経理の業務フロー見直しとは、記帳から支払い・月次決算までの一連の手順を洗い出して可視化し、無駄な作業や属人化を解消する取り組みのことです。見直しを怠ると、担当者が変わるたびに同じ確認をやり直したり、決算が特定の担当者頼みで遅れたりします。本記事では、業務フローが乱れる4つの原因、放置する3つのリスク、見直しの3ステップ、フロー図の書き方、経理BPOとの関係、やってはいけないNG例まで解説します。
この記事は、経理の業務フローが整理されておらず、月次決算の遅れや引き継ぎのしづらさに悩む中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理の業務フローが乱れる4つの原因
- 業務フロー見直しの3ステップ
- フロー図の書き方と使うツール
- 見直しでやってはいけないNG例
経理の業務フロー見直しとは?対象になる業務と必要なタイミング
経理の業務フロー見直しとは、記帳から支払いまでの手順を可視化し、無駄や属人化を解消する取り組みです。
あわせて月次決算とは?初心者向けの基本と進め方5ステップもご覧ください。
経理の業務フロー見直しとは、記帳・請求書処理・支払い・月次決算といった一連の作業を洗い出し、誰が・いつ・どの順番で行っているかを整理し直すことです。目的は作業を減らすことではなく、担当者が変わっても同じ手順で回る状態をつくることにあります。
対象になる業務は、経理の工程ごとに着眼点が変わります。
| 業務フェーズ |
主な作業 |
見直しの着眼点 |
| 記帳 |
仕訳入力、証憑の整理 |
入力の二重化、確認漏れ |
| 支払い |
請求書受領、承認、振込 |
承認経路の複雑さ、締め日超過 |
| 月次決算 |
試算表作成、残高確認 |
締め作業の集中、確認の属人化 |
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。手順が整理されないまま業務量だけが増えている会社が目立ちます。
見直しが必要になるタイミングは、担当者の増員や退職、取引量の増加、決算の遅れが常態化したときです。「毎月なんとか終わらせている」状態が続いているなら、見直しのサインです。
見直しの範囲は、最初から経理業務全体に広げる必要はありません。記帳・支払い・月次決算のうち、最も時間がかかっている、あるいは特定の担当者しか対応できない業務を1つ選び、そこから着手すると負担が少なく済みます。全体を一度に変えようとすると、途中で優先順位が分からなくなり、見直し自体が止まってしまうことがあります。
経理の業務フローが乱れる4つの原因
経理の業務フローが乱れる原因は、手順の未文書化・複雑な承認経路・多い転記作業・属人的な進め方の4つです。
関連する内容として個人経営の経理のやり方|後回しにしない3つのコツも公開しています。
経理の業務フローが乱れる4つの原因
株式会社ミロク情報サービスのMJS税経システム研究所が2024年6月に経理担当者362名を対象に実施した「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」があります。仕事の悩みで最も多かった回答は「業務の属人化」で50.0%でした。次いで「業務の煩雑さ」が43.1%という結果です。手順が文書化されていないと、この2つの悩みが同時に積み上がっていきます。
第二に、承認経路が複雑なことです。誰が承認するか決まっていない、承認者が不在だと止まる、といった状態では、フロー自体に無駄な待ち時間が組み込まれてしまいます。
第三は、転記作業の多さです。ワークフロー総研が公表した「人手不足に悩むバックオフィス担当者に聞いた業務実態調査」によると、システム化を行った担当者のうち82.2%が業務負担の軽減を実感できていません。理由の60.8%は「システム連携ができておらずデータの二重入力が発生」でした。フローを整理せずにツールだけ導入すると、転記の手間はむしろ増えます。
第四は、属人的な進め方です。手順が担当者の頭の中にしかないと、フローの全体像を誰も説明できない状態になります。
4つの原因は互いに関係しています。手順が文書化されていないほど承認経路も曖昧になりやすく、結果として転記や確認の手間が個人の裁量に委ねられていきます。
業務フローを放置する3つのリスク
