経理の内製と外注は、コスト・着手までの速さ・専門性・属人化リスク・繁忙期対応・セキュリティという6つの軸で比較すると、自社に合う体制が見えてきます。本記事では軸ごとの違いを数字とともに整理し、両方のいいとこ取りをするハイブリッド型の選択肢まで解説します。
この記事は、経理担当者の採用を続けるか外注に切り替えるか、具体的な違いを比較したうえで決めたい中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理の内製と外注、6つの軸での違い
- 採用コスト・外注費用の実際の目安
- 属人化リスクとセキュリティ面の違い
- 内製と外注を併用するハイブリッド型の考え方
経理の内製と外注の違いとは?(6つの軸で一覧比較)
経理の内製と外注の違いは、コスト・速さ・専門性・属人化リスク・繁忙期対応・セキュリティという6軸で整理すると明確になります。
内製は自社の正社員やパート社員が経理業務を担う体制、外注は経理BPOなど外部の専門会社に業務を委託する体制を指します。どちらか一方に絞る必要はなく、業務を切り分けて両方を組み合わせる会社も増えています。
経理の内製と外注 比較6つの軸
6つの軸を一覧にすると、次のようになります。
| 比較軸 |
内製 |
外注 |
| コスト |
給与・法定福利費が固定費になる |
業務量に応じた変動費にしやすい |
| 着手までの速さ |
採用〜入社まで数ヶ月 |
契約から数週間で稼働可能 |
| 専門性 |
担当者個人のスキルに依存 |
複数クライアントの知見を活用できる |
| 属人化リスク |
担当者退職で業務が止まりやすい |
チーム対応で引き継ぎしやすい |
| 繁忙期対応 |
繁忙期に残業が集中しやすい |
スポット対応で業務量を調整できる |
| セキュリティ |
社内で情報が完結する |
委託先の管理体制の確認が必要 |
私たちは会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を通じて、内製と外注の両方で経理を回している中小企業を数多く見てきました。どちらが優れているという話ではなく、自社の状況によって向き不向きが変わるというのが実感です。次の章から、軸ごとの違いを具体的な数字とともに見ていきます。
なお、自社が内製・外注のどちらに向いているかを5つの基準でチェックしたい場合は、経理外注の判断基準5つもあわせてご覧ください。
コストを比較:内製は固定費、外注は業務量で変動する
内製のコストは給与と法定福利費が中心の固定費、外注のコストは業務量に応じて調整できる変動費になりやすい違いがあります。
関連する内容として経理の求人が集まらない3つの原因|外注との費用比較も公開しています。
求人ボックスが2026年7月に掲載求人情報から算出した経理職の給料データによると、経理職の平均年収は約432万円でした。ここに社会保険料等の法定福利費(給与の15%前後が目安)が加わり、実際の負担額は年収以上になります。
一方、経理アウトソーシングの費用相場は業務範囲によって幅があります。記帳のみなら月5,000円〜2万円程度、経理業務全般では月10万〜30万円程度が目安です。内訳や費用を左右する要因は、経理アウトソーシングの費用相場【2026年】で詳しく解説しています。
| 費目 |
内製(正社員1名) |
外注(記帳〜一般業務) |
| 目安コスト |
年間約500万円前後(給与+法定福利費) |
月5,000円〜30万円(業務範囲で変動) |
| コストの性質 |
雇用契約が続く限り固定 |
契約内容の見直しで調整可能 |
| 閑散期の扱い |
業務が少なくても給与は変わらない |
業務量に応じた費用にしやすい |
業務量が多く担当者が定着している会社は内製のほうが割安になりやすく、業務量が少ない、または繁閑差が大きい会社は外注のほうが無駄なコストを抑えやすい傾向。自社の業務量がどちらに近いか、まず確認してみてください。
着手までの速さを比較:内製は採用に数ヶ月、外注は数週間で稼働
内製は求人から入社まで数ヶ月かかるのに対し、外注は契約から数週間で業務を開始できる違いがあります。
