BPOで経費が減るかは、委託料と給与の差ではなく、社内に残る手間の時間で決まります。当社が銀行・カードの連携を切り替えた15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました。この15社で入力の時間を減らしたのは、委託ではなく「やり方の見直し」でした。
だから、見積もりを取る前に今の作業時間を測ってください。測らずに委託すると、委託料が今の費用に上乗せされるだけで終わります。
この記事は、経理をBPO(外部委託)に出して経費を減らせるかを判断したい、中小企業の経営者・管理部門の責任者向けです。
※ 2026年11月時点の情報です。厚生年金保険料率は、日本年金機構の案内を2026年11月1日に確認しました。
この記事でわかること- BPOで減る費目・置き換わる費目・残る費目
- 当社の支援先で入力時間と締め日がどう変わったか
- BPOの経費削減が外れる3つの条件
- 自社の数字で試算する手順と、今日やること
BPOで経費削減につながる費目はどれか
BPOで確実に減るのは入力と照合にかかる社内の時間で、担当者の人件費は委託料に置き換わる費目です。
BPOによる経費削減とは、経理などの業務を外部に継続して任せ、社内でかかっていた人の時間と費用を、委託料より小さくすることです。委託料が増えた分より、社内で減った分が大きいときだけ削減になります。
経理にかかる費用は、BPOを入れると4つに分かれます。費目ごとの動きは次のとおりです。
| 費目 |
BPOを入れた後 |
理由 |
| 入力と照合の時間 |
減る |
作業そのものを外へ出すため |
| 担当者の人件費・採用費 |
委託料に置き換わる |
人を減らすか、採らない場合に限る |
| 確認と承認の時間 |
残る |
支払いの承認は社内で行うため |
| 委託料 |
増える |
新しく払う費用のため |
人件費は、給与だけでなく会社負担の社会保険料も含めて見ます。日本年金機構の厚生年金保険料の案内では、保険料率は18.3%で固定され、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。
ただし、担当者がほかの仕事も兼ねていて人数を減らさないなら、人件費は置き換わりません。その場合に減るのは、担当者が経理に使っていた時間だけです。
当社は2026年11月に、1つのAI(Gemini)へ本記事の論点5問を聞き、答え5件を数えました。ほかの論点を聞いた答え4件のうち、『費目』に触れたものは0件でした(出典: 当社調べ)。
費用の相場そのものは経理アウトソーシングの費用相場、見積書の費目の読み方は経理BPOの料金の内訳で扱っています。
委託した会社で入力時間と締め日はどう変わったか
当社が経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました。
集計の対象は、2023年4月から2026年9月までに当社が経理代行を担当した9社です。業種や仕訳の件数ごとの内訳は集計していないため、自社に当てはめるときは自社の締め日で確かめてください。締め日は次のとおりです。
| 指標 |
翌月の日付 |
| 委託前の締め |
20日 |
| 委託後の締め |
8日 |
| 最も早い会社 |
5日 |
締めが早まると、前の月の数字で今月の判断ができます。経費削減の効果は、作業時間だけでなく判断の早さにも出ます。
入力の時間は、委託の前の切り替えで大きく減りました。2023年4月から2026年9月までに銀行・カードの連携とExcelの手入力からの切り替えを行った15社では、入力作業が月平均20時間から6時間になりました。
経費精算も同じです。2023年4月から2026年9月までに紙・Excelの経費精算をクラウド経費精算に切り替えた12社では、1社あたり月8〜15時間の手間が減り、締め作業が約3日短くなりました。
同じ調べでは、ほかの論点を聞いた答え5件のうち、『委託後』に触れたものは1件でした(出典: 当社調べ)。
当社の見方では、BPOの経費削減の多くは「外に出す前に、やり方を変える」ことから生まれます。経費精算の外注だけを考えている場合は、経費精算のBPOも参考にしてください。
BPOの経費削減が外れる3つの条件
BPOで経費が減らないのは、浮いた時間の使い道が無い場合・証憑がそろわない場合・税務の判断まで外に出す場合の3つです。
あわせて請求書の記帳で間違えやすい計上日もご覧ください。
2023年4月から2026年9月までに、当社が経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件でした。この7件は依頼の件数で、後で出てくる仕訳の誤りを数えた7社とは別の集計です。理由は、現金取引が中心で証憑がそろわない(3件)、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)、税務の判断まで求められた(2件)です。
条件1: 浮いた時間を別の仕事に回せない
起きることは、委託料だけが増えて、社内の費用が変わらない事態です。原因は、経理を兼ねていた担当者の勤務時間が、委託後もそのまま残ることです。
