経理業務フローテンプレートとは、記帳・支払い・月次決算などの手順を記号と矢印で図に示したひな形のことで、担当者ごとにばらつく作業を1枚の図で統一できます。 テンプレートを使うと、白紙から図を書き起こす手間を省きながら、抜け漏れのない業務フローを作成できます。本記事では、テンプレートに必要な5つの要素、業務別の4テンプレート例、使い方3ステップ、作成ツールの比較、活用時のNG例まで解説します。
この記事は、経理業務のフローを図にしたいが何から手をつければよいか分からない中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
テンプレートに欠かせない5つの要素 業務別に使える4つのテンプレート例 テンプレートの使い方3ステップ 作成ツールの比較と活用時のNG例
経理業務フローテンプレートとは?使うメリット
経理業務フローテンプレートとは、記帳・支払い・月次決算といった一連の作業を、記号と矢印を使って1枚の図にまとめたひな形です。
業務フロー図とは 、誰が・いつ・何を・どの順番で行うかを可視化した図のことです。テンプレートを使うと、白紙から書き起こすより短時間で、抜け漏れの少ない図を作れます。
テンプレートを使う一番のメリットは、担当者ごとに異なっていた手順を1つの形式に揃えられることです。属人化した業務ほど、フローを書き出そうとした時点で「実は人によってやり方が違う」ことが発覚します。
株式会社スタディストが2026年2月に実施した「現場の非効率実態調査2026」 (従業員300人以上の企業に勤める人など1,233名対象)があります。従業員300人以上の企業で働く人の59.2%が「特定の人にしかできない業務がある」と回答しました。 属人化は大企業でも珍しくなく、テンプレートによる可視化はどの規模の会社にも役立ちます。
同調査では、困ったときに文字だけのマニュアル・手順書を見る人は25.7%にとどまり 、63.8%が上司や先輩に直接聞いて対応していました。文字情報より、図で一目に分かる形のほうが実際には頼られやすいことがうかがえます。
私たちセブンセンシズも、補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を通じて、中小企業の経理業務がどこでつまずくかを申請の現場で数多く見てきました。手順を図にしていない会社ほど、担当者への質問が集中し、確認だけで時間が消えていく傾向があります。
テンプレートは、新しく配属された担当者への説明にも役立ちます。口頭での引き継ぎだけでは、細かい判断基準が伝わらず、後になって「そこは聞いていない」という食い違いが起きがちです。1枚の図として残しておけば、説明する側の負担も、新人が確認する手間も同時に減らせます。
繁忙期に一時的な応援を頼む場合にも、テンプレートは効果を発揮します。普段その業務を担当していない人でも、図を見れば承認の流れや必要な書類が把握でき、教える時間を最小限に抑えられます。応援を頼む相手が社内の別部署でも、外部の一時スタッフでも、この効果は変わりません。
テンプレートに欠かせない5つの要素
開始・終了、作業ステップ、分岐、担当者、書類・システムの5つがあれば、どの業務のフローでも図にできます。
テンプレートに欠かせない5つの要素
1つ目は、開始と終了を示す記号です。 どこから業務が始まり、どこで完了とみなすかを明確にします。
2つ目は、作業ステップです。 「請求書を受け取る」「金額を確認する」のように、1つの動作を1つの箱にまとめます。
3つ目は、分岐(判断)です。 「承認された場合」「差し戻された場合」のように、条件によって流れが変わる箇所をひし形の記号で表します。
4つ目は、担当者・部署です。 誰の作業かを列またはレーンで分けると、部署をまたぐ業務でも流れが追いやすくなります。
5つ目は、書類・システムです。 請求書や会計システムなど、その工程で使うモノを明記すると、引き継ぎ資料としても使えます。地味だが効く一手間。
この5要素の記号は、JIS X 0121(情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号)で標準化されています 。社内共通のルールとして使う分には自己流の記号でも問題ありませんが、迷ったときはこの規格に沿うと誰が見ても同じ意味に読めます。規格の全項目を覚える必要はなく、5要素の記号だけ押さえれば十分です。
