インボイス制度に対応した無料の請求書テンプレートは、通常の売上の請求にはそのまま使えます。ただし、3つの場面では欄か計算式が足りません。返品・値引きのとき、8%と10%が混ざるとき、免税事業者の外注先が使うときです。
3場面のどれかが自社にあるなら、使い始める前に型を直してください。どれも無いなら、無料テンプレートのままで足ります。
この記事は、無料の請求書テンプレートで請求書を作っている中小企業の経営者・経理担当者向けです。
※ 2026年10月時点の情報です。税制の数字は国税庁の各ページで最新を確かめてください。
この記事でわかること- インボイス対応の無料テンプレートでも欄や式が足りない3場面
- 返品・値引き、税率の混在、免税事業者の外注先ごとの直し方
- 無料テンプレートを直して使う会社・切り替える会社の分かれ目
- 手元の型で今日試す3か所
インボイス対応の無料テンプレートで漏れるのはどの場面?
インボイス対応の無料テンプレートで漏れるのは、返品・値引き、税率の混在、免税事業者の3場面です。通常の売上を1件ずつ請求するだけなら、欄は足ります。
インボイス対応の請求書テンプレートとは、適格請求書の記載事項6つの欄を備えた請求書の型のことです。6つは、発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに合計した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額、受け取る側の名称です。記載事項は国税庁の
タックスアンサーNo.6625に載っています。
無料テンプレートの入手先と6つの欄の確かめ方は、無料の請求書テンプレートの入手先と確認6点にまとめています。この記事では、6つの欄がそろった型でも残る3場面に絞ります。
無料テンプレートで欄や式が足りない3場面
3場面で足りないものと直し方は、次の表のとおりです。
| 場面 |
型に足りないもの |
放置すると起きること |
直し方 |
| 返品・値引き |
返還インボイスの記載欄 |
相手が控除する税額を正しく減らせない |
値引きの行を持つ型を用意する(税込1万円未満は不要) |
| 8%と10%の混在 |
税率ごとに1回だけ丸める計算式 |
税額が記載事項の決まりに合わない |
明細ごとの丸めをやめ、税率ごとの合計で1回丸める |
| 免税事業者の外注先 |
登録番号を書かない運用 |
適格請求書と誤認される書類になる |
番号の欄を消した型を渡す |
当社が2023年4月から2026年9月までにインボイス制度への対応を支えた22社では、問題が3種類起きました。登録番号の記載が無い請求書の受け取りが約30件、経過措置の税率の計算ミスが約12件です(当社の支援実績、2026年10月時点)。
もう1つの免税事業者の外注先への対応の相談は、8社から受けました。件数と社数は単位が違うため、足さずに別々に読んでください。
22社で件数が最も多かった問題は、登録番号の無い請求書の受け取り(約30件)です。この問題は自社の型の問題ではなく、取引先の型の問題です。ただ、受け取る側の控除に響くため、番号の無い請求書が届いたら、発行元に直した版を頼んでください。自社の型も、一度は確かめてください。
当社は2026年10月に、1つのAI(Gemini)へ本記事の論点5問を聞き、答え5件を数えました。ほかの論点を聞いた答え4件のうち、『免税事業者』に触れたものは0件でした。
同じ調べでは、AIの答え5件のうち、専門家への相談に触れたものは0件でした。期間(◯か月・◯日など)に触れたものは1件、進め方の手順に触れたものも1件です。AIの答えだけでは免税事業者の扱いと相談先が抜けやすいため、国税庁の各ページで確かめてください。
返品・値引きのとき:返還インボイスの欄が無い
返品や値引きで売上を返すときは、通常の請求書とは別に返還インボイスの記載事項が要ります。多くの無料テンプレートは、この場面の欄を持っていません。
返還インボイスとは、適格返還請求書の通称です。国税庁のインボイスQ&Aは、登録事業者が返品や値引きをしたときの交付義務を説明しています。記載事項は次の5つです。
- 発行者の名称と登録番号
- 返品や値引きをした年月日と、元の売上の年月日
- 元の売上の内容
- 税率ごとに分けて合計した返還の金額
- 返還の金額に対する消費税額か、適用税率
ただし、返品・値引きの金額が税込1万円未満なら、返還インボイスを渡さなくてかまいません。1万円未満かどうかの判定の単位は、国税庁のQ&A問28に載っています。
返品・値引きが毎回1万円未満の会社なら、型に欄を足さずに済みます。1万円以上の値引きが出る取引先があるなら、値引きの行を持つ型を用意してください。
仮に月30枚の請求書のうち3枚に値引きが入るなら、毎月その3枚が1万円以上かを見る手間が加わります。値引き後の仕訳まで含めた処理は、請求書の仕訳で金額が合わない5つの場面で扱っています。
8%と10%が混ざるとき:明細ごとに丸める計算式
8%と10%が混ざる請求書では、消費税の端数を税率ごとに1回だけ丸める計算式が要ります。無料テンプレートの式が、この決まりに合っていないことがあります。
