建設業の記帳代行は、記帳・工事ごとの原価の集計・試算表の作成を任せ、工事番号と請求書の回収は社内に残す分担で回ります。現場と経理をつなぐ作業までは外に出せません。
一方で、建設業の記帳代行は、現金払いの証憑が無い・決算直前の丸投げ・税務の判断まで求める、の3つの状況では記帳代行が合いません。頼む前に社内で決める4つをそろえれば、建設業でも記帳は外に出せます。
この記事は、記帳の手が回らず、建設業の記帳代行を頼むか迷っている建設会社・工務店の経営者と経理担当者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。国税庁の交際費等とインボイスの経過措置の案内は、2026年10月22日に確認しました。
この記事でわかること- 建設業の記帳代行に任せる作業と、社内に残す作業
- 建設業の記帳代行が合わない3つの状況と避け方
- 記帳代行に渡す前に社内で決める4つ
- 自社・記帳代行・経理BPOの選び分け
建設業の記帳代行では何を任せ、何を社内に残すか?
建設業の記帳代行に任せられるのは、記帳・工事別の原価の集計・月次の試算表で、工事番号の付与と書類集めは社内に残ります。
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建設業の記帳代行とは、建設会社から請求書・領収書・通帳の写しを受け取り、建設業の勘定科目で仕訳を入力して、工事ごとの原価と試算表を作る外部の作業です。
ここで押さえたいのは分担です。分け方は次の表のとおりです。
| 作業 |
誰が受け持つか |
理由 |
| 仕訳の入力・工事別の原価の集計 |
記帳代行 |
書類がそろえば外で処理できる |
| 月次の試算表の作成 |
記帳代行 |
入力の結果から作れる |
| 工事番号の付与 |
社内 |
受注の情報は社内にしか無い |
| 下請業者の請求書の回収 |
社内 |
取引先との約束は社内で決める |
| 法人税・消費税の申告書 |
税理士 |
税理士の独占業務 |
| 決算変更届の作成 |
行政書士 |
建設業許可の届出の業務 |
当社は2026年10月までに、建設業の会社3社の経理代行を担当しました。3社とも、工事番号を振る作業は社内に残しています。受注の中身を知るのは社内の人だけだからです。
当社調べでは2026年10月に、3つのAI(ChatGPT・Claude・Gemini)へ「建設業 記帳代行について教えてください」と質問しました。3件の答えのすべてに『仕訳』『建設会社』『見積』の語が出てきました。
同じ調べでは、期間(◯か月・◯日など)に触れた答えは無く、進め方の手順に触れた答えも無く、費用の金額(◯円)に触れた答えは3件中3件でした。期間と手順は、この記事の表と順番で確かめてください。
建設業の記帳代行が合わない3つの状況と失敗の避け方
建設業の記帳代行は、現金払いの証憑が無い・決算直前の丸投げ・税務の判断まで求める、の3つの状況で合いません。
当社が2023年4月から2026年9月までに、経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件でした。理由の内訳は、現金取引が中心で証憑がそろわない3件、決算直前の丸投げで期限に間に合わない2件、税務の判断まで求められた2件です。
状況1: 職人や現場への現金払いに証憑が無い
現金払いの証憑が無いと、支払いが帳簿に載せられず、工事の原価が実際より少なく出ます。日当の手渡しや、現場での資材の立替えが原因になりやすい部分です。
原因は、支払いのたびに領収書か出金伝票を残す決まりが無いことです。避け方は、現金で払った日に、誰に・いくら・どの工事かを1枚に書くことです。
状況2: 決算の直前に1年分をまとめて渡す
決算の直前に1年分を渡すと、申告の期限までに記帳が終わりません。建設業許可を持つ会社は、事業年度の終了後4か月以内に決算変更届も出します(建設業法第11条第2項)。
原因は、書類を月ごとに渡す流れが無いことです。避け方は、決算の3か月以上前に相談し、それ以降は月1回の受け渡しに切り替えることです。
状況3: 一人親方の扱いなど税務の判断まで任せたい
税務の判断まで任せたい依頼は、記帳代行の受け持ちを超えます。税務相談は税理士の独占業務なので、記帳代行は答えられません。
避け方は、判断が要る支払いだけを抜き出し、顧問の税理士に聞く流れを作ることです。記帳代行は誤りを見つけて指摘し、決めるのは税理士という分担になります。
建設業の記帳代行に渡す前に、社内で決める4つ
建設業の記帳代行に書類を渡す前に、工事番号・請求書の締め日・現金払いの記録・飲食の記録の4つを社内で決めます。
4つが決まっていないと、記帳代行から問い合わせが何度も戻ります。そのたびに現場の人の手が止まります。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました(2026年8月時点)。ソフトを先に入れても、番号と締め日の決まりが無いと入力は楽になりません。当社が決まりを先に作る順番を勧めるのは、そのためです。
- 工事番号の付け方:受注した日に番号を振り、全ての請求書と領収書に書きます
- 下請業者の請求書の締め日:月末締め・翌月5日までの提出など、取り決めに入れます
- 現金払いの記録:手渡しの日当や立替えは、出金伝票に工事番号と相手の名前を書きます
- 飲食の記録:施主や協力会社との飲食は、参加者の名前と人数を領収書に書き添えます
飲食の記録を4つの決まりに入れたのは、建設業の経理代行で直した誤りが接待交際費に集まったためです。
建設業の記帳代行で直した仕訳の誤りは何が多いか?
