記帳代行のやり方は、資料の準備、委託先への引き渡し、仕訳・入力、内容の確認、試算表の受け取りという5つのステップで進みます。依頼から試算表の受領まで、通常は2週間前後が目安です。何を渡し、どこまでを委託先が処理するのかを把握しないまま依頼すると、資料の渡し方が原因で確認のやり取りが増え、完成が遅れることがあります。本記事では5つのステップと準備するもの、自分で記帳する場合との使い分けを解説します。
この記事は、記帳代行の利用を検討していて、依頼してから完了するまでの具体的な流れを把握したい中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
- 記帳代行を依頼する5つのステップ
- 依頼前に準備するものと渡し方3パターン
- 試算表を受け取るまでの期間の目安
- 自分で記帳する場合との使い分け
記帳代行のやり方|依頼から仕訳完了までの流れ全体像
記帳代行のやり方は、大きく「準備」「引き渡し」「処理」「確認・受領」の4段階、5つのステップに分かれます。
記帳代行と経理BPOの範囲の違いは、記帳代行のアウトソーシング活用|任せる範囲と選び方4つで解説しています。
費用の目安を先に知りたい場合は、記帳代行の費用相場|依頼先別の料金と抑える4つのコツにまとめています。
記帳代行のやり方とは、レシートや通帳などの証憑を委託先に渡し、仕訳・入力を任せたうえで、試算表として受け取るまでの一連の進め方のことです。準備の段階で渡す資料を整理しておくほど、委託先での確認作業が減り、試算表の完成も早まります。
記帳代行を依頼する5ステップ
5つのステップのうち、ステップ1〜2は依頼者側の準備、ステップ3〜4は委託先側の処理、ステップ5は受領にあたります。準備の質が、後工程の速さを決めます。
初めて記帳代行を依頼する場合、最初の1〜2か月は資料の渡し方や確認のやり取りに慣れておらず、想定より時間がかかることがあります。委託先とのやり取りにも一定の慣らし運転期間があると考えておくと、初回から完璧を求めすぎずに済みます。2〜3か月続けると、渡す資料の形式や確認のペースが双方でつかめてきて、以降は安定した運用になっていきます。
ステップ1〜2: 依頼前に準備するものと委託先への渡し方
最初の2ステップは、依頼前に必要な資料をそろえて整理し、委託先へ渡すことです。
依頼前に準備する4点
準備するものは、レシート・領収書、通帳の写しかデータ、請求書・納品書、現金出納帳(現金取引がある場合)の4点です。証憑が1点でも欠けると、仕訳の科目判断がつかず確認の連絡が増えます。地味な作業に見えて、後工程の速さを左右する重要な下準備。
渡し方は、郵送、スキャンデータのメール送付、クラウド共有サービス経由の3パターンが一般的です。紙のまま郵送する会社もまだ多い一方、証憑をスキャンして共有すれば、原本を手元に残しながら依頼できます。
MM総研の調査(2026年3月末時点)では、個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は38.4%でした。クラウド共有に切り替えていない会社ほど、渡し方の整理そのものに時間がかかる傾向があります。
資料の渡し方でよくある失敗と改善
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。資料をひとまとめに渡すだけで、日付順の整理や取引種類ごとの仕分けをしていない会社は少なくありません。
中小企業庁が公表した「中小企業における会計の実態調査」によると、経理・財務の担当者が「1人」と回答した企業は58.2%にのぼります。1人で記帳から資料の取りまとめまで抱えている会社ほど、渡し方を最初に決めておく効果が大きくなります。
注意: 資料の渡し方を整えないと起きること
入出金の種類ごとに仕分けず、通帳データの形式も伝えないまま渡すと、委託先からの確認連絡が増えます。不明点をメモで添えないまま渡すのも、試算表の完成を遅らせる主な原因です。
ステップ3〜4: 委託先が行う仕訳処理と内容の確認
ステップ3と4は、委託先が受け取った資料をもとに仕訳・入力を行い、依頼者が内容を確認することです。
