経理外注は個人(フリーランス)にも依頼できます。記帳や請求書処理、データ入力といった業務を、会社ではなく個人事業主として活動するフリーランスへ直接委託する中小企業が増えています。会社への外注より単価を抑えやすい一方、体制は基本的に1人のため、休止リスクや情報管理の体制は自社で見極める必要があります。本記事では、個人に外注する仕組みとメリット・デメリット、向いている会社の特徴、探し方、契約時の注意点まで解説します。
この記事は、経理業務の外注先として個人(フリーランス)を検討しているが、会社への外注と何が違うのか判断がつかない中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。フリーランス新法(2024年11月施行)に関する内容を含みます。
この記事でわかること
- 経理を個人に外注するとはどういう仕組みか、会社への外注との違い
- 個人に外注する3つのメリットと3つのデメリット・リスク
- 個人への外注が向いている会社の特徴と探し方3つの方法
- 契約時に確認すべきポイントと、フリーランス新法・源泉徴収の実務対応
経理を個人(フリーランス)に外注するとは?会社への外注との違い
経理を個人に外注するとは、経理業務の一部を法人ではなくフリーランス個人へ直接委託することです。
選ぶときの基準は経理の外注と丸投げの違いでも扱っています。
実際の進め方はフリーランスの経理のやり方で整理しています。
経理の個人外注とは、経理BPO会社や記帳代行会社のような法人ではなく、元経理担当者や独立した記帳代行フリーランスに、業務委託契約で直接依頼する形態を指します。仲介する組織がない分、単価は抑えやすく、やり取りも直接的です。
会社への外注では、担当者が複数人在籍し、繁忙期のフォロー体制や品質管理の仕組みが組織として整っていることが多いです。一方、個人への外注は基本的に1人が窓口かつ実務担当者になるため、体制の厚みという点では会社に劣ります。
その代わり、個人は間接コストが少ない分、同じ業務でも単価を抑えやすい傾向があります。依頼したい業務が記帳や請求書処理のように範囲を絞りやすい内容であれば、個人への外注は費用対効果の高い選択肢になります。
会社と個人のどちらが自社に合うかを迷う場合は、経理の内製と外注を比較|6つの軸で見る違いと選び方もあわせて参考にしてください。次の章から、個人に外注する具体的なメリットとデメリットを見ていきます。
個人に外注する3つのメリット
個人に外注する主なメリットは、費用を抑えやすいこと、業務範囲を柔軟に絞れること、意思疎通が早いことの3つです。
経理を個人に外注する3つのメリット
メリット1: 会社より低コストで依頼できることが多い。個人は事務所家賃や複数人の人件費といった間接コストを抱えていないため、同じ作業内容でも会社より単価を低く設定できる場合が多くあります。
メリット2: 記帳のみなど業務範囲を柔軟に絞れる。会社によっては最低契約範囲が決まっていることがありますが、個人は「まず記帳だけ」「請求書のチェックだけ」のように、小さい単位から依頼しやすい傾向があります。
メリット3: 担当者と直接やり取りでき意思疎通が早い。間に営業担当や連絡窓口を挟まないため、業務内容の微調整や急な確認事項も、直接のやり取りで完結します。指示が正しく伝わっているかの確認に時間がかかりにくい点は、日々の運用で地味に効いてきます。
依頼範囲を絞ってスモールスタートしたい会社にとって、個人への外注は試しやすい選択肢です。ただし、メリットの裏側にあるリスクも契約前に把握しておく必要があります。
個人に外注する3つのデメリット・リスク
個人に外注する主なリスクは、体調不良などによる急な対応不能、情報管理体制の弱さ、専門知識の属人化の3つです。
デメリット1: 体調不良や離脱で急に対応できなくなるリスク。個人は基本的に代わりの担当者がいないため、体調不良や事情による離脱がそのまま業務の停止に直結します。繁忙期に連絡が取れなくなるケースは、個人への外注で最も相談を受けやすいトラブル。
デメリット2: 情報管理の体制が会社ほど整っていない場合がある。会社であれば就業規則やセキュリティ規程で情報管理が仕組み化されていることが多い一方、個人の場合は運用がその人任せになりがちです。委託前に、データの保管方法や端末の管理方法を確認しておく必要があります。
