記帳代行は、税理士以外の会社や個人にも頼めます。税理士だけに認められているのは税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つで、仕訳の入力や帳簿の作成はこの3つに入らないためです。
ただし、税理士以外に頼むと、申告書を作る人と帳簿を作る人が分かれます。つまずくのは記帳の質ではなく、帳簿を申告へ渡すところです。この記事では、渡すときに決める4つのことと、当社が経理代行で実際に直した仕訳の誤りの内訳を示します。
この記事は、記帳を税理士以外の会社や個人に頼もうとしていて、申告まで滞りなくつなげたい中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年11月時点の情報です。国税庁のページは2026年11月2日に確かめました。
この記事でわかること- 税理士以外に頼める記帳と、頼めない申告の境目
- 依頼先4種で任せられる範囲の違い
- 申告へ渡すときに決める4つのこと
- 経理代行で直した仕訳の誤り約90件の内訳
- 税理士以外に頼んでよい会社・見送る会社の分かれ目
記帳代行は税理士以外に頼めるのか?
記帳代行は税理士以外にも頼めますが、申告書の作成と税務相談は税理士にしか頼めません。記帳と申告で、頼める相手が違います。
近い論点をAI OCRの請求書読み取りで防げない誤り4つで扱っています。
記帳代行とは、領収書・請求書・通帳の記録をもとに会計ソフトへ仕訳を入力し、帳簿や試算表を作る業務です。税理士の資格が無くても請け負えます。
国税庁の「税理士法違反行為」のQ&Aは、税理士業務を税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つと説明しています。税理士でない者は、これを業として行えません。
同じページは、報酬を受け取らなくても、繰り返し行えば「業として」に当たると説明しています。「無料のサービスだから」は、申告書を作ってよい理由になりません。
違反になる行為の具体例と罰則は、記帳代行は税理士法違反?3つの独占業務とNG事例で詳しく扱っています。この記事は、合法に頼んだ後の「申告へのつなぎ方」に絞ります。
税理士以外の依頼先で任せられる範囲
税理士以外の依頼先は、個人の記帳者・記帳代行会社・経理BPOの3種で、記帳より先の業務をどこまで持つかが違います。申告書の作成だけは、どの依頼先も持てません。
| 業務 |
個人の記帳者 |
記帳代行会社 |
経理BPO |
税理士 |
| 日々の記帳 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 請求・支払 |
× |
△(会社による) |
○ |
△(事務所による) |
| 月次の締め |
△ |
△(会社による) |
○ |
△(事務所による) |
| 申告書の作成 |
× |
× |
×(税理士が担う) |
○ |
個人の記帳者は、副業や在宅で入力を請け負う人です。記帳代行会社は入力と帳簿づくりが中心で、経理BPOは請求・支払・月次の締めまでを業務ごと持ちます。
表の「△」は、契約によって変わる業務です。見積もりの段階で、△の業務が入っているかを1行ずつ聞いてください。
依頼先ごとの細かい違いは、記帳代行をココナラで頼む落とし穴と行政書士の記帳代行の相場にまとめています。
当社の経理BPOは、記帳・請求・支払・月次の締めまでを受け持ちます。申告書の作成と税務の判断は、税理士が担う分担で引き受けています。私たちが記帳だけで止めないのは、記帳だけを外に出しても月次の締めが早まらないと考えているからです。
AIが依頼先を調べるときに何を出典にするかも、当社で数えました。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした(出典:業種調査)。
同じ調べでは、費用・選び方・税理士との違い・依頼できる範囲を調べる質問で、回答の85.0%が経理代行会社の公式サイトを1つ以上出典にしていました。
2026年11月に当社が1つのAI(Gemini)に本記事の論点5問を聞き、5件の答えを集めました。ほかの論点を聞いた答え4件のうち、『依頼先』に触れたものは3件でした。
