外注費の請求書は、「法人から」「個人の原稿料・士業から」「登録番号が無い」の3つに分けてから仕訳します。分け方を間違えると、源泉徴収の漏れや消費税の控除のしすぎがあとから見つかります。
基本の仕訳は、作業が終わった月に「外注費/未払金」と入れ、支払った日に未払金を消す形です。この記事では、請求書の種類ごとの仕訳例と、当社が実際に直した誤りから見た注意点を扱います。
この記事は、外注先から届く請求書を毎月記帳している中小企業の経理担当者と、記帳を外に任せるか迷っている経営者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。源泉徴収とインボイスの経過措置は、2026年10月21日に国税庁の案内で確認しました。
この記事でわかること- 請求書の種類ごとの外注費の仕訳例
- 源泉徴収が要る請求書の見分け方と預り金の流れ
- 登録番号の無い請求書を7割控除で仕訳する方法
- 外注費の仕訳で起きる誤り4つと、外に任せるかの分かれ目
外注費の請求書は、どの勘定科目で仕訳する?
外注費の請求書は、作業が終わった月に「外注費/未払金」で計上し、支払った日に「未払金/普通預金」で消します。
外注費とは、自社の業務の一部を社外の法人や個人に請け負わせた対価です。雇用している人に払う給与とは、税金の扱いが異なります。外注費は消費税の控除の対象で、給与は対象外です。区分の目安は誤り1にあります。
登録番号の無い請求書の7割控除とは、インボイスの登録番号が無い相手への支払いで、消費税相当額の7割だけを仮払消費税にする経過措置です。2026年10月から2028年9月までの仕入れが対象です。
法人の外注先から、本体100,000円・消費税10,000円の請求書を受けた例です。税抜経理の会社なら、次の2本の仕訳になります。
| 場面 |
借方 |
貸方 |
| 作業が終わった月 |
外注費 100,000円/仮払消費税 10,000円 |
未払金 110,000円 |
| 支払った日 |
未払金 110,000円 |
普通預金 110,000円 |
税込経理の会社は、110,000円をそのまま外注費にします。請求書の日付ではなく、作業が終わった月で計上するのが基本です。
月末に請求書が届かない外注先は、作業が終わった月の金額を見込みで入れておくと、締めが遅れません。請求書を受け取れないまま払った場合の証憑は、外注費の請求書なしで経費にする証憑で扱っています。
届いた請求書は、3つの種類に分けて仕訳する
外注費の請求書は、法人から・源泉の要る個人から・登録番号が無い相手からの3種類で、仕訳の行数が変わります。
3種類の違いは、次の表のとおりです。
| 請求書の種類 |
仕訳で足すもの |
受け取ったときに確かめること |
| 法人から |
足すものは無い |
登録番号があるか |
| 個人の原稿料・士業から |
源泉の預り金 |
仕事の中身と金額 |
| 登録番号が無い相手から |
7割だけの仮払消費税 |
作業が終わった時期 |
当社は請求書を受け取ったら、金額より先に「相手が法人か個人か」と「登録番号の有無」を見ます。この2つで仕訳の形が決まるからです。
2023年4月から2026年9月までに、当社は請求書の受け取り・支払処理の代行を25社で担当しました。請求書の発行代行は18社です。1社あたり月20〜150枚、全体で月約1,800枚を扱っています。枚数が多い会社ほど、最初に種類を分ける手順が効きます。
2026年10月に当社が2つのAI(ChatGPT・Claude)へ、同じ質問「外注費 請求書 仕訳について教えてください」をしました。返ってきた2件の答えを比べたところ、本記事で扱う4つの論点のうち『勘定科目』『登録番号』の語が出てきた答えは0件でした(出典: 当社調べ)。
同じ調べでは、期間に触れた答えも進め方の手順に触れた答えも無く、費用の金額(◯円)に触れた答えは2件中2件でした。