避け方は、委託の前に「浮いた時間で何をするか」を決めることです。営業事務や請求の確認など、浮いた時間を充てる仕事を1つ決めてから委託してください。決まらないなら、委託は見送ったほうが費用は増えません。
条件2: 証憑がそろわない
起きることは、委託先が入力できず、確認のやり取りが増える事態です。当社が合わなかった7件のうち3件が、現金取引が中心で証憑がそろわない例でした。
決算直前の丸投げも同じ原因で外れます。7件のうち2件は、期限に間に合わない例でした。決算の1か月前に1年分の資料を渡すのはNGです。当社の判断では、決算期がいつでも、遅くとも期末の2か月前までに相談してください。決算月から数えて逆算するだけで当てはめられます。
避け方は、領収書を月ごとに残す運用を先に作ることです。断られやすい依頼の特徴は記帳・経理代行を断られる理由にまとめています。
条件3: 税務の判断まで外に出そうとする
起きることは、BPOの委託料と税理士の顧問料が両方残る事態です。申告書の作成と税務の判断は税理士の業務で、税理士でないBPOの会社は引き受けられません。7件のうち2件が、税務の判断まで求められた例でした。
線引きは記帳代行は税理士法違反?で扱っています。避け方は、見積もりの段階で「記帳と締めまで」と「申告と税務の判断」を分けて考えることです。
当社には、手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがありました。当社はその事務所と、業務を分担する提携を結びました。入力と締めはBPO、申告と税務の判断は税理士と分けると、費用の重なりが出ません。
BPOの経費削減を自社の数字で試算する方法
BPOの経費削減は、今の経理の作業時間から連携で減る分を引き、残った時間と委託料を比べて試算します。
近い論点を請求書の仕訳で金額が合わない5つの場面で扱っています。
試算の式は次のとおりです。比べるのは月あたりの金額です。
- 今の経理の作業時間を、作業ごとに1か月記録する
- 銀行・カードの連携で減る時間を引き、残りの時間を出す
- 残りの時間にかかる人件費(会社負担の社会保険料を含む)と、委託料の見積もりを比べる
仮の例で当てはめます。仮に担当者が入力に月20時間かけていて、連携で月6時間まで減ったとします。この場合、BPOで減らせるのは連携後に残る6時間と、締めや請求の作業です。
さらに仮に、委託料が担当者の月10時間分の人件費にあたるとします。残る入力6時間だけを委託すると、10時間分を払って6時間分しか減らず、赤字です。締めと請求を足して10時間分を超えて減るときに、初めて見合います。
当社の判断では、連携後の入力が月6時間以下なら、入力だけを委託しても費用は見合いにくいです。6時間を目安にするのは、当社が切り替えた15社の連携後の平均が6時間だったためです。その場合は、締め・請求・支払いまで含めて委託するかを考えます。
取引の量で目安は動きます。当社が請求書の発行や支払処理を代行した会社は、1社あたり月20〜150枚を扱っていました(2023年4月〜2026年9月、発行代行18社・支払処理25社)。枚数が150枚に近い会社ほど、入力の時間は6時間より長く残りやすいです。
見積もりの条件は、委託先ごとに違います。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。
費用・選び方・税理士との違い・依頼できる範囲を調べる質問では、回答の85.0%が経理代行会社の公式サイトを1つ以上出典にしていました。出典は当社の業種調査です。
AIの答えも、各社の公式サイトの条件をもとにしています。比べるときは、仕訳の件数・会計ソフト・締めの希望日を同じ文面で各社に伝えてください。条件がそろわない見積もりは、金額だけ並べても比べられません。
BPO・連携の見直し・採用のどれで経費を減らすか
入力の時間が重いなら連携の見直し、締めと請求まで手が回らないならBPO、社内に判断の担い手が要るなら採用が合います。
近い論点をバックオフィスのコンサルが提案で終わる3つの原因で扱っています。
条件ごとの選び方は次のとおりです。
| 自社の状況 |
先に選ぶもの |
| 手入力が残っていて、入力が月6時間を超える |
銀行・カードの連携の見直し |
| 連携後も締めが翌月10日を過ぎる |
締めと請求を含めたBPO |
| 担当者が辞めて、引継ぎ先がいない |
BPOで当面を回し、採用は後で決める |
| 経営判断の資料づくりを社内で担う人が要る |
採用(BPOと併用) |
| 現金取引が中心で証憑が残らない |
BPOは見送り、証憑の残し方を先に整える |
2つ以上に当てはまるなら、証憑の残し方を先に整えてください。証憑が残らない状態では、連携もBPOも効かないためです。当社が断った7件のうち3件も、この原因でした。証憑が残っていて入力も締めも重いなら、連携の見直しを先に済ませ、残った締めと請求をBPOに出します。
翌月10日を目安にするのは、当社が担当した9社の委託後の締めが平均で翌月8日だったためです。連携しても10日を過ぎるなら、作業の量より担い手の不足が原因と当社は見ています。