同じ調べでは、5件の答えのうち、触れていたのは費用の金額(◯円)は1件、期間(◯か月・◯日など)は1件、進め方の手順は1件でした。
依頼先の範囲は、各社の公式サイトに書かれた内容が材料になります。AIの答えだけで決めず、見積もりで△の業務が入っているかを確かめてください。
申告の受け渡しで決める4つのこと
税理士以外に記帳を頼むなら、締め日・質問先・決算整理の担当・データの渡し方の4つを契約前に決めてください。4つが決まっていないと、決算月に帳簿の直しが集中します。
あわせてバックオフィスのコンサルが提案で終わる3つの原因もご覧ください。
- 締め日と渡す日(契約前に決める):記帳の依頼先が、毎月何日までに試算表を自社と税理士へ出すかを決めます
- 判断が要る仕訳の質問先(毎月):外注費か給与か、資産か経費かで迷う仕訳を、自社と記帳の依頼先のどちらが税理士に聞くかを決めます
- 決算整理の担当(決算の3か月前まで):減価償却や前払費用の振り替えを、記帳の依頼先と税理士のどちらが入れるかを決めます
- 帳簿データの渡し方(決算月まで):記帳の依頼先が税理士へ、会計ソフトの共有かファイルかを決めます。形式が合わないと、入れ直しが起きます
4つの中で抜けやすいのは2つ目の質問先です。記帳の依頼先が税理士でない場合、迷う仕訳を自分で決めると税務相談に近づきます。だから、迷った仕訳は印を付けて税理士へ回す、という決まりにしておきます。
試算:仮に月の仕訳が300件で、そのうち1割に判断が要るとすると、月30件が税理士への質問になります。この件数を見込んで、質問をまとめて送る日を月1回決めておくと、決算月に積み残しが出ません。
当社は、手がいっぱいの税理士事務所から業務を分担できないかという問い合わせを受け、業務を分担する提携を結んでいます。記帳と月次を当社、判断と申告を税理士事務所が持つ分け方です。当社の判断では、この分け方でも4つの取り決めは最初に書面にしておくべきです。口約束だと、決算月に担当の食い違いが出るためです。
経理担当が離職した大手コンサル会社から、経理BPOを導入したいという問い合わせを受け、契約を結んだこともあります。担当者が抜けた会社は、引き継ぐ前に締め日と質問先を決める必要があります。
税理士事務所の側から見た分担の決め方は、記帳代行を会計事務所が外に出すときの確認点で扱っています。
税理士以外の記帳で直した仕訳の誤り約90件の内訳
当社が経理代行で担当した7社で直した仕訳の誤りは、2023年4月〜2026年9月の集計で年間約90件でした。最も多いのは外注費と給与の区分(約40件)で、税務の判断が絡む仕訳です。
年間約90件は、7社の合計の件数です。7社の仕訳の総件数は集計していないため、誤りの率は出せません。件数は、どの種類の誤りが多いかの順番として読んでください。
内訳は次のとおりです(出典:セブンセンシズの支援実績。2023年4月〜2026年9月に経理代行で担当した7社の年間件数)。
| 誤りの種類 |
年間の件数 |
申告前に誰が判断するか |
| 外注費と給与の区分 |
約40件 |
税理士に確認する |
| 備品の消耗品処理 |
約25件 |
金額の基準で記帳の側が判定できる |
| 前払費用の計上漏れ |
約15件 |
決算整理の担当が入れる |
| 源泉徴収の漏れ |
約10件 |
支払いの時点で記帳の側が気づける |
最も多い外注費と給与の区分(約40件)は、契約の中身を見て決める仕訳です。例えば、毎月決まった作業を決まった時間で頼んでいる人への支払いは、外注費か給与かで迷います。記帳の依頼先が税理士でないなら、ここは自分で決めず、印を付けて税理士に回すのが安全です。
備品の扱いは、金額で判定できます。国税庁の「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」は、取得価額10万円未満などを少額の減価償却資産としています。10万円以上の備品を消耗品で処理していないかを、毎月の確認項目に入れてください。