デメリット3: 専門知識が特定の個人に集中し属人化しやすい。業務のやり方や過去の経緯が担当者の頭の中にしかない状態は、その人が離脱した瞬間に引き継ぎコストとして表面化します。マニュアル化を依頼段階から条件に含めておくと、このリスクを抑えられます。
注意: 情報管理体制の確認を後回しにしない
給与計算のように従業員の個人情報を扱う業務を個人に依頼する場合、秘密保持契約の締結とデータの取り扱い方法を契約前に確認しないまま進めるのはNGです。口頭合意だけで進めると、漏洩時の責任の所在があいまいになります。
セキュリティ面の確認項目をさらに詳しく知りたい場合は、経理代行のセキュリティで整理しています。会社への外注でも共通する視点が多く、個人への外注ではより厳密なチェックが欠かせません。
個人への外注が向いている会社の特徴
個人への外注は、業務量が少なく、依頼範囲を記帳など一部に絞れる会社に向いています。
依頼したい業務量がそれほど多くなく、繁忙期だけスポットで手伝ってほしい会社は、個人への外注と相性が良い典型例です。逆に、給与計算まで含めて年間を通じて安定した体制を求める会社は、複数人体制の経理BPO会社のほうが向いています。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。つまずきやすいのは、日々の記帳は自社や個人への依頼で回せていても、月次試算表の作成や年末調整のような専門知識が要る山場だけ手が回らなくなるケースです。こうした山場だけ複数人体制の経理BPO会社に切り出し、日常の記帳は個人へ依頼するという組み合わせも選択肢になります。
自社が個人への外注に向いているかどうかの判断軸は、経理外注の判断基準5つでも整理しています。判断に迷う場合は、経理BPOの無料相談で業務量から一緒に整理することもできます。
個人(フリーランス)の探し方3つの方法
個人(フリーランス)の探し方は、クラウドソーシング・税理士・取引先からの紹介が中心です。
費用の目安はフリーランスの経理費用相場で整理しています。
個人への外注を始める3ステップ
第一に、クラウドソーシングサイトで探す方法です。登録者のプロフィールから実績や保有資格、過去の評価を確認でき、複数の候補を比較しやすいのが特徴です。クラウドワークスが公開する「記帳代行の料金相場」によると、クラウドソーシング経由の依頼は時給1,500〜2,000円程度が目安とされています。
第二に、顧問税理士からの紹介です。日頃から経理データを見ている税理士は、実務に慣れた個人を知っていることが多く、質の見極めを任せやすい探し方です。
第三に、既存の取引先や同業からの紹介です。実際にその個人と仕事をした会社の評判を確認できるため、クラウドソーシングより情報の確度が高くなりやすい方法です。
どの方法で探す場合も、過去に対応した業種や会計ソフトの経験を確認してから依頼することが、ミスマッチを防ぐ最初の一歩になります。
契約時に確認すべき3つのポイント
契約時は、業務範囲と報酬の明示、秘密保持契約の締結、フリーランス新法への対応の3つを確認します。
第一に、業務範囲と報酬を書面で明示することです。2024年11月に施行されたフリーランス新法では、個人事業主へ業務委託する発注者に、給付内容・報酬額・支払期日などの取引条件を明示する義務が課されています。口頭だけの依頼は、この義務を満たさないだけでなく、後々の認識違いの原因にもなります。
第二に、秘密保持契約(NDA)を結ぶことです。取引先の情報や従業員の個人情報を扱う場合、対象となる秘密情報の範囲と、契約終了後の取り扱いまで書面に残しておく必要があります。
第三に、報酬支払いに関する実務対応です。フリーランス新法では、従業員を使用する発注者に報酬の60日以内の支払いなどの義務が課されます。加えて、税務上は依頼する業務内容によって源泉徴収の要否が変わります。
国税庁の「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」によると、源泉徴収の対象は弁護士・税理士・公認会計士など特定の資格を持つ人への報酬が中心です。一般的な記帳代行やデータ入力は対象に含まれないケースが多いとされています。ただし、依頼先が税理士資格を持つ個人の場合は対象になり得るため、契約前に依頼先の立場を確認しておくと安心です。
私も、個人への外注を検討する経営者から「源泉徴収は必要になるのか」という質問を受けることがあります。依頼する業務が記帳や入力作業にとどまるのか、税理士としての判断業務まで含むのかによって扱いが変わるため、契約前に依頼内容を整理しておくと迷いません。