源泉徴収が要る請求書は、預り金を立てて仕訳する
個人に払う原稿料・講演料や、税理士・弁護士など士業の報酬は、支払う側が源泉徴収をして翌月10日までに納めます。
源泉徴収が要る報酬の種類は、国税庁のタックスアンサー No.2792に一覧があります。法人に払う外注費は、馬主である法人への競馬の賞金を除き、源泉徴収の対象外です。
税率は、1回の支払いが100万円以下なら10.21%です。100万円を超える部分は20.42%になります(国税庁 No.2795)。
個人のライターから、原稿料30,000円・消費税3,000円の請求書を受けた例です。本体と消費税が請求書で分かれていれば、本体の30,000円だけに10.21%を掛けられます。源泉の額は3,063円です。
| 場面 |
借方 |
貸方 |
| 作業が終わった月 |
外注費 30,000円/仮払消費税 3,000円 |
未払金 33,000円 |
| 支払った日 |
未払金 33,000円 |
普通預金 29,937円/預り金 3,063円 |
| 翌月10日まで |
預り金 3,063円 |
普通預金 3,063円 |
源泉を納める期限は、支払った月の翌月10日です(国税庁 No.2505)。士業の報酬の源泉は、条件を満たして届け出た会社なら、給与の源泉と同じく納期の特例の対象です。
払う側が従業員のいない個人事業主なら、源泉徴収は要りません。違いは個人事業主の外注費の請求書で見落とす3点で扱っています。
源泉を自分で決めてよいのは、一覧の種類にそのまま当たる請求書です。一覧に当たるか迷う仕事なら、払う前に税理士に聞いてください。聞くときは、契約書、請求書の明細、仕事の中身を書いたメモを用意すると、その場で答えをもらえます。たとえばホームページ制作のうちデザインの部分のように、仕事の中身で判断が分かれる請求書です。
登録番号の無い請求書は、2026年10月から7割で仕訳する
インボイスの登録番号が無い請求書は、2026年10月から2028年9月までの仕入れなら、消費税相当額の7割を仮払消費税にします。
国税庁の令和8年度税制改正特集によると、改正前は「2026年10月から3年間5割」の予定でした。改正後は、2026年10月から2年間が7割、2028年10月から2年間が5割、2030年10月から1年間が3割です。
登録番号の無い個人から、税込55,000円の請求を受けた例です。消費税相当額5,000円の7割、3,500円を仮払消費税にします。
| 場面 |
借方 |
貸方 |
| 作業が終わった月(2026年10月以降) |
外注費 51,500円/仮払消費税 3,500円 |
未払金 55,000円 |
割合は、請求書の日付ではなく作業がすべて終わった日で選びます。2026年9月に終わった作業の請求書が10月に届いたなら、8割のままです。
1つの相手からの仕入れで経過措置を使える上限も、10億円から1億円に下がりました。2026年10月1日以後に始まる課税期間からです。
免税の外注先との取引条件をどう見直すかは、インボイス制度の外注費で免税の外注先に取る対応で扱っています。
当社は2023年4月から2026年9月までに、インボイス制度に22社で対応しました。起きた問題は、登録番号の記載が無い請求書の受け取り(約30件)、免税事業者の外注先への対応の相談(8社)です。経過措置の税率の計算ミス(約12件)もありました。
件数で数えた問題では、登録番号の無い請求書(約30件)が、税率の計算ミス(約12件)の2倍以上起きていました。
個人で登録番号も無く、原稿料のように源泉も要る請求書は、条件が重なります。この場合は源泉を先に決めます。
源泉は、請求書で分かれた本体の金額に掛けて預り金にします。そのうえで、消費税相当額の7割を仮払消費税にし、残りを外注費に含めます。支払いの仕訳では、未払金を消し、預り金と普通預金に分けます。
