インボイス制度で、免税の外注先に払う外注費は、2026年10月から消費税相当額の7割だけを控除します。2026年9月までの8割から下がり、2028年10月には5割になります。
ただし、自社が簡易課税なら納税額は変わりません。取引条件を見直す前に、自社の消費税の計算方法を確かめてください。見直す場合も、一方的な値下げの通告は独占禁止法上の問題となるおそれがあります。
この記事は、免税事業者の外注先(個人の職人・デザイナー・ライターなど)に毎月払っている中小企業の経営者と経理担当者向けです。
※ 2026年11月時点の情報です。控除割合と上限額は、2026年11月2日に国税庁と財務省の案内で確認しました。
この記事でわかること- 免税の外注先に払う外注費の控除割合と、時期ごとの変わり方
- 簡易課税の会社は影響を受けない理由
- 据え置き・登録の相談・価格の再交渉の選び分け
- 一方的な値下げの通告がNGな理由と、外に任せる目安
インボイス制度で外注費の消費税の扱いはどう変わった?
インボイス制度では、登録番号の無い外注先に払った外注費の消費税は、経過措置の割合だけしか控除できません。
免税事業者からの仕入れの経過措置とは、インボイスを発行できない相手からの仕入れでも、消費税相当額の一定割合を控除できる仕組みです。帳簿に経過措置の適用を受ける旨を書いて保存することが条件です。
国税庁の令和8年度税制改正特集によると、経過措置の期限は2年延びました。控除できる割合は、次のとおり段階的に下がります。
| 仕入れの時期 |
控除できる割合 |
| 2026年9月30日まで |
8割 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 |
7割 |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 |
5割 |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 |
3割 |
| 2031年10月1日から |
控除なし |
上の表の『控除できる割合』をグラフにしたもの(数字で書かれていない行は除く)
財務省の令和8年度税制改正の大綱の概要にも、同じ7割・5割・3割の段階が書かれています。
当社調べでは2026年11月に、2つのAI(ChatGPT・Gemini)へ本記事の論点5問を質問し、答え10件を得ました。10件の答えの出典に挙がったページは29件で、公的機関・学会・業界団体が5件でした。
同じ調べでは、進め方の手順に触れた答えは0件、専門家への相談に触れた答えも0件でした。AIの答えをそのまま使わず、控除割合は上の国税庁の表で確かめてから使ってください。
あわせて、1つの免税の外注先から経過措置を使える仕入れは、年1億円(税込)までになりました。改正前は10億円です。2026年10月1日以後に始まる課税期間から適用されます。
免税の外注先に払う外注費は、どれだけ控除できなくなる?
標準税率10%の外注費では、7割控除の期間に、税込の支払額の約2.7%が控除できなくなります。
試算:税込110の外注費なら、消費税相当は10です。仮に7割控除とすると、控除できるのは7で、残りの3は控除できません。3は税込110の約2.7%です。
同じ前提で時期ごとに並べると、次のようになります。
| 仕入れの時期 |
消費税相当10のうち控除できない分 |
税込額に占める割合(試算) |
| 2026年9月まで(8割) |
2 |
約1.8% |
| 2026年10月から(7割) |
3 |
約2.7% |
| 2028年10月から(5割) |
5 |
約4.5% |
| 2030年10月から(3割) |
7 |
約6.4% |
| 2031年10月から |
10 |
約9.1% |
自社の数字に当てはめるときは、免税の外注先への年間の支払額(税込)に、この割合を掛けてください。控除できない分は、そのまま自社の納める消費税が増える分です。
当社の判断では、取引条件を話し合う期限は、7割の今ではなく、5割に下がる2028年10月を基準に考えます。控除できない割合は約2.7%から約4.5%へ、2年で増えるからです。取引条件を話し合うなら、2028年9月までに済ませる段取りが組みやすくなります。
自社の消費税の計算方法で、影響の有無が分かれる
免税の外注先の影響を受けるのは本則課税の会社だけで、簡易課税の会社は納税額が変わりません。