【業務別】経理の流れをフローチャートにしたテンプレート4選
記帳、支払い、月次決算、給与計算の4つは、テンプレート化の効果が特に出やすい業務です。
実際の進め方は経理の業務フローチャートの書き方 でも扱っています。
業務
フローの主なステップ
テンプレート化の効果
記帳
証憑受領→仕訳入力→上長確認→保存
入力漏れと二重仕訳の防止
支払い
請求書受領→内容確認→承認→振込→記録
承認経路の明確化
月次決算
締め処理→残高確認→試算表作成→報告
締め日までの遅れの可視化
給与計算
勤怠集計→計算→控除確認→振込→明細発行
計算ミスの早期発見
記帳のテンプレートは、証憑を受け取ってから保存するまでの流れを1本の線で表すだけで完成します。支払いのテンプレートは、承認者が複数いる会社ほど分岐が増えるため、誰の承認でストップしているかが図で一目に分かります。
月次決算のテンプレートは、経理の業務フロー見直し3ステップ|属人化と遅延を防ぐ で扱った「乱れる原因」の特定にも使えます。給与計算は関わる人数が多いため、テンプレートの担当者レーンを部署単位で分けると、確認漏れを防ぎやすくなります。
4つの業務に共通するのは、承認や確認が入る箇所ほどトラブルが起きやすいという点です。テンプレートの分岐部分を丁寧に描くと、どこで止まっているかをすぐに特定できるようになります。
業務ごとにテンプレートを分けて作ることも、忘れずに実践してください。 1枚の図に複数業務を詰め込むと、線が交差して読みにくくなり、かえって共有の妨げになります。まずは最も質問が多い業務から、1業務1テンプレートで着手するのが実践的な進め方です。
テンプレートの使い方3ステップ
現状の作業を書き出し、テンプレートに当てはめ、運用しながら直すという3ステップで使いこなせます。
テンプレートの使い方3ステップ
ステップ1: 現状の作業を書き出す
まず、対象業務で実際に行っている作業を、順番を気にせず箇条書きで書き出します。担当者に直接聞き取ると、マニュアルに載っていない作業が見つかることがあります。
ステップ2: テンプレートに当てはめる
書き出した作業を、開始→作業ステップ→分岐→終了の順にテンプレートへ配置します。このとき、細部を作り込みすぎず、大まかな流れを先に完成させることが大切です。
ステップ3: 運用しながら微修正する
完成した図を実際の業務で使い、現実と合わない箇所を随時直します。一度で完璧な図を目指すより、運用しながら育てるほうが、結果的に早く実態に合った図になります。
テンプレート作成に使えるツール比較
Excel・PowerPoint・専用ツールにはそれぞれ向き不向きがあり、修正頻度と共有範囲で選び方が変わります。
ツール
向いている場面
注意点
Excel
表とセットで管理したい場合
図形の位置がずれやすい
PowerPoint
見た目を整えて配布したい場合
修正のたびに手直しが増える
専用ツール(フローチャート作成サービス)
複数人で頻繁に更新する場合
導入・学習にコストがかかる
社内での共有だけなら、慣れているExcelやPowerPointで十分なケースがほとんどです。複数部署が同時に編集する、更新頻度が高いといった場合は、専用ツールへの切り替えを検討する価値があります。
私も、Excelで作った業務フロー図の図形が印刷のたびにずれてしまい、作り直した経験があります。セル幅を先に固定してから図形を配置すると、こうしたズレを防ぎやすくなります。
ツールを選ぶ際は、誰が更新するかも合わせて決めておくと運用が安定します。担当者が変わるたびにファイルの置き場所が分からなくなる、というのはテンプレート運用でよくあるつまずきです。共有フォルダの決まった場所に最新版だけを置き、古い版はサブフォルダへ移す運用にすると、迷いが減ります。
無料のテンプレートを配布しているサービスも複数ありますが、そのまま使うより、自社の承認者数や部署構成に合わせて箱の数を調整したほうが実務に合います。ひな形はあくまで出発点として扱い、最終的には自社の業務に合わせて手を加えることを前提にしてください。
テンプレート活用でやってはいけないNG例