源泉徴収は、支払先が個人か法人かで対象が変わります。国税庁の「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」は、原稿料や講演料、弁護士などの報酬を例に挙げています。個人への支払いで請求書に源泉徴収の欄が無いものは、支払う前に止めて確かめます。
建設業の会社3社の経理代行で、実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。業種によって、判断が要る仕訳の種類が違います。当社の判断では、接待交際費かどうか迷う支出は、金額と相手先を書いて税理士に回します。自社の業種で迷いやすい科目を、契約前に依頼先と税理士の両方に聞いておいてください。
税理士以外に記帳を頼んでよい会社・税理士に任せたい会社
証憑が毎月そろい、税務の判断を税理士に残せる会社なら、記帳は税理士以外に頼んでかまいません。反対に、判断まで丸ごと任せたい会社は、税理士に頼むほうが合います。
分かれ目を条件で整理すると、次の6項目です。顧問税理士がいない・節税の相談もしたい・申告だけが負担、のどれか2つ以上に当てはまるなら、申告の担当(税理士)を先に決めてください。
- 顧問税理士がいて、記帳と月次だけが社内で回らないなら、記帳は税理士以外の会社か経理BPOに頼んでください
- 請求書の発行や支払いまで止まっているなら、記帳代行会社ではなく経理BPOを選んでください
- 顧問税理士がおらず、節税の相談もしたいなら、記帳ごと税理士事務所に頼むほうが向いています
- 年1回の確定申告だけが負担の個人事業主なら、記帳と申告をまとめて受ける税理士の個人向けプランを先に見てください
- 毎月の記帳が負担の個人事業主で、迷う仕訳を税理士に回せるなら、個人の記帳者に頼んでも申告に支障はありません
- 法人で顧問税理士がいないなら、決算書と申告書を税理士が作るため、記帳の依頼先より先に税理士を決めてください
2つ以上に当てはまる会社は、記帳の依頼先を、税理士が受け取れるデータの形式に合わせて選ぶほうが、入れ直しが起きません。
当社は、2023年4月から2026年9月までに経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例が7件ありました。理由は、現金取引が中心で証憑がそろわない(3件)、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)、税務の判断まで求められた(2件)でした。
証憑がそろわない・決算直前・税務の判断まで任せたい、のどれかに当てはまる会社は、税理士以外への依頼をいったん見送ってください。証憑がそろわない会社は、先に領収書の集め方を決めます。決算の3か月を切っている会社は、今期は税理士に頼み、来期の頭から切り替えるほうが間に合います。
3か月を目安にするのは、当社の判断です。月次の締めを1〜2回回して誤りの傾向をつかんでからでないと、決算整理の担当を決められないためです。根拠は、決算直前の丸投げで期限に間に合わなかった2件のお断りです。
税理士以外に頼んで起きやすい失敗と避け方
税理士以外に記帳を頼んだときの失敗は、帳簿の誤りより「申告前に誰も見ていない仕訳」が残ることで起きます。起きたこと・原因・避け方を2つ挙げます。
税理士以外に記帳を頼む失敗の1つ目は、決算月に外注費と給与の区分を税理士に指摘され、期中の仕訳をまとめて直すことです。原因は、迷った仕訳を記帳の側がその場で決め、税理士に回す決まりが無かったことです。避け方は、迷った仕訳に印を付ける欄を会計ソフトに作り、月1回まとめて税理士に送ることです。
税理士以外に記帳を頼む失敗の2つ目は、データ形式が合わず、税理士の入れ直しが起きることです。依頼先から届いた帳簿データを、税理士が自分のソフトに入れ直す失敗です。原因は、データの形式を契約前に決めなかったことです。避け方は、会計ソフトを税理士と共有するか、渡すファイルの形式を3者で決めてから契約することです。
質問先とデータ形式の失敗は、記帳の依頼先の腕の問題ではありません。税理士以外に頼むときは、税理士を含めた3者の取り決めがそろって初めて、記帳から申告までがつながります。