国税庁のタックスアンサー No.6505によると、簡易課税は売上の消費税額にみなし仕入率を掛けて控除額を出します。外注先が登録しているかどうかは、計算に入りません。
簡易課税を選べるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の会社です。自社がどちらかは、前回の消費税の申告書の様式で分かります。
| 自社の消費税の計算方法 |
免税の外注先の影響 |
自社でやること |
| 簡易課税 |
納税額は変わらない |
取引条件は変えない |
| 本則課税 |
控除できない分だけ納税額が増える |
支払額と割合から増える額を出す |
| まだ申告していない新設の会社 |
選ぶ方法で変わる |
免税の外注先への年間の支払額の見込みを出し、税理士と計算方法を決める |
ここで簡易課税の会社が外注先に登録を求めるのは、自社の得になりません。外注先は登録すると消費税を納める側になり、値上げの相談が来ることもあるからです。
逆に、本則課税なのに登録番号の有無を確かめていない会社は、控除のしすぎが申告の前にまとめて見つかります。どちらの方法か分からないなら、まず前回の申告書を確かめてください。
免税の外注先への対応は3つ。どれを選ぶか
免税の外注先への対応は、据え置き・登録の相談・価格の再交渉の3つで、自社の計算方法と支払額で選びます。
免税の外注先への対応は、自社の状況によって、次の4つの場合に分かれます。
- 簡易課税の会社なら、据え置きを選んでください。取引条件は変えず、帳簿の書き方だけを整えます
- 本則課税で、免税の外注先への支払いが一時的なら、据え置きで7割の仕訳だけを整えてください
- 本則課税で、同じ外注先と毎月取引が続くなら、登録の相談を選びます。登録後の価格も同時に話し合ってください
- 本則課税で、控除できない額が利益を圧迫するなら、価格の再交渉を選びます。相手の仕入れの消費税も聞いてから決めてください
当社の判断では、据え置きと再交渉の境目は「年間の支払額(税込)×約2.7%」です。この額が、交渉と事務にかかる時間より小さいなら据え置きます。外注先を替える手間や品質の変化も、そこに含めて比べてください。
仮に交渉に月3時間、年36時間かかるなら、その時間の費用が約2.7%分を上回るかで決めます。上回るなら据え置き、下回るなら再交渉です。
登録の相談の進め方は、次のとおりです。
- 誰が: 発注を担当している人が、相手に直接伝えます
- いつ: 2028年9月までに、取引の更新前に伝えます
- 何を: 控除の割合の変化、登録すると消費税を納める側になること、登録後の価格の順に話します
- 断られたら: 据え置きに戻します。品質や納期が代えにくいなら、取引は続けます
価格に反映してよい額の目安は、控除できない分までです。7割の間は税込額の約2.7%、2028年10月からは約4.5%を上限にしてください。相手が自分の仕入れで払った消費税の分は、引かないでください。
価格の再交渉でも、同じ順で話します。相手の仕入れの消費税を聞き、合意した内容を日付つきでメモに残してください。合意に至らず、代わりの外注先が同じ品質と納期で見つかる場合に限って、外注先の入れ替えを考えます。
簡易課税の会社でも、外注先から値上げを求められることがあります。自社の納税額は変わらないので、値上げ分が外注先の消費税の負担に見合うかを聞いて、合意できる範囲で決めてください。
見送ったほうがよい場合
免税の外注先が1〜2人で、作業が一時的なら、取引条件の見直しは見送ってください。控除できない額より、交渉にかける時間のほうが大きくなりやすいからです。
外注先が実態として給与に近い場合も、交渉より先に区分を見直します。給与は消費税の控除の対象外なので、外注費のまま7割で控除していると、控除そのものが否認されるおそれがあります。
免税の外注先に一方的に値下げを通告するのはNG
「登録しないなら値下げする、応じないなら取引をやめる」と一方的に通告すると、独占禁止法上の問題となるおそれがあります。
財務省・公正取引委員会などが連名で出した免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&Aは、次の考え方を示しています。
- 再交渉で双方が納得して価格を決めたなら、結果として値下げになっても独占禁止法上の問題にはならない