当社には、経理担当が離職した大手コンサル会社から、経理BPOを導入したいという問い合わせがあり、契約を結びました。担当者が辞めた直後は、採用の費用と期間をかける前にBPOで回す選択肢があります。退職直後の対応は経理担当者の退職対応にまとめています。
BPOを見送ったほうがよい場合
取引が少なく、連携後の入力が月6時間以下で、締めも翌月10日までに終わっているなら、BPOは見送ってください。委託料に見合う時間が社内に残っていないためです。
内製と外注の違いを6つの軸で見比べたい場合は、経理の内製と外注の比較を参考にしてください。外注の向き不向きは経理外注の判断基準でも確かめられます。
委託後に経費削減を確かめる3つの数字
BPOの経費削減は、社内の経理の時間・締め日・仕訳の直しの件数の3つを、委託の前後で比べて確かめます。
委託料の請求書だけを見ても、削減になったかは分かりません。委託の前に3つを記録しておき、3か月後に同じ数え方で測ってください。
| 数字 |
委託前に記録すること |
3か月後に見ること |
| 社内の経理の時間 |
作業ごとの月の時間 |
確認と承認に残った時間 |
| 締め日 |
翌月の何日に締まるか |
何日早まったか |
| 仕訳の直し |
申告前に直した件数 |
委託先からの確認の件数 |
仕訳の直しは、見えにくい費用です。2023年4月から2026年9月までに経理代行で担当した7社で、実際に直した仕訳の誤りは年間約90件でした。
多い順に外注費と給与の区分(約40件)、資産に計上すべき備品の消耗品処理(約25件)、前払費用の計上漏れ(約15件)、源泉徴収の漏れ(約10件)です。この約90件は7社の合算で、1社あたりの件数は集計していません。誤りを申告前に直す手間も、削減の対象に入ります。
建設業の会社3社の経理代行で、実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。業種によって直す費目が違うため、自社の直しの件数は自社で数えてください。
外注費と給与の区分は、税の判断が関わります。国税庁の大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)は、作業時間の指定や仕事の進め方の指示があるかなどを総合して判定するとしています。
請負の契約書があり、成果物に報酬を払っているなら、契約書を委託先に渡して外注費で処理を頼めます。働く時間や場所をこちらが指示しているなら、仕訳の前に税理士へ聞いてください。
今日やること: 経費削減の試算3ステップ
経費削減の試算の最初の一歩として、今月の経理の作業を作業ごとに時間で記録し始めてください。
試算は3か月で進めます。
- 1か月目に、入力・照合・請求・支払い・締めの時間を記録する
- 2か月目に、銀行・カードの連携を見直し、入力の時間がどこまで減るかを測る
- 3か月目に、残った時間と締め日を条件として、委託先の見積もりと比べる
3か月待てない場合は、今日1時間で簡易判定ができます。直近1か月の入力・照合・請求・支払い・締めを、思い出せる範囲で時間にして書き出し、入力が月6時間を超えるか、締めが翌月10日を過ぎるかを見てください。
記録の様式は、日付・作業名(入力、照合、請求、支払い、締め)・かかった時間・連携で減らせそうか、の4列で足ります。2つの基準のどちらにも当てはまらなければ、見積もりを取る必要はありません。どちらかに当てはまるなら、3か月の試算に進みます。連携の見直しを先に済ませると、BPOに出す範囲が締めと請求に絞れます。
2023年4月から2026年9月までに当社が経理代行・記帳代行を担当した会社は48社で、そのうち31社は継続中です。記録した時間を見せていただければ、外に出す範囲と社内に残す範囲を一緒に整理します。
よくある質問
BPOに経理を任せると、どの経費が減りますか?
減るのは入力と照合にかかる社内の時間です。担当者の人件費と採用費は、委託料に置き換わります。
BPOで経費が減らないのは、どんな会社ですか?
浮いた時間を別の仕事に回せない会社、証憑がそろわない会社、税務の判断まで外に出したい会社です。
BPOを頼む前に、自社でできることはありますか?
あります。銀行・カードの連携で入力の時間を減らし、残った時間を測ってから見積もりと比べてください。
委託してから、どのくらいで変化が見えますか?
2023年4月〜2026年9月に当社が経理代行を担当した9社の集計では、月次の締めが平均で約12日早まりました。
税理士の顧問料もBPOで減らせますか?
減らせません。申告書の作成と税務の判断は税理士の業務なので、顧問料はBPOの委託料とは別に残ります。
経理担当者が辞めたばかりでも、BPOを頼めますか?
頼めます。前任者の資料が残っていれば引き継ぎで済み、無ければ整理の手間の分だけ費用が増えます。
まとめ: 時間を測ってから、外に出す範囲を決める
BPOで経費が減るかは、社内に残る手間の時間で決まります。連携の見直しで入力を減らし、残った締めと請求を委託料と比べるのが当社の勧める順番です。
浮いた時間の使い道が無い場合、証憑がそろわない場合、税務の判断まで外に出す場合は、経費削減になりません。今日は、今月の経理の作業を時間で記録するところから始めてください。
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