当社の判断では、外部への記帳の依頼を続けられるかは、最初の月に担当と締め日を決められるかで分かれます。決まらないまま始めると、毎月の受け渡しのたびに確認のやり取りが増えるためです。
今日やること:記帳と申告の担当表を1枚作る
今日の一歩は、経理作業を「記帳・請求と支払・月次の締め・決算整理・申告」の5つに分け、担当者の名前を書くことです。担当者の名前が書けずに空欄になった作業が、外に出す候補です。
担当表は、左に5つの作業、右に担当者名と締め日を書く2列で足ります。できたら、次の順で進めます。
- 空欄が記帳だけなら、記帳代行会社か個人の記帳者に見積もりを頼みます
- 空欄が請求・支払や月次の締めにも広がっているなら、経理BPOに見積もりを頼みます
- 申告の欄が空欄なら、記帳の依頼先より先に税理士を決めます
見積もりを頼むときは、税理士以外の依頼先に次の3つを聞いてください。
- 判断に迷う仕訳が出たとき、誰がどうやって税理士に回しますか
- 試算表は毎月何日までに、どの形式で出せますか
- 決算整理の仕訳は、御社と税理士のどちらが入れる前提ですか
担当表ができたら、4つの取り決めを書面に残します。ひな形は「締め日は毎月◯日、試算表は◯日までに共有」「迷う仕訳は印を付け、月1回◯日に税理士へ送る」「決算整理は◯◯が入れる」「データは◯◯形式で共有」の4行です。◯は、依頼先と税理士の3者で埋めてください。
当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(2023年4月〜2026年9月。最も早い会社は翌月5日)。この9社は、記帳から請求・支払までをまとめて任せた会社です。記帳だけを頼む場合の目安にはなりません。
税理士と税理士以外の費用の比較は、この記事に載せていません。比較できる数字が当社の集計に無いためです。見積もりは、同じ範囲(記帳のみか、請求・支払・月次の締めまで含むか)にそろえて比べてください。範囲が違う見積もりの金額は、比べても安い高いが分かりません。
費用の比べ方は記帳代行の費用相場と依頼先別の料金、経理BPOの選び方は経理BPOの選び方6つにまとめています。
よくある質問
記帳代行は税理士以外でもできますか?
できます。仕訳の入力や帳簿の作成は、税理士だけに認められた税務代理・税務書類の作成・税務相談に入らないためです。
税理士以外に記帳を頼んだら、確定申告は誰がしますか?
申告書の作成と提出は、顧問の税理士か自社で行います。記帳の依頼先が税理士でなければ、申告書は作れません。
税理士以外の記帳代行に頼むと、何をしてもらえますか?
仕訳の入力・帳簿と試算表の作成までが基本です。経理BPOなら請求書の発行や支払い、月次の締めまで任せられます。
税理士以外に記帳を頼むのが向かないのはどんな場合ですか?
現金取引が中心で証憑がそろわない場合と、税務の判断まで任せたい場合です。先に証憑の集め方か税理士を決めてください。
頼んでからどのくらいで変化が見えますか?
記帳から請求・支払までを任せた9社は、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に早まりました。記帳だけの場合は別です。
顧問税理士がいても、記帳だけ税理士以外に頼めますか?
頼めます。その場合は、帳簿データを渡す日と形式、判断が要る仕訳の質問先を顧問税理士と先に決めてください。
まとめ: 税理士以外に頼むなら、申告への渡し方を先に決める
記帳代行は税理士以外にも頼めますが、申告書の作成と税務相談は税理士にしか頼めません。だから、税理士以外に頼むときは、帳簿を申告へ渡す取り決めが要ります。
決めるのは、締め日・判断が要る仕訳の質問先・決算整理の担当・データの渡し方の4つです。記帳代行の仕組みそのものは記帳代行とは?できる範囲と落とし穴で確かめられます。
今日できる一歩は、経理作業を5つに分けた担当表を1枚作ることです。空欄が記帳の先まで広がっているなら、経理BPOの無料相談で任せる範囲を一緒に整理できます。
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