- 再交渉が形だけで、免税事業者が負担していた消費税額も払えないほど低い価格にすると、優越的地位の濫用として問題になる
- 課税事業者にならなければ値下げする、応じなければ取引を打ち切る、と一方的に通告すると、問題となるおそれがある
起きることは、公正取引委員会の注意や、外注先との関係の悪化です。腕のよい外注先ほど、ほかの取引先へ移りやすくなります。
原因は、控除できない分を「消費税分をそのまま差し引けばよい」と考えることです。免税事業者も自分の仕入れで消費税を払っています。差し引く額は単純には決まりません。
避け方は、控除の割合と自社への影響を数字で伝え、相手の仕入れの負担も聞いてから価格を決めることです。話し合った日付と中身をメモに残してください。
2023年4月〜2026年9月にインボイス制度に対応した22社のうち、免税事業者の外注先への対応を相談したのは8社です。割合は約36.4%です。
取引先の個別の価格が法的に問題ないかの判断は、当社の業務ではありません。通告の文面を作る前に、弁護士や公正取引委員会の相談窓口に確かめてください。
外注費のインボイス対応で起きる誤り3つ
外注費のインボイス対応の誤りは、登録番号を確かめず全額を控除する、8割と7割を請求書の日付で選ぶ、給与に近い支払いを外注費のまま控除する、の3つです。
2023年4月から2026年9月までにインボイス制度に対応した22社で起きた問題は、3種類でした。登録番号の記載が無い請求書の受け取りが約30件、経過措置の税率の計算ミスが約12件です。免税事業者の外注先への対応の相談は8社でした。
誤り3の件数だけは、インボイスに限らない経理代行全般の集計です。担当した7社の範囲で、直した仕訳の誤りを1件ずつ数えています。
誤り1: 登録番号を確かめず、全額を控除した
- 登録番号を確かめず全額を控除すると、控除のしすぎで、申告の前に仕訳をまとめて直す手間が出ます
- 原因は、会計ソフトの税区分を、登録番号のある外注先と同じにしたことです
- 避け方は、外注先の一覧に登録番号の欄を作り、国税庁の公表サイトで照合することです
誤り2: 8割と7割を、請求書の日付で選んだ
- 割合を請求書の日付で選ぶと、9月に終わった作業を7割で処理し、控除が少なすぎる計算になります
- 原因は、10月に届いた請求書を、すべて新しい割合で入れたことです
- 避け方は、10月に届いた請求書の明細で作業が終わった日を確かめ、その日で割合を決めることです
誤り3: 給与に近い支払いを、外注費のまま控除した
インボイスに限らない集計の範囲では、2023年4月から2026年9月までに経理代行で担当した7社で、実際に直した仕訳の誤りは年間約90件でした。最も多かったのは外注費と給与の区分(約40件)です。
- 給与に近い支払いを外注費のまま控除すると、税務調査で給与とされ、消費税の控除が否認されます
- 原因は、請求書の形が整っていたので、働き方を見なかったことです
- 避け方は、毎月同じ額や時給×時間の請求に気づいたら、働き方を書き出して税理士に見せることです
外注費か給与かを自社で決めてよいのは、成果物で請求され、時間や場所を会社が決めていない場合です。毎月同じ額で、作業場所や道具を会社が用意しているなら、税理士に聞いてください。区分の詳しい見方は外注費の請求書の仕訳で起きる誤り4つで、建設業の一人親方は建設業の外注費の仕訳で扱っています。
外注費の確認を自社で続けるか、外に任せるか
免税の外注先が数人で税区分を一度決めれば済むなら自社で続け、外注先が多く毎月の照合で締めが遅れるなら外に任せます。
| 会社の状態 |
合うやり方 |
| 簡易課税で、外注先が少ない |
自社で続ける |
| 本則課税で、免税の外注先が数人 |
税区分を一度決めて自社で続ける |
| 本則課税で、外注先が多く入れ替わる |
照合と入力を任せ、判断は税理士と分ける |
任せるかどうかの目安は、次の3つのうち2つ以上です。外注先が毎月入れ替わる。登録番号の無い請求書が毎月届く。月次の締めが翌月の中旬を過ぎる。当社の判断では、2つ重なると照合の漏れが締めのたびに出るため、任せる側を勧めます。
仮に毎月40枚の外注費の請求書を受け、1枚の照合と入力に15分かけているなら、月10時間です。そのうち登録番号の照合に何時間かかっているかを書き出すと、任せる範囲が決まります。