業務フローの見直しを先送りすると、決算の遅延・ミスの見落とし・引き継ぎ不能という3つのリスクが生じます。
近い論点を会社の経理のやり方|個人事業主と違う4つのポイントで扱っています。
第一のリスクは、決算の遅延です。手順が整理されていないと、月末月初に作業が集中し、承認待ちのボトルネックが決算日程を圧迫します。
第二は、ミスの見落としです。1人で処理から確認まで完結させるフローでは、誤りをチェックする仕組みがなく、決算直前まで問題が見つからないことがあります。
帝国データバンクが2026年2月20日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」(有効回答1万620社)では、正社員の人手不足を感じている企業が52.3%にのぼりました。人手が足りない状態ほど、確認工程を省いたフローになりがちです。修正のための時間が足りなければ、税理士への相談や申告のスケジュールにも影響します。
第三に、引き継ぎ不能があります。属人化が進んだ状態で引き継ぎが必要になると、対応がさらに難しくなります。詳しくは経理の属人化を解消する5つの方法|原因とリスクも解説で解説しています。
3つのリスクは連動します。決算の遅延を防ごうと確認を省くとミスが増え、ミスを1人で抱え込むほど引き継ぎは難しくなっていきます。
経理の業務フロー見直し3ステップ
経理の業務フロー見直しは、可視化・課題特定・再設計という3ステップで進めます。
あわせて記帳のやり方に迷うゆうちょ口座|送金と振込の見分け方もご覧ください。
実際の進め方は経理の業務フローチャートの書き方でも扱っています。
実際の進め方を先に押さえるなら、経理の業務フローテンプレート4選が参考になります。
初めて自分で経理を担う場合は、経理のやり方を初心者向けに整理した5ステップから見直すと、フローの土台を作りやすくなります。
経理の業務フロー見直し3ステップ
ステップ1: 現状の業務フローを可視化する
まず、今の手順をそのまま書き出します。担当者・作業内容・所要時間・承認者を、思い込みではなく実際の動きに沿って記録することが、次のステップの精度を左右します。
ステップ2: 課題(ボトルネック)を特定する
可視化したフローの中から、時間がかかっている工程や承認待ちが発生している箇所を特定します。転記が二重になっている、承認者が1人しかいない、といった箇所が典型的なボトルネックです。例えば「担当者→係長→部長→経理責任者」と4段階ある承認を2段階に減らすだけでも、支払いまでの日数は短縮できます。
ステップ3: フローを再設計し運用に落とし込む
特定した課題に対して、手順の順番を変える・承認を1段階減らす・ツールで自動化するといった対策を組み込み、新しいフローとして運用します。一度に全工程を変えず、影響の大きい1箇所から試すと、失敗しても原因を切り分けやすくなります。
再設計したフローは、実際に運用する担当者に事前共有してから切り替えてください。書類上だけで完結させると、現場の実態と合わない手順になり、結局は旧来のやり方に戻ってしまいます。
3ステップは1回で終わらせるものではありません。運用後に決算までの日数や修正件数を確認し、効果が出ていなければステップ2に戻って再設計します。一度で完成させようとせず、小さく試して直す前提で進めるほうが、結果的に定着しやすくなります。
業務フロー図の書き方|可視化のコツと使うツール
業務フロー図は、担当者・作業・承認の流れを1枚の図にまとめると、課題が一目で分かります。
関連する内容として経理の仕事を効率化する9つの方法も公開しています。
| ツール |
特徴 |
向いている場面 |
| Excel・PowerPoint |
手軽に作れる、共有しやすい |
まず現状を可視化したいとき |
| フローチャートツール(Miro・Lucidchart・draw.ioなど) |
複数人で同時編集できる |
部署をまたぐフローの整理 |
| クラウド会計の操作ログ |
実際の処理順序を確認できる |
現状把握の裏付け |
フロー図を書くコツは、記号の意味を統一することです。四角は作業、ひし形は判断・承認というように図形の意味を固定すると、誰が見ても同じように読めるようになります。部署をまたぐ場合は、担当部署ごとに色を分けると、どこで作業が引き継がれているかが見えやすくなります。