委託先は、証憑を1件ずつ勘定科目に振り分け、会計ソフトへ入力します。科目の判断が分かれる取引は、この段階で依頼者へ問い合わせが入ります。問い合わせへの回答が遅れると、そのまま完成の遅れに直結します。
入力後は、委託先から仕訳データや試算表のドラフトが送られてくるため、依頼者が金額や科目に見覚えのない箇所がないかを確認します。確認の連絡は、電話よりもメールかチャットで記録を残す形が実務上多い進め方です。
Sansan株式会社が2024年3月28日に公表した「経理の人手不足に関する実態調査」(経理担当者1,000名対象)があります。この調査では、経理の人手不足を感じている割合は50.1%、そのうち85.2%が「深刻」と回答しています。
人手不足の要因は「インボイス制度・電帳法対応に伴う業務増加」が最も多く挙がっています。確認作業に時間を割けない会社ほど、委託先への引き渡し時点で不明点を減らしておく必要があります。
問い合わせの内容も、慣れないうちは科目判断そのものより「この領収書は何のための支出か」という背景説明に時間がかかりがちです。取引の背景をメモに残す習慣があると、問い合わせ自体が減っていきます。特に交際費と会議費の区別、個人的な立て替えと会社経費の区別は、初回の依頼でつまずきやすい点です。
自動化ツールとの併用を検討している場合は、記帳代行の自動化とは?判断基準3つ【2026年】で仕訳処理の仕組みを詳しく解説しています。
ステップ5: 試算表の受け取りと依頼頻度の目安
最後のステップは、仕訳が確定した後、委託先から試算表を受け取り、内容を確認して完了します。
資料を渡してから試算表を受け取るまでは、通常2週間前後が目安です。証憑の量が多い月や、確認のやり取りが増えた月は、受け取りまでの期間が延びることがあります。
依頼の頻度は、月末締めで資料をまとめ、月1回のペースで依頼する運用が最も多く見られます。月次の資金繰りを早めに把握したい会社は、月2回に分けて依頼し、確認のタイミングを前倒しする方法もあります。
決算期や繁忙期は取引件数が普段より増えるため、同じ頻度で依頼していても試算表の受け取りまでの期間が延びることがあります。決算月だけは資料を早めに渡す、あるいは依頼頻度を一時的に増やすといった調整をしておくと、決算対応そのものが遅れずに済みます。
| 頻度 |
向いている会社 |
特徴 |
| 月1回 |
取引件数が少ない・資金繰りの確認を急がない |
資料をまとめて渡せる分、負担が小さい |
| 月2回 |
資金繰りを早めに把握したい |
確認のタイミングが早まる分、渡す手間が増える |
| 都度依頼 |
取引件数が非常に少ない |
依頼のたびに手続きが発生し割高になりやすい |
依頼を1か月飛ばすと、翌月にまとめて2か月分の証憑を渡すことになり、通常より確認の往復が増えて試算表の受け取りが遅れがちです。依頼のペースを一定に保つこと自体が、完成の速さを左右します。繁忙期で資料をまとめる時間が取れない月は、少なくとも「今月は遅れる」旨だけでも委託先に一報を入れておくと、処理の順番を調整してもらいやすくなります。
依頼先の比較軸をさらに詳しく知りたい場合は、経理外注の依頼先|記帳代行センターと税理士の違い5つで整理しています。
自分で記帳する場合との使い分け
自分で記帳するか記帳代行に依頼するかは、仕訳件数と確認に割ける時間で判断します。
仕訳件数が少なく、経理担当者が時間を割ける会社は、自分で記帳しても負担は大きくありません。銀行口座やATMなど、取引の種類ごとの仕訳のやり方は銀行口座の記帳のやり方|振込・引き落とし4パターンの仕訳で解説しています。
一方、仕訳件数が多い、あるいは経理担当者が1人しかいない会社は、記帳代行に依頼したほうが本業に時間を使えます。求人ボックスが2026年7月の掲載求人から算出した経理職の給料データでは、経理職の平均年収は約432万円でした。この人件費に見合う記帳量があるかどうかが、自分で行うか委託するかの分かれ目になります。
私たちが中小企業のバックオフィス支援を通じて感じるのは、「最初は自分でやってみたが、月末に確認する時間が取れなくなって依頼を検討し始めた」という声が多いということです。件数の増加は緩やかでも、確認の負担は急に重くなるもの。渡し方を決めてから依頼に切り替える会社が目立ちます。