中途採用のリードタイムに関する採用リードタイムの調査では、応募から内定までは1ヶ月以内が中心とされています。ただし在職中の候補者の場合、退職手続きや引き継ぎを経て実際に入社するまでは2〜3ヶ月かかるのが一般的です。
「来月から経理担当者が必要」という状況では、内製の採用は間に合わないことがNGサインです。求人を出してから実際に業務が回り始めるまでのタイムラグを見込んでおく必要があります。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、会計事務従事者の有効求人倍率は一般事務従事者より高く、応募自体が集まりにくい職種とされています。求人を出しても応募が来ない期間が長引くほど、内製の着手はさらに遅れます。
外注の場合、経理BPOの委託先と業務範囲・使用ツールをすり合わせれば、最短で契約から数週間ほどで稼働できる会社が多いのが実情です。急な担当者の退職・休職といった緊急時には、この着手スピードの差が体制の安定に直結します。
退職の申し出から実際に引き継ぎが必要になるまでの猶予は、想像より短いことがほとんどです。「まだ大丈夫」と先延ばしにした結果、引き継ぎが間に合わなかったという相談も少なくありません。
専門性・対応力を比較:外注は複数社の知見、内製は自己研鑽が頼り
内製の専門性は担当者個人の努力に委ねられがちですが、外注は複数のクライアントを担当する中で蓄積された知見を活用できます。
インボイス制度や電子帳簿保存法のように、経理関連の制度は数年単位で改正が続いています。内製の担当者1人だけでこれらすべてを常に最新の状態でキャッチアップし続けるのは、簡単ではありません。制度改正への対応力は、担当者の学習意欲と時間の確保次第というのが内製の実情です。
外注先の経理BPO会社は複数のクライアントの経理業務を横断的に扱うため、制度改正への対応や業界特有の処理パターンを、契約先ごとに個別対応する形で蓄積しています。属人化しやすい判断も、チームでの相互チェックを経て運用されることが多く、ミスの発見にもつながりやすい体制です。
一方で、外注先がすべての業界慣習を最初から把握しているとは限りません。契約初期は自社の業務フローや商習慣を伝える工程が必要になる点は、内製にはない外注特有の手間です。
私たちが支援に関わった会社の中には、担当者の異動をきっかけに一部業務を外注へ切り替え、制度対応の遅れが解消したケースもありました。知見の蓄積は、外注ならではの強みといえます。
属人化リスクを比較:内製は個人依存、外注はチーム対応
内製で担当者が1人だけの場合、退職や休職が起きた瞬間に業務が止まるリスクを抱えます。
注意: 属人化を放置しない
担当者が1人しかいない体制で業務マニュアルも整備されていない場合はNGです。退職の意思表示から実際の退職までは、引き継ぎに十分な期間を確保できないことが少なくありません。
経理の属人化そのものへの対処法は、経理の属人化を解消する5つの方法で詳しく解説しています。内製を続ける場合でも、マニュアル整備だけは並行して進めておくと安心です。
外注の場合は、委託先の企業がチームで業務を担当する形が一般的です。担当者の異動や退職があっても、契約先である会社としての引き継ぎ体制が保たれるため、内製に比べて業務停止のリスクは低く抑えられます。
繁忙期対応を比較:内製は残業集中、外注はスポットで伸縮できる
繁忙期だけ業務が集中する会社は、通年で正社員を雇う内製よりも、必要な時期だけ依頼できる外注のほうが体制を柔軟に保てます。
決算期や年末調整の時期に業務量が跳ね上がり、それ以外の月は落ち着いているという会社は珍しくありません。内製で対応する場合、繁忙期の業務量に合わせて人員を確保すると、閑散期には手が余ってしまいます。
| 業務量の波 |
内製で起きやすいこと |
外注で対応しやすいこと |
| 繁忙期と閑散期の差が大きい |
繁忙期に残業が集中する |
スポット契約で業務量を調整できる |
| 年間を通じて業務量が安定 |
担当者1人で無理なく回せる |
月額固定契約でも無駄が出にくい |
決算期に業務が集中しやすい会社は、月次決算の早期化とは?もあわせて確認すると、外注に頼らず解決できる部分も見えてきます。
セキュリティ・情報管理を比較:内製は社内完結、外注は委託先の体制確認が必須