完成度にこだわりすぎることと、作って終わりにすることの2つが典型的な失敗です。
テンプレート活用のNGとOK
注意: 全業務を一度に図にしない 経理業務すべてを一気に図にしようとすると、途中で挫折しやすくなります。まずは記帳か支払いなど、範囲を1つに絞って着手してください。
完成度にこだわりすぎるのも避けたいNG対応です。細部の表現を悩んでいる間に、そもそもの現状把握が止まってしまいます。8割の完成度で運用を始め、実際の業務と照らし合わせながら直すほうが、実態に合った図に早く近づきます。
専門記号を使いすぎることも、社内での共有を妨げる原因になります。JIS規格の記号を厳密に使い分けるより、担当者全員が読める表記に統一するほうが、実務では役立ちます。大切なのは、正確さより伝わりやすさ。
作った図を誰も更新しなくなるのも、よくある失敗のひとつです。運用ルールが変わった時点で図も直す担当を決めておかないと、数か月後には実態と違う「使えない図」になってしまいます。更新のタイミングを月次決算や年次の見直しに合わせておくと、忘れずに直せます。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料) からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
経理BPOとテンプレート活用の関係
委託先へ業務を引き継ぐ際、現状のフローを図にしておくと、委託範囲の認識違いを防げます。
経理業務の一部または全部を外部に委託する場合、口頭での説明だけでは、委託先との間で作業範囲の認識がずれることがあります。テンプレートで作成したフロー図があれば、どこまでを委託し、どこを社内に残すかを図の上で線引きできます。
弊社が経理BPOの相談を受ける際も、現状の業務フローが図として残っているかどうかで、初回の打ち合わせにかかる時間が大きく変わります。図がある会社は委託範囲の確定が早く、図がない会社は聞き取りだけで1回分の打ち合わせが終わることも珍しくありません。 契約前にテンプレートで現状を整理しておくだけで、導入までの期間を短縮できます。
引き継ぎ資料としての活用方法は、経理引き継ぎ資料とは?必須6点と作り方3ステップ でも詳しく取り上げています。
属人化した業務をテンプレートで可視化する進め方は、経理の属人化を解消する5つの方法|原因とリスクも解説 を合わせて確認すると、対策の全体像がつかみやすくなります。
マニュアルとフロー図を両方整備したい場合は、経理マニュアルの作り方とは?属人化を防ぐ5つの手順 が参考になります。委託先の選定や費用感まで含めて相談したい方は、経理BPOの無料相談で状況を伝えていただくことも可能です。
よくある質問
経理業務フローテンプレートとは何ですか? 記帳や支払いなど経理業務の手順を、記号と矢印で図に示したひな形のことです。
テンプレートに必須の要素は何ですか? 開始・終了、作業ステップ、分岐、担当者、書類・システムの5つです。
ExcelとPowerPoint、どちらでテンプレートを作るべきですか? 修正のしやすさを優先するならExcel、見た目を整えるならPowerPointが向きます。
テンプレートを使う際の注意点はありますか? 完成度にこだわりすぎず、8割の完成度で運用しながら直すことです。
経理BPOを使う場合もテンプレートは必要ですか? 委託範囲を正確に伝えるために、現状のフローを図にしておくと引き継ぎがスムーズです。
フローチャートの記号に決まりはありますか? JIS X 0121で開始・終了・処理・判断などの記号が標準化されています。
まとめ: テンプレートは「当てはめて壊す」が使いこなしのコツ
経理業務フローテンプレートは、開始・終了・作業ステップ・分岐・担当者・書類の5要素さえ押さえれば、記帳や支払いなど幅広い業務に応用できます。 完成度にこだわらず、8割の状態で運用を始め、実態に合わせて直し続けることが使いこなしの近道です。
自社のどの業務から図にすべきか迷う場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。まずは、社内で最も質問が集中している業務から書き出してみてください。書き出すだけでも、次に何を直せばよいかが自然と見えてきます。