個人経営の経理のやり方は、経理の時間を予定化する・記録の入口を1つにする・月次で数字を確認する日を作るという、3つのコツを先に決めることです。経営者本人が現場の仕事と経理を兼任する個人経営では、この3つを決めないまま始めると、繁忙期に経理だけが後回しになりがちです。
本記事では、3つのコツの具体的な作り方、個人経営でよくある失敗パターン、自分で回す限界を感じたときに外注へ切り替える判断基準まで解説します。
この記事は、従業員を雇わず、または少人数で自分が経営と実務の両方を担う個人経営者向けです。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
- 個人経営の経理を一人で回す3つのコツ
- 個人経営と個人事業主・会社経営の違い
- 個人経営の経理でよくある失敗パターン
- 自分で回す限界と外注に切り替える判断基準
個人経営の経理のやり方は「3つのコツ」を先に決めると回しやすい
個人経営の経理は、コツを3つ先に決めておくと、現場の仕事が忙しくなっても崩れにくくなります。
実際の進め方については、個人店の経理のやり方にまとめています。
個人経営の経理を回す3つのコツ
個人経営の経理を回す3つのコツとは、経理をする時間・記録の入口・数字を見る日という、後回しにされやすい3点を先に固定しておくことです。
近い論点を自営業の経理のやり方でも扱っています。口座やツールなど実務の土台を整える部分は、あわせて参考にしてください。
当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が経理業務のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。個人経営でつまずく多くのケースは、経理を「手が空いたときにやること」にしてしまっている点が原因です。
| コツ |
決めること |
決めないとどうなるか |
| 時間 |
経理をする曜日・時間帯を固定する |
現場優先で経理が後回しになる |
| 入口 |
記録を集める場所を1つにする |
レシートや明細が分散して漏れる |
| 確認日 |
月次で数字を見る日を決める |
資金繰りの異変に気づけない |
この3行を先に決めるだけで、経理を後回しにしにくくなります。次の章では、まず個人経営という言葉の範囲を整理し、そのあとで3つのコツの具体的な作り方を見ていきます。
個人経営とは何か?個人事業主・会社経営との違い
個人経営とは、経営者本人が経営判断と現場の実務の両方を一人で担う経営の形のことです。
あわせて飲食店の経理のやり方もご覧ください。
個人経営とは、税務上の届出区分ではなく、経営者本人が意思決定から実務までを一人で担っている経営スタイルを指す言葉です。個人事業主として届け出ていても、法人化していても使われます。
個人経営と会社経営の経理の違い
個人事業主は、税務署に開業届を出した人を指す税務上の区分です。一方で個人経営は、届出の種類ではなく「誰が実務を担っているか」という経営の実態を表す言葉です。そのため、法人化していても経営者が一人で経理まで兼任していれば、個人経営という状態は続きます。
会社経営との一番の違いは、経理を分担できる相手がいるかどうかです。会社では経理担当者に業務を引き継げますが、個人経営では経営者本人が判断基準を作らない限り、誰も代わりに決めてくれません。この違いが、個人経営の経理を難しくしている根本の理由です。
個人経営という言葉は、飲食店・美容室・工務店のように、店舗や現場を経営者本人が切り盛りしている業種で特によく使われます。従業員が数名いても、経理まで含めた最終判断を経営者本人が担っていれば、実態としては個人経営に含まれます。規模の大小よりも「誰が経理の最終判断をしているか」で考えると、自分がどちらに当てはまるかが整理しやすくなります。
個人経営で経理が後回しになる3つの理由
個人経営で経理が後回しになる典型は、現場優先、境界がない、判断基準がないという3つの理由です。
1つ目は、現場の仕事が常に経理より優先されることです。接客や施工など、目の前の仕事は待ってくれませんが、経理は締切まで先送りできてしまいます。2つ目は、仕事の時間とプライベートの時間の境界が曖昧なことです。経理をする時間をあらかじめ区切っていないと、結局どちらの時間にも組み込まれません。
