記帳代行のアウトソーシングとは、仕訳入力・証憑整理・帳簿作成といった記帳業務だけを、外部の専門会社に切り出して委託する仕組みです。経理業務全体を任せる経理BPOとは異なり、入力作業に範囲を絞って委託できるため、着手のハードルが低く、経理担当者が1人しかいない会社でも導入しやすい点が特徴です。
本記事では、記帳代行のアウトソーシングと経理BPOの違い、任せられる業務範囲、費用の目安、会社選びのポイント、導入の流れまで、記帳業務の外部委託を検討する中小企業向けに解説します。実際に申請支援の現場で見てきた、記帳のつまずきやすいポイントも交えて紹介します。
この記事は、記帳や仕訳入力の負担を減らしたいものの、経理業務すべてを外部委託するのは大げさだと感じている中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
- 記帳代行のアウトソーシングと経理BPOの違い
- アウトソーシングで任せられる記帳業務の範囲
- 導入のメリットと費用の目安
- 会社選びのポイントと導入までの流れ
記帳代行のアウトソーシングとは?結論
記帳代行のアウトソーシングとは、仕訳入力などの記帳業務だけを外部委託する仕組みです。
経理BPOの全体像を先に押さえるなら、経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説が参考になります。
記帳代行のアウトソーシングとは、仕訳入力・証憑整理・帳簿作成など、記帳に関わる実務だけを切り出して外部の専門会社に委託することです。経理BPOのように試算表の作成や請求書処理まで含めて任せる場合もありますが、まずは入力業務に範囲を絞って依頼できる点が経理BPOとの大きな違いです。
中小企業庁が公表した「中小企業における会計の実態調査」によると、経理・財務の担当者が「1人」と回答した企業は58.2%にのぼります。1人で記帳から決算対応までを抱える会社ほど、まず入力作業だけを切り出せるアウトソーシングの相性がよいといえます。
矢野経済研究所が2025年11月26日に公表した「BPO市場に関する調査結果」によると、国内のBPO市場規模は2024年度で5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)まで拡大しています。経理業務の一部を外部リソースに任せる動きは、記帳のような入力業務でも広がっている段階です。
私たちが中小企業のバックオフィス支援を通じて感じるのは、「経理を全部任せるのは不安だが、記帳の入力だけは楽になりたい」という声が多いということです。まずは記帳代行と経理BPOの違いを整理するところから始めます。
記帳代行と経理BPO・経理代行の違い
記帳代行は入力作業の切り出し、経理BPOは経理機能全体の委託という点が大きな違いです。
範囲の境界線をさらに詳しく知りたい場合は、経理の外注と丸投げの違い|任せられる範囲と残す業務4つもあわせてご確認ください。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。記帳の入力だけでつまずいている会社に、いきなり経理機能全体の委託を勧めても、範囲が広すぎて検討が進まないことがよくあります。
| 項目 |
記帳代行 |
経理BPO(経理代行) |
| 委託範囲 |
仕訳入力・証憑整理が中心 |
記帳〜試算表作成まで |
| 依頼のしやすさ |
範囲が狭く始めやすい |
範囲が広く検討に時間がかかる |
| 向いている企業 |
入力だけを切り出したい |
経理機能ごと任せたい |
| 社内に残る業務 |
判断・承認・試算表確認 |
最終承認のみ |
記帳代行は「入力」という作業単位の切り出しであるのに対し、経理BPOは「経理という機能」をプロセスごと委託する考え方です。どちらが合うかは、自社が「まず入力を楽にしたいのか」「経理機能そのものを任せたいのか」で判断してください。範囲を迷う場合は、狭い範囲から始めて後から広げるほうが失敗しにくくなります。
記帳代行から始めて、後から経理BPOへ範囲を広げる会社も少なくありません。試算表の作成や請求書処理まで自社で回すのが厳しくなってきたタイミングが、範囲拡大を検討する目安になります。最初から広い範囲を契約するより、入力業務で委託先との相性を見極めてから範囲を広げるほうが、契約後のミスマッチを防ぎやすくなります。