フリーランス新法の詳しい義務内容は、公正取引委員会の「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」で確認できます。発注者側の義務を知らないまま契約すると、意図せず法令違反になる可能性があるため、個人への外注を始める前に一度目を通しておくことをおすすめします。
個人と経理BPO会社・記帳代行会社の違い比較
個人と経理BPO会社・記帳代行会社の違いは、体制の厚み、対応範囲の広さ、費用の3点に整理できます。
費用の目安は税理士の記帳代行報酬相場と経理BPO比較で整理しています。
選ぶときの基準は、経理外注の依頼先|記帳代行センターと税理士の違い5つで解説しています。
個人(フリーランス)と経理BPO会社の違い
| 比較項目 |
個人(フリーランス) |
経理BPO会社・記帳代行会社 |
| 費用感 |
時給1,500〜2,000円程度が目安 |
業務範囲に応じた月額制が中心 |
| 体制 |
基本的に1人が窓口かつ実務担当 |
複数人体制でフォローが利く |
| 休止リスク |
体調不良等で業務が止まりやすい |
担当変更でも引き継ぎ対応できる |
| 情報管理 |
個人の運用に依存しやすい |
会社としての規程が整っていることが多い |
依頼したい業務が記帳のみで、費用を抑えたい会社は個人が向いています。給与計算まで含む幅広い業務を安定した体制で任せたい会社は、経理BPO会社のほうが向いています。費用の詳細な内訳は経理外注の費用相場|依頼先4タイプの料金で依頼先タイプ別に比較しています。
個人への外注で失敗しないためのNG対応
個人への外注で失敗しやすいのは、休止手段を決めずに契約し、秘密保持契約なしで進める対応です。
休止時の代替手段を決めないまま契約するのは、最も避けたいNG対応です。個人は基本的に1人体制のため、体調不良や事情による離脱が起きた際の代替案を、契約時にあらかじめ話し合っておく必要があります。
秘密保持契約なしで機微な情報を渡すのも避けるべき対応です。取引先の情報や従業員の給与データを扱う契約であるほど、秘密保持契約の締結を業務開始の前提条件にしてください。
業務範囲をあいまいにしたまま依頼するのも、後々の認識違いにつながります。「記帳だけ」なのか「請求書のチェックまで含む」のか、依頼段階で書面に落とし込んでおくと、追加費用や対応漏れのトラブルを防げます。
リスクをゼロにするのではなく、起きたときの備えを決めておくこと。個人への外注を長く続けられるかどうかの分かれ目です。自社だけで契約条件の整理が難しい場合は、経理BPOの無料相談で確認項目を一緒に整理することもできます。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
経理を個人(フリーランス)に外注することはできますか?
可能です。記帳や請求書処理など、業務範囲を絞って個人に依頼する会社が増えています。
個人に外注する場合、会社に外注するより費用は安くなりますか?
時給換算では会社より安めになりやすい一方、対応できる業務範囲は限定されがちです。
フリーランスに外注する場合、フリーランス新法の対象になりますか?
個人事業主へ業務委託する場合は対象になり、取引条件の明示などの義務が生じます。
個人への外注で気をつけるべきリスクは何ですか?
体調不良などで急に対応できなくなる点と、情報管理の体制が弱くなりやすい点です。
経理を任せられる個人(フリーランス)はどこで探せますか?
クラウドソーシングサイトや、税理士・取引先からの紹介で探すのが一般的です。
記帳代行の報酬を個人に支払う場合、源泉徴収は必要ですか?
一般的な記帳代行は対象外になりやすいですが、税理士資格者への依頼は対象です。
まとめ: 経理の個人外注は「範囲の見極めとリスク対策」がカギ
経理を個人(フリーランス)に外注することは可能で、費用を抑えながら記帳などの業務範囲を柔軟に依頼できる選択肢です。その一方で、体制は基本的に1人であるため、休止リスクや情報管理体制への備えは、会社への外注以上に契約段階で作り込む必要があります。
依頼したい業務量が少なく範囲を絞れるなら個人、給与計算まで含めて安定した体制を求めるなら経理BPO会社というように、自社の状況に合わせて選んでください。契約条件の整理に迷う場合は、経理BPOの無料相談でどちらが向いているか確認することもできます。