3つ目は、経費や記録の判断基準を決めていないことです。私も経理BPOの相談を受ける中で、判断基準がないまま数か月分の領収書をため込んでしまった個人経営者に何度も出会ってきました。基準を決めていないと、1件ずつ悩む時間がそのまま先送りの理由になります。
3つの理由に共通するのは、経理を「空いた時間にやるもの」として扱っていること。次の章から、この3つの理由に対応する具体的なコツを順番に見ていきます。
コツ1: 経理の時間を先に「予定化」する
コツの1つ目は、経理をする曜日と時間帯を、現場の仕事と同じようにあらかじめ予定に入れておくことです。
「手が空いたら経理をやる」という決め方では、現場が忙しい個人経営ほど手が空く瞬間が来ません。予約や接客と同じ扱いで、経理の時間をカレンダーに先に固定してしまう方が確実です。週1回、決まった曜日に30分だけ確保するだけでも、記録が数か月分たまる事態は避けられます。
予定化するときのコツは、繁忙期の前後にあえて時間を厚めに取っておくことです。繁忙期にまとめて処理しようとすると、記憶が薄れて仕訳を誤りやすくなります。繁忙期の直前に前月分を片付けておけば、繁忙期そのものは現場の仕事に集中できます。
すでに数か月分の記録がたまってしまっている場合も、過去分をすべて完璧に遡ろうとする必要はありません。直近1〜2か月分から手を付け、それ以前は概算でまとめて整理するといった割り切りも実務上は有効です。今日から新しい予定を守ることを優先してください。
コツ2: 記録の入口を1つに絞る
コツの2つ目は、レシート・請求書・通帳の記録を集める場所を1つに絞り、複数の場所に分散させないことです。
注意: レシートと請求書を別々の場所で管理するのはNG
財布・引き出し・メールの3か所に記録が分散すると、月次で数字を確認するときに集める作業だけで時間がかかります。記録は必ず1つの箱・1つのアプリに集約してください。
紙のレシートは1つの箱にまとめて入れる、請求書はメールの1つのフォルダに集める、というように、種類ごとに「置き場所」を1つ決めておきます。スマートフォンで撮影してクラウド会計のアプリに取り込む方法も、入口を1つにする有効な手段です。入口が1つに決まっていれば、予定化した経理の時間に集める作業をしなくて済みます。
事業用の口座とプライベート用の口座を分けておくことも、記録の入口を絞るうえで役立ちます。口座を分ける法律上の義務はありませんが、同じ口座に事業と生活のお金が混ざると、通帳の記録だけでは事業の数字を把握できません。
個人事業主としての記帳の基本的な進め方は、個人事業主の経理のやり方でも解説しています。
コツ3: 月次で「数字を見るだけの日」を作る
コツの3つ目は、売上や経費の記帳が終わっているかにかかわらず、毎月1回「数字を見るだけの日」を作ることです。
記帳が完璧に終わっていなくても、通帳の残高や大まかな入出金を月に1回眺めるだけで、資金繰りの異変には気づけます。「記帳が終わってから数字を見る」という順番にしてしまうと、記帳が遅れた月は数字の確認自体が消えてしまいます。
数字を見る日は、繁忙期の前後を避けて設定すると続けやすくなります。従業員を雇う会社の経理であれば、担当者が月次の締めを担当しますが、個人経営では経営者自身がこの役割を兼ねる必要があります。複式簿記が前提になる会社経理との違いは、会社の経理のやり方|個人事業主と違う4つのポイントで詳しく解説しています。
個人経営の経理でよくある失敗と対策
個人経営の経理で崩れやすい典型は、経理が止まる、お金が混ざる、書類を探し始めることの3つです。
経理が回っているサインと崩れているサインの比較
繁忙期に経理が止まる原因の多くは、経理の時間を予定化していないことです。事業と生活のお金が混ざる原因は、口座や記録の入口を分けていないことです。確定申告直前に書類を探し始めるのは、月次で数字を見る日を作っていないことの結果として起きます。
家事按分とは、自宅家賃や電気代のように事業と生活の両方に使う費用を、業務で使った割合分だけ必要経費に計上する処理のことです。
国税庁の所得税基本通達45-2では、業務の遂行上必要な部分が支出全体の50%を超える場合、その全体を必要経費にできるとされています。50%以下であっても、必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分を必要経費に算入して差し支えないとされています。この基準を先に決めておかないと、確定申告の直前に按分の根拠を一から考え直すことになります。