アウトソーシングで任せられる記帳業務の範囲
記帳代行のアウトソーシングでは、仕訳入力から証憑整理、帳簿作成までを任せられます。
任せられる範囲をさらに広げたい場合の判断材料は、経理の外注は個人(フリーランス)でも可能?メリット3つと注意点でも扱っています。
記帳代行アウトソーシングで任せられる業務
仕訳入力は、銀行明細やクレジットカード明細をもとに勘定科目へ振り分ける、最も基本的な範囲です。証憑の整理では、領収書や請求書を仕訳と紐づけて保管する作業までを任せられます。
総勘定元帳の作成、試算表のもとになる帳簿作成も委託範囲に含まれます。電子帳簿保存法に対応した保存管理まで対応できる委託先を選べば、社内でスキャナ保存の運用ルールを一から整える負担も減らせます。
すべてを一度に任せる必要はありません。まずは仕訳入力だけを委託し、慣れてから証憑整理や帳簿作成へ範囲を広げるという進め方も選べます。範囲を欲張りすぎると、引き継ぎ資料の準備が追いつかず、かえって導入が遅れることもあるため注意してください。
記帳代行をアウトソーシングする3つのメリット
記帳代行をアウトソーシングする主なメリットは、入力ミスの減少、繁忙期の負担平準化、コストの変動費化の3つです。
第一に、入力ミスを減らせます。記帳を専門に扱う会社は、勘定科目の判断や証憑の突合を日常的に行っているため、自社で片手間に処理するよりも精度が安定しやすくなります。地味に見えて、実は効果の大きい変化。
第二に、月末や決算期に集中しがちな入力業務の負担を平準化できます。Sansan株式会社が2024年3月28日に公表した「経理の人手不足に関する実態調査」(経理担当者1,000名対象)があります。
この調査では、経理の人手不足を感じている割合は50.1%、そのうち85.2%が「深刻」と回答しています。人手不足の要因としては「インボイス制度・電帳法対応に伴う業務増加」が最も多く挙がっています。法対応の負荷が記帳の現場を圧迫している実態がうかがえます。取引量の波を委託先の体制で吸収できる点は、記帳代行アウトソーシングの実利のひとつです。
第三に、コストを変動費化できます。正社員を1人雇用すると、繁忙期・閑散期に関わらず固定費が発生しますが、記帳代行なら取引件数に応じて費用を調整しやすくなります。固定費ではなく、使った分だけの変動費。この発想の転換が、記帳代行アウトソーシングの実利です。
記帳代行アウトソーシングの費用相場
記帳代行アウトソーシングの費用は、取引件数に応じて月1〜3万円台から始められるプランが目安です。
詳しい料金の内訳は、記帳代行の費用相場|依頼先別の料金と抑える4つのコツで解説しています。
| プラン |
委託範囲の目安 |
費用感 |
| 仕訳入力のみプラン |
銀行・カード明細の仕訳入力のみ |
比較的抑えやすい |
| 記帳フルプラン |
仕訳入力〜総勘定元帳・試算表作成 |
委託範囲に応じて中程度 |
| スポット対応 |
決算期のみ、繁忙期のみ等 |
依頼内容ごとの見積もり |
料金は仕訳数や取引件数によって変わるため、見積もりを取る際は自社の月間取引件数を正確に伝えることが、実態に合った金額を出してもらう近道です。自社の取引量だと費用感がどの程度になるか分からない場合は、経理BPOの無料相談で概算を確認することもできます。
記帳代行会社を選ぶときの4つのチェックポイント
記帳代行会社は、対応範囲の明確さ・セキュリティ体制・対応スピード・担当者の実務理解の4点で比較して選びます。
セキュリティ面の確認事項は、経理代行のセキュリティ|契約前に確認すべき5つのポイントで詳しく整理しています。
記帳代行会社選びのNGとOK
対応範囲が契約書上で曖昧なままだと、後になって「証憑の整理は対象外でした」という食い違いが起きやすくなります。委託範囲は口頭確認だけで済ませず、書面やメールで明文化しておくことが基本です。
セキュリティ体制も欠かせない確認項目です。記帳データには取引先情報や金額情報が含まれるため、データの管理方法やアクセス権限について、契約前に具体的に質問しておく必要があります。信頼して任せられるかどうかの分かれ道。
