の負担は、2割特例・簡易課税で計算そのものを軽くする方向と、システム化・経理BPOで確認作業を外部化する方向の両方を組み合わせることで、根本から減らせます。制度の期限や届出のタイミングを見落とさないよう、まずは自社がどの特例の対象かを確認してください。 確認作業の量そのものが負担になっている場合は、経理BPOの無料相談で、どこまで外部に任せられるかを相談することもできます。まずは自社の経理業務のうち、インボイス対応にどれくらいの時間がかかっているかを洗い出すところから始めてください。