自分で記帳を続ける場合でも、通帳やATMなど資料の種類ごとにやり方を覚えておくと、記帳代行へ切り替える際の引き継ぎがスムーズになります。ATMでの入出金の仕訳パターンはATM入出金の記帳のやり方|仕訳3パターンと手数料の勘定科目で解説しています。通帳だけで記帳を進める場合の手順は、通帳だけで記帳するやり方|摘要欄の読み方と仕訳3ステップにまとめています。
途中で自分で記帳する範囲と委託する範囲を分ける、いわゆる一部委託を選ぶ会社もあります。日常的な入出金は自分で記帳し、月次の試算表作成だけを委託する形であれば、費用を抑えながら確認の手間も減らせます。範囲を分ける場合は、どちらの担当か曖昧な取引(例えば経費精算の一部)を最初に決めておくと、後から食い違いが起きにくくなります。
記帳代行のやり方でよくある失敗と注意点
記帳代行のやり方でよくある失敗は、資料を整理せずに渡し、確認のやり取りが増えて完成が遅れることです。
つまずきやすい点は記帳代行とは?できる範囲と失敗しやすい3つの落とし穴でも扱っています。
1つ目は、レシートや領収書を日付順に並べず、種類ごとの仕分けもしないまま渡すケースです。回避策は、渡す前に入出金の種類ごとに分けておくことです。
2つ目は、通帳データの形式を委託先に伝えないまま渡すケースです。CSV形式で渡せるのか、紙の通帳のコピーしかないのかを事前に伝えておくと、確認の往復が減ります。
3つ目は、不明点をメモで残さず、口頭の説明だけに頼るケースです。担当者が変わるたびに同じ説明を繰り返す羽目になるため、取引ごとに簡単なメモを添えておくと引き継ぎがスムーズです。
4つ目は、依頼する範囲を曖昧にしたまま契約し、想定していた業務が対象外だったと後から気づくケースです。記帳代行は仕訳・入力までが範囲で、資金繰りの判断や税務相談は含まれないのが一般的です。範囲外の業務まで期待すると、依頼後に「思っていた内容と違う」という食い違いが起きます。事前に見積もり段階で対応範囲を書面で確認しておけば防げます。
5つ目は、証憑を渡すタイミングが毎回ばらつき、委託先側の処理スケジュールが安定しないケースです。依頼日を固定し、締め日から数日以内に渡す運用を決めておくと、委託先も処理の見通しを立てやすくなります。繁忙期にまとめて依頼が集中すると、通常より確認や試算表の受け取りに時間がかかることもあるため、早めの依頼を意識してください。
5つの失敗に共通するのは、「渡す前に整理する手間を省いた結果」だという点です。準備の段階で少し手間をかけるだけで、確認の往復は目に見えて減ります。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
記帳代行に依頼する際、何を準備すればよいですか?
レシート・領収書、通帳の写しやデータ、請求書、納品書の4点が基本です。
資料はどうやって委託先に渡せばよいですか?
郵送、スキャンデータのメール送付、クラウド共有のいずれかで渡すのが一般的です。
記帳代行を依頼する頻度はどれくらいが目安ですか?
月末締めで資料をまとめ、月1回のペースで依頼する運用が最も多い頻度です。
試算表はいつ受け取れますか?
資料を渡してから2週間前後で試算表として受け取れることが一般的です。
自分で記帳するのと記帳代行、どちらが向いていますか?
仕訳量が少なく時間がある場合は自分で、量が多い場合は記帳代行が向いています。
まとめ: 記帳代行のやり方は「渡し方」で完成の速さが変わる
記帳代行のやり方は、資料の準備、委託先への引き渡し、仕訳・入力、内容の確認、試算表の受領という5つのステップで進みます。資料を種類ごとに仕分け、渡す形式を事前に伝えておくほど、確認の往復が減り、試算表の完成も早まります。
自社に合った依頼の頻度や渡し方が見えない場合は、経理BPOの無料相談で、準備の進め方を一緒に整理することもできます。まずは手元にある証憑を種類ごとに仕分けるところから始めてください。
取引量は繁忙期と閑散期で変わるため、依頼から数か月経ったタイミングで、渡し方や頻度を見直すと、負担の少ない運用に近づきます。記帳代行のやり方は、契約内容よりも渡し方の整え方で完成の速さが決まるもの。