対応スピードと担当者の実務理解も比較しておきたい点です。月次の締めに間に合う納期で対応できるか、勘定科目の判断に業種特有の知識があるかを、契約前の打ち合わせで確認してください。
比較軸をさらに詳しく知りたい場合は、経理代行の選び方5選|比較軸と契約前チェックリストも参考になります。
記帳代行アウトソーシング導入の流れ(4ステップ)
記帳代行アウトソーシングの導入は、現状の棚卸しから本稼働まで、4つのステップで進めると失敗しにくくなります。
経理機能全体まで委託範囲を広げる場合の流れは、経理BPO導入の流れ|6ステップと期間の目安【2026年】で解説しています。
記帳代行アウトソーシング導入の4ステップ
第一に、現状の記帳業務を洗い出します。どの明細を、どの頻度で入力しているかを一覧化すると、委託の優先順位が見えてきます。
第二に、委託範囲と入力ルールを決めます。勘定科目の割り当て基準や証憑の保管方法を事前にすり合わせておくと、引き継ぎ後の手戻りを防げます。
第三に、会社を比較し、見積もりを取ります。複数社を比較し、対応範囲・セキュリティ体制・対応スピードをそろえた条件で見積もりを依頼してください。
第四に、試験運用してから本稼働します。いきなり全取引を切り替えるのではなく、1〜2か月分の実データで試験運用すると、入力精度や連絡のやり取りに問題がないかを本稼働前に確認できます。私たちが導入の相談を受ける中でも、試験運用を省略していきなり本稼働し、勘定科目の判断基準がずれたまま数か月分の入力が進んでしまうケースをたびたび見かけます。
よくある失敗と注意点
記帳代行アウトソーシングでよくある失敗は、範囲の曖昧さ・入力ルールの未共有・繁忙期対応の未確認の3つです。
注意: 範囲を曖昧にしたまま契約するのはNG
「記帳を任せる」とだけ伝えて契約すると、証憑整理や保存管理が対象外だったという食い違いが起きます。契約前に、対象になる業務を一つずつ確認してください。
勘定科目の判断基準を共有しないまま任せてしまうのも避けたい失敗です。委託先ごとに判断の癖があるため、自社で使っている勘定科目の一覧と、判断に迷いやすい取引の例を先に渡しておくと、入力のズレを防げます。
繁忙期の対応可否を確認しないまま契約するのも注意が必要です。決算期や年末に取引量が増える会社は、その時期に対応枠が確保できるかを契約前に確認しておくことが欠かせません。委託先の体制によっては、繁忙期だけ対応が後回しになることもあります。
デメリットも含めて判断したい場合は、経理アウトソーシングのデメリット6つ|失敗しない対策も解説を先に読んでおくと、契約後の想定外を減らせます。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
記帳代行のアウトソーシングとは何ですか?
仕訳入力や証憑整理など、記帳に関わる実務だけを外部の専門会社に委託する仕組みです。
記帳代行と経理BPOはどう違いますか?
記帳代行は入力作業が中心で、経理BPOは試算表の作成まで含む幅広い範囲を任せられます。
記帳代行のアウトソーシングにかかる費用はどのくらいですか?
依頼先や取引件数によって異なりますが、月1〜3万円台から始められるプランが目安です。
個人事業主でも記帳代行をアウトソーシングできますか?
可能です。取引件数が少ない場合は、比較的低価格なプランを選べます。
記帳代行会社を選ぶときの基準は何ですか?
対応範囲の明確さ、セキュリティ体制、対応スピード、担当者の実務理解の4点です。
記帳代行をアウトソーシングするデメリットはありますか?
社内にノウハウが残りにくく、例外対応にタイムラグが生じやすい点に注意が必要です。
まとめ: 記帳代行のアウトソーシングは「範囲」を決めてから
記帳代行のアウトソーシングは、仕訳入力などの記帳業務だけを外部委託できる仕組みですが、委託範囲・入力ルール・繁忙期対応を曖昧にしたまま契約すると、期待した効果につながりません。経理BPOとの違いを理解したうえで、自社がどこまでを任せたいのかを先に整理してください。
記帳の入力業務に負担を感じている場合は、経理BPOの無料相談で自社に合った委託範囲を相談することもできます。まずは自社の記帳業務のうち、どの入力に最も時間がかかっているかを洗い出すところから始めてください。