当社は2023年4月から2026年9月までに、銀行・カードの連携とExcelの手入力からの切り替えを15社で行いました。入力作業は月平均20時間から6時間になり、約70%減りました。入力が手作業のままなら、任せる前に連携を試してください。
業者を探すときは、AIの答えの出典にも注意します。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、出典668件を数えました。
経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした(出典: 当社の業種調査)。比較サイトだけで決めず、公式サイトで「登録番号の照合を誰がするか」を確かめてください。
3つの目安のうち2つ以上に当てはまるなら、登録番号の照合を先に任せてください。照合の漏れは控除のしすぎとして申告まで残り、あとから直す仕訳が増えるからです。
業者に聞く質問は、次の3つです。
- 登録番号の照合と、7割控除の税区分の設定は、どちらが担当しますか
- 作業が終わった日を明細で確かめる手順はありますか
- 外注費か給与かの判断が要る請求書は、どこへ回しますか
任せても合わない会社
2023年4月から2026年9月までに、経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件です。理由は、現金取引が中心で証憑がそろわない(3件)、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)、税務の判断まで求められた(2件)でした。
外注費か給与かの判定や、取引条件の法的な判断は、記帳の委託先の業務ではありません。手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、業務を分担する提携を結んだことがあります。記帳と照合は当社、税務の判断は税理士という分け方が回りやすいからです。
任せられる範囲は記帳代行は資格なしの会社でも頼める?で、インボイスの負担の減らし方はインボイス経理の負担を軽減する方法で解説しています。
今日やること
まず、前回の消費税の申告書で、簡易課税か本則課税かを確かめてください。簡易課税なら、取引条件の見直しは不要で、今日の作業は終わりです。
本則課税なら、外注先の一覧に「登録番号」の欄を作ります。登録番号は国税庁の公表サイトで確かめられます。
次に、登録番号の無い外注先への年間の支払額を出し、約2.7%を掛けます。その額と交渉の手間を比べて、3つの対応のどれにするかを決めてください。請求書の記載事項は適格請求書の要件で確かめられます。
よくある質問
インボイス制度で、免税の外注先に払う外注費はどう変わりましたか?
2026年10月から2028年9月までの仕入れは、免税の外注先に払う外注費の消費税相当額のうち7割だけを控除します。
簡易課税の会社も、免税の外注先との取引条件を見直すべきですか?
見直す必要はありません。簡易課税の控除額は売上の消費税額とみなし仕入率で決まり、外注先の登録の有無で変わりません。
免税の外注先に値下げを求めてもよいですか?
双方が納得する再交渉なら問題ありません。登録しないなら値下げすると一方的に通告すると、独占禁止法上の問題となるおそれがあります。
免税の外注先の確認は、どこまで自社でできますか?
登録番号の有無の確認と7割での仕訳は、自社でできます。外注費か給与かの判定と取引条件の法的な判断は税理士や弁護士に聞いてください。
外注費の確認を経理代行に任せると、何をしてもらえますか?
経理代行では、請求書の受け取り、登録番号の照合、7割控除の税区分での入力、支払いの準備を任せられます。価格の交渉は社内に残ります。
経理代行に任せても合わないのはどんな会社ですか?
現金取引が中心で証憑がそろわない会社と、税務の判断まで任せたい会社です。当社が合わなかった7件の理由もこの2つが中心でした。
まとめ: 免税の外注先への対応は、自社の計算方法から決める
インボイス制度で、免税の外注先に払う外注費は2026年10月から7割、2028年10月から5割しか控除できません。ただし影響を受けるのは本則課税の会社だけで、簡易課税の会社は取引条件を変える必要がありません。
本則課税の会社は、支払額に約2.7%を掛けて増える額を出し、据え置き・登録の相談・価格の再交渉から選んでください。どれを選んでも、一方的な値下げの通告は避け、双方が納得して価格を決めます。