帳簿や書類の保存義務も、失敗しやすいポイントです。国税庁の個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存についてでは、2014年1月の改正により、白色申告者にも記帳と帳簿・書類の保存義務が課されているとされています。帳簿は原則7年、請求書や領収書などの書類は5年の保存が必要です。「白色申告だから記帳は不要」という思い込みが、あとから慌てる原因になりがちです。
自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。
自分で回す限界のサインと外注に切り替える判断基準
自分で回す限界のサインは、月次確認が数か月止まり、本業の時間を圧迫し始めた状態です。
関連する内容として経理の外注と丸投げの違いも公開しています。
外注を検討する3ステップ
外注を検討するかどうかは、次の3ステップで判断すると迷いにくくなります。まず経理に使っている作業時間を1週間分でよいので計測します。次に月次確認が何か月分滞っているかを数えます。最後に、記帳・月次確認・申告準備のうち、どの業務から任せるかを1つだけ選びます。
私たちが経理BPOの相談を受ける中でも、繁忙期の飲食店オーナーが月次確認を後回しにし続け、半年分の数字が分からなくなってから相談に来られるケースを何度も見てきました。本業を圧迫し始める前に動くほうが、結果的に整理にかかる手間は小さく済みます。
外注する範囲は、経理のすべてを一度に任せる必要はありません。記帳だけを依頼し、数字を見る日は自分で続けるといった、部分的な組み合わせ方も実用的です。経理外注の判断基準をさらに細かく確認したい場合は、経理外注の判断基準5つも参考にしてください。
| 状態 |
自分で続ける目安 |
外注を検討する目安 |
| 月次確認 |
その月のうちに終えられている |
数か月分たまっている |
| 記録の入口 |
1つに集約できている |
レシートや明細が分散している |
| 本業への影響 |
圧迫を感じていない |
経理のために現場の時間を削っている |
この表の右側に2つ以上当てはまる場合は、経理の一部だけでも外部に切り出すタイミングです。表の左側に留まっている間は、3つのコツを守りながら自分で回し続けても大きな問題は起きにくい状態といえます。
判断に迷う場合は、無理に一人で結論を出そうとせず、一度相談してみるだけでも進め方が整理しやすくなります。繁忙期が近づいてから慌てて探すより、余裕があるうちに外注先の候補を知っておく方が、いざというときの選択肢が広がります。
よくある質問
個人経営の経理のやり方は何から始めればいいですか?
まず経理をする時間を、カレンダーに先の予定として毎週入れることから始めてください。
個人経営と個人事業主はどう違いますか?
個人経営は経営の形を指す言葉で、個人事業主は税務署への届出上の区分を指す言葉です。
記録の入口を1つにするとはどういうことですか?
レシートや請求書、通帳の記録をすべて同じ場所に集約して管理する考え方のことです。
月次で数字を見る日はいつ作ればいいですか?
毎月同じ日を数字を見るだけの日として、繁忙期の前にカレンダーへ固定してください。
自分で経理を回す限界はどう見極めればいいですか?
月次確認が数か月止まり、本業の時間を圧迫し始めたら外注を検討すべき段階です。
経理を外注する場合、全部任せる必要がありますか?
全部任せる必要はなく、負担の大きい業務だけを切り出して依頼する方法もあります。
まとめ: 個人経営の経理は3つのコツを先に決めると一人でも回せる
個人経営の経理のやり方は、経理の時間を予定化する・記録の入口を1つにする・月次で数字を確認する日を作るという3つのコツを先に決めることが出発点です。現場の仕事が忙しくなる前に決めておけば、繁忙期でも経理だけが止まる事態を避けやすくなります。
経理が崩れるきっかけは、たいてい「手が空いたらやる」という後回しの積み重ね。まずは経理をする時間をカレンダーに入れることから試してみてください。
月次確認が数か月止まり、本業の時間を圧迫し始めたら、無理に一人で抱え込む必要はありません。経理BPOの無料相談で、自分に合う進め方を一緒に整理することもできます。
3つのコツのうち、まだ決めていないものがあるなら、そこから1つずつ着手してみてください。全部を一度に整えようとせず、優先度の高いものから手を付けることが、無理なく続けるいちばんの近道です。