内製は情報が社内で完結する一方、外注は委託先の情報管理体制を事前に確認する必要があります。
関連する内容として経理代行のセキュリティも公開しています。
社内で経理業務を完結させる内製は、情報の持ち出しや外部への漏えい経路が限定される点で管理しやすい面があります。ただし、社内での不正やヒューマンエラーのリスクがゼロになるわけではありません。
外注を検討する場合は、委託先とのNDA(秘密保持契約)締結、アクセス権限の設定、ISMS認証など第三者機関による認証の有無を確認してください。確認を怠って契約すると、情報漏洩の責任の所在があいまいなまま業務を任せることになります。契約前のチェックを省略しないことが、外注のセキュリティ対策の出発点です。
私も、経理BPOの委託先を選ぶ相談を受ける際は、価格や対応範囲だけでなく情報管理の体制を必ず確認するようお伝えしています。委託先の選び方は、経理代行の選び方5選でも比較軸を整理しています。
社内向けの情報管理規程を整備している会社であれば、外注先にも同水準のルールを求めやすくなります。規程が曖昧なまま契約すると、責任の切り分けで揉める原因にもなりかねません。
ハイブリッド型(内製×外注の併用)という第3の選択肢
内製と外注は二者択一ではなく、定型業務は外注し、判断が必要な業務だけ内製に残すハイブリッド型という選択肢もあります。
ハイブリッド型を検討する3ステップ
第一に、記帳や請求書処理などの定型業務を洗い出します。第二に、そのうち外注できる範囲を決めます。第三に、資金繰りの判断や税理士との連携など、社内に残すべき業務を切り分けます。
経理の丸投げできる範囲とできない範囲については、経理の丸投げできる範囲とできない範囲で境界線を解説しています。ハイブリッド型を検討する際にも参考になります。
ハイブリッド型は、内製の担当者を無理に増員せずに繁忙期の業務量だけ外部に逃がせる点がメリットです。採用が難航している会社ほど、まず一部業務だけ外注してみるという進め方が現実的な選択肢になります。
自社に合う切り分け方が分からない場合は、経理BPOの無料相談で業務の棚卸しから一緒に整理することもできます。
よくある質問
経理の内製と外注、コストが安いのはどちらですか?
業務量が少なければ外注、業務量が多く担当者が定着していれば内製が安くなる傾向です。
経理職を中途採用すると採用コストはどのくらいかかりますか?
人材紹介を使う場合、想定年収の30〜35%が手数料の相場とされています。
経理の外注は内製よりセキュリティ面で不安がありますか?
委託先のNDA締結や情報管理体制を契約前に確認すれば、リスクは管理できます。
経理を一部だけ外注するハイブリッド型は可能ですか?
可能です。定型業務を外注し、意思決定に関わる業務だけ内製に残す形が一般的です。
内製と外注のどちらが自社に向くか判断する基準はありますか?
業務量・属人化リスク・採用難易度など5つの判断基準で確認する方法があります。
経理を外注すると社内の経理担当者はいなくなりますか?
必ずしもそうではなく、確認や意思決定の役割だけ社内に残すケースが一般的です。
どこから手をつけるべきかの整理は、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
まとめ: 6つの軸で比較すれば、内製と外注のどちらが向くかが見えてくる
経理の内製と外注は、コスト・速さ・専門性・属人化リスク・繁忙期対応・セキュリティという6つの軸で比較すると、自社に合う体制が具体的に見えてきます。どちらか一方を選ぶ必要はなく、業務を切り分けて併用するハイブリッド型も現実的な選択肢です。
まずは自社の経理業務を棚卸しし、どの業務にどれくらい時間がかかっているかを数値で把握するところから始めてください。判断に迷う場合は、経理BPOの無料相談で状況を整理することもできます。
内製と外注のどちらか一方に固定しない柔軟な姿勢が、長期的にはコストとリスクの両方を抑えることにつながります。
制度改正や採用市場の状況は年単位で変わるため、一度決めた体制も定期的に見直してください。半年〜1年に一度の棚卸しが、無理のない経理体制を保つ近道。判断材料は、感覚ではなく数字で残しておくことです。