建設業の会社3社の経理代行で、当社が実際に直した仕訳の誤りは、接待交際費の扱いでした。ただし3社では件数を集計しておらず、7社全体で最も多い誤りは外注費と給与の区分です。施主や協力会社との飲食が多い業種だからだと、私たちは見ています。
交際費は、扱いを誤ると法人税の額が変わります。国税庁の交際費等の範囲と損金不算入額の計算の要点は次のとおりです。
| 決まり |
中身 |
| 中小法人の定額控除 |
期末の資本金1億円以下などの法人は、年800万円までの交際費を損金にできる |
| 接待飲食費の50% |
接待飲食費の50%を損金にする方法も選べる |
| 1人1万円以下の飲食 |
2024年4月以降の支出は、1人あたり1万円以下なら交際費等から除かれる |
1人1万円以下かを確かめるには、参加した人数が要ります。領収書に人数が無いと、記帳代行は1人あたりの額を計算できません。飲食の記録を社内の決まりに入れるのは、人数を残すためです。
建設業に限らない数字もあります。2023年4月から2026年9月までに経理代行で担当した7社で、直した仕訳の誤りは年間約90件でした。内訳は次の表のとおりです。
| 誤りの種類(7社・年間) |
件数 |
| 外注費と給与の区分 |
約40件 |
| 備品の消耗品処理 |
約25件 |
| 前払費用の計上漏れ |
約15件 |
| 源泉徴収の漏れ |
約10件 |
備品の消耗品処理は、資産に計上すべき備品を消耗品で処理した誤りです。7社の誤りで最も多い外注費と給与の区分は、一人親方に払う建設業で特に気をつけたい点です。区分の考え方は建設業の外注費の仕訳で扱っています。
免税の外注先も確かめてください。当社が2023年4月から2026年9月までにインボイス制度の対応を支援した22社では、免税事業者の外注先への対応の相談が8社からありました。登録番号の記載が無い請求書の受け取りも、約30件ありました。
国税庁の経過措置の案内では、免税事業者からの仕入れの控除は2026年10月1日から80%が70%になりました。免税の一人親方がいるなら、その外注先を記帳代行に一覧で伝えてください。
建設会社が記帳を外に出すか決める3つの分かれ道
建設業の経理は、工事が少なければ自社、入力が負担なら記帳代行、請求や支払いまで回らないなら経理BPOを選びます。
| 観点 |
自社で記帳 |
記帳代行 |
経理BPO |
| 任せる範囲 |
なし |
記帳と試算表 |
記帳から請求・支払いまで |
| 社内に残る作業 |
全部 |
工事番号と書類集め |
工事番号の付与 |
| 向く会社 |
工事が少ない |
入力が負担 |
経理が回っていない |
分かれ道は3つです。
- 社長が全工事の原価を言えるなら、自社で記帳を続けてください。外に出しても手間はあまり減りません
- 入力に月20時間前後かかっているなら、記帳代行を検討してください。当社が銀行・カードの連携と手入力からの切り替えを行った15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました(2023年4月〜2026年9月)
- 請求書の発行や支払いの管理まで止まっているなら、経理BPOを選んでください。記帳だけを外に出しても、月次の締めは早まりません
自社・記帳代行・経理BPOの条件に2つ以上当てはまる会社は、範囲の広い方を先に選んでください。入力が負担で、請求や支払いも止まっているなら、経理BPOを先にします。記帳だけを先に出すと、請求の遅れが原因の締めの遅れが残るためです。
仮に、経理担当が入力に月20時間かけている会社なら、15社の平均と同じ減り方で月14時間が浮く計算です。まず今月の入力時間を数え、20時間に近いかを確かめてください。
20時間を目安にしたのは、当社の判断では15社の入力が月平均20時間だったからです。人件費と外注費の比較は、仮に担当者の時給が分かるなら、浮く14時間分と見積もりを並べて見られます。
経理BPOの効果の目安として、当社が2023年4月から2026年9月までに経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました。最も早い会社は翌月5日です。9社は建設業に限った集計ではありません。
建設業(従業員約40名)のお客様の声(2026-09)です。「経理担当が1人で、退職されたら会社が止まるという不安を抱えていました。今は月次の締めが5営業日から2営業日に短縮され、属人化も解消。経営判断に使える数字が翌月10日には出てくるようになったのが、一番大きな変化です。」