図には、作業の担当者名だけでなく、承認までの目安日数も書き添えておくとよいでしょう。日数まで可視化しておくと、どの工程がボトルネックかを次回の見直し時にすぐ確認できます。
支払業務など個別の業務フローをさらに詳しく見直したい場合は、支払業務の効率化とは?基本4ステップと方法の比較も参考になります。フロー図は一度作って終わりではなく、手順が変わるたびに更新する前提で運用してください。
業務フロー見直しとアウトソーシング(経理BPO)の関係
経理BPOへの委託は、業務フローの標準化を伴うため、見直しの選択肢のひとつになります。
近い論点を経理BPO導入の流れ|6ステップと期間の目安で扱っています。
経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説で紹介した通り、委託先は業務範囲や手順をあらかじめ明文化したうえで運用します。社内でフローを再設計する時間がない場合、委託先の標準的なフローに合わせる形で整理が進むこともあります。
費用感については、経理アウトソーシングの費用相場【2026年】内訳と抑え方で解説した通り、委託範囲によって幅があります。全面委託ではなく、承認待ちが多い支払い業務だけを切り出すといった部分委託から始める方法もあります。
自社でフローを可視化してから委託先を選ぶと、引き継ぎの精度も上がります。現状のフロー図を持参して相談すると、委託先も業務範囲を判断しやすくなります。自社のどの工程から切り出せるか分からない場合は、経理BPOの無料相談で相談することもできます。
業務フロー見直しでやってはいけないNG例
業務フロー見直しは、ツール導入から始めたり全部署を一度に変えたりすると失敗します。
業務フロー見直しのNGとOK
注意: 可視化を飛ばしてツール導入から始めない
現状のフローを図にしないままツールを導入すると、既存の無駄がそのままシステムに移るだけになります。まず紙やExcelでもいいので、今の手順を書き出してから検討してください。
現行フローを口頭の申し送りだけで済ませるのもNG対応です。話した内容は時間の経過とともに忘れられていくため、図として残す必要があります。
私たちが中小企業の経理支援に携わる中でも、全部署を一度に変えようとして途中で止まったという相談を受けることがあります。対象範囲を1つの業務に絞り、運用後に効果を確認してから次に広げてください。
部署をまたいだ業務改善の進め方は、バックオフィス業務改善の4ステップ|進まない原因と対策でも解説しています。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
経理の業務フロー見直しとは何ですか?
記帳や支払いなど経理業務の手順を可視化し、無駄や属人化を解消する取り組みです。
業務フローが乱れる主な原因は何ですか?
手順が文書化されておらず、承認経路や転記作業が複雑になっていることが主な原因です。
業務フローの見直しはどこから始めればいいですか?
まず現状の業務を洗い出し、担当者と手順を1枚の図に可視化することから始めます。
フロー見直しの効果はどう確認すればいいですか?
決算までの日数や修正件数など、見直し前後の数値を比較して確認します。
業務フロー見直しに経理BPOは使えますか?
委託先が業務フローを標準化して運用するため、見直しの選択肢のひとつになります。
フロー図は専用ツールを使わないと作れませんか?
手書きやExcelでも作成できますが、共有のしやすさから専用ツールが向いています。
まとめ: 経理の業務フロー見直しは「可視化」から始まる
経理の業務フロー見直しは、いきなりツールを導入するのではなく、今の手順を図にして可視化することから始めるのが近道です。原因を4つに分解し、可視化・課題特定・再設計という3ステップで進めれば、担当者が変わっても止まらないフローに近づけます。
MJSの調査でも、経理担当者の50.0%が属人化を悩みとして挙げています。フローが整理されないまま放置すれば決算の遅延やミスの見落としにつながります。見直しは一度で終わる作業ではなく、取引量の変化や制度改正に合わせて更新し続ける前提で取り組んでください。
まずは自社の経理業務のうち、承認や転記に時間がかかっている工程を1つ書き出すところから始めてください。自社だけで再設計が難しい場合は、経理BPOの無料相談で委託できる範囲を確認することもできます。