登録番号の有無は、国税庁の公表サイトで確かめられます。インボイスの要件そのものは、適格請求書の要件で整理しています。
外注費の請求書の仕訳で起きる誤り4つ
外注費の仕訳で起きる誤りは、給与に近い支払いを外注費にする、源泉を預からない、7割控除を忘れる、割合を請求書の日付で選ぶ、の4つです。
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2023年4月から2026年9月までに経理代行で担当した7社で、実際に直した仕訳の誤りは年間約90件でした。多い順に外注費と給与の区分(約40件)、資産に計上すべき備品の消耗品処理(約25件)です。続いて前払費用の計上漏れ(約15件)、源泉徴収の漏れ(約10件)です。
約90件のうち、外注費の請求書に関わる誤りは、外注費と給与の区分と源泉徴収の漏れで約50件ありました。
誤りの件数は、担当した7社の記録をまとめた概数です。請求書1枚ずつを数え直したものではありません。
業種では、建設業の会社3社の経理代行で、実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。外注費の請求書と同じく、勘定科目の選び方が帳簿の見え方を変える例です。
誤り1: 外注費か給与かの区分を、働き方で見ていなかった
外注費か給与かは、契約書の名前ではなく、時間・指示・道具の負担といった働き方の実態で決まります。
当社の判断では、次の3つを見ます。作業の時間や場所を会社が決めている。道具や机を会社が用意している。請求が時給×時間か、毎月同じ額です。
3つのうち2つ以上が当てはまるなら、給与の疑いが強いので、払う前に税理士に聞きます。1つ以下で、契約書にも成果物が書かれているなら、外注費として自社で決めてかまいません。
- 起きることは、税務調査で給与とされ、源泉徴収の漏れと消費税の控除の否認が同時に出ることです。
- 原因は、毎月の請求書の形が整っていたので、働き方を見なかったことです。
- 避け方は、時給×時間の請求や、毎月同じ額の請求に気づいたら、その人の働き方を書き出して税理士に見せることです。
当社は、時給×時間で書かれた請求書と、会社のメールアドレスを使う外注先の請求書を見たら、記帳を止めて確かめます。働き方の判断の観点は、建設業の外注費の仕訳で表にしています。
誤り2: 源泉の漏れ。個人の士業の報酬を全額振り込んだ
個人の税理士や弁護士への報酬は、源泉の額を差し引いて振り込み、差し引いた分を預り金にします。
- 起きることは、翌月10日の納付が漏れ、あとから不納付加算税の対象になることです。
- 原因は、法人の外注先と同じ手順で、請求額をそのまま振り込んだことです。
- 避け方は、外注先の一覧に「源泉あり」の欄を作り、支払いの前に必ず見ることです。
誤り3: 消費税の控除のしすぎ。登録番号の無い請求書を全額控除した
登録番号の無い請求書は、2026年10月以降の作業なら7割だけを仮払消費税にします。
- 起きることは、控除のしすぎで、申告の前に仕訳をまとめて直す手間が出ることです。
- 原因は、会計ソフトの税区分を、登録番号のある請求書と同じものにしたことです。
- 避け方は、外注先を登録したときに、登録番号の有無で税区分を分けておくことです。
誤り4: 経過措置の割合の選び間違い。請求書の日付で選んだ
経過措置の8割と7割は、作業がすべて終わった日で選ぶので、請求書の日付で選んではいけません。
- 起きることは、9月に終わった作業を7割で処理し、控除が少なすぎる計算になることです。
- 原因は、10月に届いた請求書をすべて新しい割合で入れたことです。
- 避け方は、10月に届いた請求書だけ、作業の終わった日を請求書の明細で確かめることです。
外注費の請求書の処理を、自社で続けるか外に任せるか?