当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした。詳しくは業種調査にあります。依頼先を探すときは、公式サイトの料金と範囲の説明も読み比べてください。
記帳代行を見送ったほうがよいのは、現金払いの記録をまだ社内で残せていない会社です。先に出金伝票の決まりを作ってから頼むほうが、問い合わせの往復が少なく済みます。再検討の目安は、例えば出金伝票を数か月続けて、証憑の無い支払いが無くなった時点です。費用の目安は記帳代行の費用相場にまとめています。
建設業の記帳代行を頼む前に、今日やること
建設業の記帳代行を頼む前に、今日は進行中の工事に番号を振り、今月の現金払いを書き出してください。
工事番号と現金払いの一覧ができていれば、記帳代行に渡す書類がそろいます。できていない場合は、頼む前の準備がまだ残っています。
- 進行中の工事を書き出し、1件ずつ工事番号を振る(形式は例えば「26-001」のように、年と連番)
- 今月の現金払いを書き出し、証憑の無い支払いの数を数える
- 飲食の領収書に、参加者の名前と人数が書いてあるかを見る
- 免税の一人親方がいるなら、その名前を一覧にして記帳代行に渡せる形にする
証憑の無い支払いが月に何件もあるなら、まず出金伝票の決まりを作ってください。証憑がそろっているなら、記帳代行か経理BPOに見積もりを取る段階です。依頼先の選び方は経理BPOの選び方で確かめられます。
建設業の記帳代行に見積もりを頼むとき、聞く4つの質問
建設業の記帳代行に見積もりを頼むときは、科目・工事別の原価・現金払いの扱い・税理士との受け渡しの4つを聞きます。料金の額より先に、建設業の帳簿を作れるかを確かめるためです。
聞く質問は、そのまま使える形で並べると次のとおりです。
- 「完成工事高や未成工事支出金など、建設業の勘定科目で入力できますか」
- 「工事番号ごとの原価を、毎月の試算表と一緒に出せますか」
- 「現金払いや飲食の領収書は、どの書き方で渡せばよいですか」
- 「申告を受け持つ顧問の税理士へ、帳簿をどの形で渡しますか」
建設業の科目と工事別の原価の質問に「できる」と答えられない依頼先は、建設業の記帳には向きません。決算変更届や経営事項審査では、建設業の科目で作った財務諸表が要るからです。
領収書の書き方の答えは、社内で決める4つの決まりに合わせて使えます。依頼先が書き方を示せない場合は、領収書の書き方を自社で決めてから渡してください。
税理士への受け渡しの質問は、申告の分担を確かめるためのものです。顧問の税理士がいない会社は、申告を誰に頼むかを先に決めてください。記帳代行だけでは申告書は作れません。
よくある質問
建設業の記帳代行では何を任せられますか?
記帳、工事ごとの原価の集計、月次の試算表の作成です。申告書は税理士、決算変更届は行政書士の業務です。
職人への現金払いが多くても、建設業の記帳代行は頼めますか?
頼めます。ただ当社で合わなかった経理代行7件のうち3件は、現金払いの証憑がそろわないことが理由でした。
一人親方への支払いが外注費か給与かも、記帳代行が決めてくれますか?
記帳代行は区分の誤りを見つけて指摘できます。判断に迷う支払いだけを選び、顧問の税理士に聞いてください。
建設業の記帳代行を頼むと、どのくらいで締めが早まりますか?
当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で約12日早まりました。建設業に限らない集計です。
建設業の記帳代行を頼まないほうがよいのはどんな会社ですか?
工事が少なく、社長が全工事の原価を言える会社です。自社で記帳したほうが、手間も費用も少なく済みます。
決算の直前に1年分の記帳をまとめて頼めますか?
期限に間に合わないおそれがあります。当社で合わなかった経理代行7件のうち2件は、決算直前の丸投げが理由でした。
まとめ: 建設業の記帳代行は、渡す前の4つで決まる
建設業の記帳代行は、工事番号・請求書の締め日・現金払いの記録・飲食の記録の4つを社内で決めてから頼みます。4つがそろえば、記帳・工事別の原価・試算表を外に出せます。
現金払いの証憑が無い、決算の直前、税務の判断まで求める、の3つの状況では合いません。記帳の先の請求や支払いまで止まっているなら、経理BPOで任せる範囲を一緒に整理できます。
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