外注先が法人だけで毎月数社なら自社で続け、源泉や登録番号の確認が毎月出て締めが遅れるなら外に任せます。
| 会社の状態 |
合うやり方 |
| 外注先が法人だけで、毎月同じ顔ぶれ |
自社で入力を続ける |
| 個人の外注先が多く、源泉の確認が毎月ある |
請求書の受け取りから入力までを任せる |
| 登録番号の無い外注先が混ざり、税区分が追いつかない |
入力を任せ、判断の分かれる請求書は税理士と確かめる |
外注先が法人だけで、毎月同じ顔ぶれなら、外に任せる必要はありません。会計ソフトに外注先ごとの仕訳を登録しておけば、入力は短く済みます。
2023年4月から2026年9月までに銀行・カードの連携とExcelの手入力からの切り替えを行った15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました。手入力が残っている会社は、任せる前に連携を試してください。
仮に月60枚の請求書を受け、1枚の確認と入力に10分かけているなら、月10時間です。そのうち源泉と登録番号の確認が何時間かを書き出すと、任せる範囲が決まります。確認の時間が多ければ確認ごと任せ、入力の時間が多ければ連携から見直します。
任せるかどうかの目安は、次の3つのうち2つ以上が当てはまるかどうかです。源泉の要る個人の外注先が毎月いる。登録番号の無い相手が混ざる。締めが毎月遅れる。
3つのうち2つ以上に当てはまり、優先を決めるなら、源泉の確認を先に任せます。源泉の漏れは納付の期限が決まっていて、あとから直しにくいからです。
業者を探すときの情報源も確かめておきます。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。
経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした(出典: 業種調査)。比較サイトだけで決めず、公式サイトで任せる範囲を確かめてください。
費用は、任せる範囲ごとに見積りを取り、自社で入力にかけている時間の人件費と並べて比べてください。
業者に聞く質問は、次の3つです。
- 源泉が要るかどうかの判定と、外注費か給与かの判定は、どちらが担当しますか。
- 登録番号の無い請求書の税区分は、誰が確かめますか。
- 入力だけの場合と、確認まで含む場合で、見積りを分けてもらえますか。
外に任せても、請求書を集める作業と、支払いの承認は社内に残ります。2023年4月から2026年9月までに経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件です。理由は現金取引が中心で証憑がそろわない(3件)、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)、税務の判断まで求められた(2件)でした。
請求書が手元に集まらない会社は、任せる前に集める仕組みを作ってください。外注費か給与かのような税務の判断は、記帳の委託先ではなく税理士の業務です。手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、業務を分担する提携を結んだことがあります。記帳は当社、税務の判断は税理士という分け方が、実務では回りやすいからです。
2023年4月から2026年9月までに経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(最も早い会社は翌月5日)。なお、この9社とは別に、同じ期間に経理代行・記帳代行を担当した会社は48社で、そのうち31社は継続中です。
任せられる範囲の線引きは記帳代行は資格なしの会社でも頼める?で、支払いの手順は請求書の支払いのやり方で解説しています。
よくある質問
外注費の請求書を受け取ったら、どう仕訳しますか?
作業が終わった月に外注費と未払金で計上し、支払った日に未払金を消します。源泉の要る報酬は預り金を立てます。
個人に払う外注費は、すべて源泉徴収が要りますか?
要りません。原稿料・講演料や、税理士・弁護士など士業の報酬といった、国税庁が示す種類に限られます。
登録番号の無い請求書は、どう仕訳しますか?
2026年10月から2028年9月の仕入れは、消費税相当額の7割を仮払消費税にし、残りを外注費に含めます。
外注費の仕訳は、どこまで自社で決めてよいですか?
法人からの請求書の入力と源泉の計算は自社で決められます。外注費か給与かの判定は税理士と決めてください。
請求書の処理を外に任せると、何をしてもらえますか?
請求書の受け取り、仕訳の入力、源泉の計算、支払いの準備を任せられます。支払いの承認は社内に残ります。
外に任せないほうがよいのはどんな場合ですか?
外注先が毎月数社の法人だけで、源泉の要る相手もいない場合です。請求書の種類を分け、外注先ごとの仕訳を登録すれば、自社で回せます。
まとめ: 外注費の請求書は、種類を分けてから仕訳する
外注費の請求書は、法人から・源泉の要る個人から・登録番号が無い相手からの3つに分けてから仕訳します。源泉は預り金にして翌月10日までに納め、登録番号の無い請求書は2026年10月以降の作業なら7割で控除します。
まず、今月届いた外注費の請求書を3つの種類に分けてください。そのうえで、外注先の一覧に「源泉あり」「登録番号なし」の欄を足すと、来月からの仕訳が止まりません。
請求書を出す側の書き方は、外注の請求書の書き方で、インボイスへの対応全体はインボイス制度の経理実務で解説しています。
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