国税庁のタックスアンサーNo.6371は、端数処理を1枚の請求書につき税率ごとに1回と定めています。明細の行ごとに丸めて足す方法は認められません。切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを使うかは、会社が決めてかまいません。
税率が混ざる請求書の端数処理
無料の型には、明細の行ごとに税額を出す列を持つものがあります。この列を足して税額欄に入れる式は、決まりに反します。明細が多いほど、1回で丸めた額とのずれが出やすくなります。
行ごとの税額を合計して税額欄に書く式はNGです。行ごとの税額の列は消すか、参考の列として扱ってください。税率ごとの合計額に税率を掛け、1回だけ丸める式に書き換えます。
飲食料品を売る会社は、8%の取引が混ざるのでこの場面に当たります。8%の取引が無い会社は、この直しを飛ばしてかまいません。
免税事業者の外注先が無料テンプレートを使うとき
免税事業者の外注先には、登録番号の欄を消した請求書の型を使ってもらうのが安全です。無料の型の多くは、番号の欄が最初から入っています。
あわせて個人事業主の外注費の請求書で見落とす3点もご覧ください。
あわせてAI OCRの請求書読み取りで防げない誤り4つもご覧ください。
国税庁のタックスアンサーNo.6498は、適格請求書を出せるのは登録を受けた事業者だけとしています。
登録していない外注先に、番号欄つきの型を渡すのは避けてください登録していない人が、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を出すことは
消費税法で禁じられ、罰則もあります。根拠は国税庁税務大学校の
論叢にまとめられています。
インボイス制度に対応した22社で起きた問題には、免税事業者の外注先への対応の相談(8社)がありました(当社の支援実績、2026年10月時点)。受け取る側は、番号の無い請求書の消費税分を全額は控除できません。控除できる割合は経過措置で段階的に下がり、2031年9月30日で終わります(No.6498)。
自社で決めてよいことと、税理士に聞くことは分かれます。
- 自社で決めてよいことは、番号欄を消した型を外注先に渡すことです。届いた番号を国税庁の公表サイトで確かめることも含みます
- 税理士に聞くことは、外注費か給与かの区分と、価格を下げる交渉の進め方です
取引価格の見直しは、条件で分けて考えてください。外注先が代わりのきかない相手なら、価格は据え置いて続けてかまいません。
代わりが見つかる相手でも、価格を下げる前に、外注先と話し合って合意を取ります。合意なしの値下げは、トラブルになりやすいためです。
自社の損得は、外注費の消費税分に、No.6498に載る控除できる割合を掛けて出せます。控除できない分が、自社の負担の増える額です。値下げの根拠を税の面で説明する段になったら、税理士に聞いてください。
外注費の区分は、間違いが多い所です。建設業の会社3社の経理代行で、私たちが実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。業種が違っても、区分の誤りは起きます。2023年4月から2026年9月までに経理代行で担当した7社では、実際に直した仕訳の誤りが年間約90件ありました。最も多いのは外注費と給与の区分(約40件)です(当社の支援実績、2026年10月時点)。
外注先が書く請求書の項目は、外注費の請求書の書き方で確かめられます。受け取った後の仕訳は、外注費の請求書の仕訳で起きる誤り4つが参考になります。
無料テンプレートを直して使う会社・切り替える会社
無料テンプレートを直して使うか替えるかは、3場面(返品・値引き、税率の混在、免税事業者の外注先)の有無と、月の発行枚数で決めてください。型の良し悪しより、作る量と人数で分かれます。
関連する内容として請求書の記帳で間違えやすい計上日も公開しています。
2023年4月から2026年9月までに、当社は請求書の発行代行を18社、受け取り・支払処理の代行を25社で担当しました。1社あたり月20〜150枚、全体で月約1,800枚を扱っています(当社の支援実績、2026年10月時点)。
当社が担当する会社は、少ない会社でも月20枚あります。当社の判断では、月20枚が、自社で型を直して回すか外に出すかの目安です。
月20枚という目安は、損益や処理時間を測った値ではありません。当社の担当先の最小規模から置いた線なので、次の計算で自社の数字に置き換えてください。例えば、請求書の作成と確認に月10時間かかり、ソフトで半分になるなら、月5時間が空きます。ソフトの月額が、その5時間の人件費より低いなら、切り替えが得です。
| 自社の状況 |
選ぶ道 |
| 3場面がどれも無く、発行が月20枚未満 |
無料テンプレートのまま使う |
| 返品・値引きが毎回1万円未満で、ほかの2場面も無い |
型を直さず、今の型のまま使う |
| 3場面のどれかがあり、発行が月20枚未満 |
無料テンプレートの欄と式を直して使う |
| 発行が月20枚以上で、作る人が1人 |
直した型で続け、確認の時間が足りなければソフトを比べる |
| 発行が月20枚以上で、作る人が2人以上 |
請求書ソフトに替え、版を1か所にまとめる |
| 請求の後の入金確認や記帳まで手が回らない |
請求から記帳までを外に任せる |
上の表で自社の状況が2つ以上に当てはまるなら、表の下の行の道を先に選んでください。記帳まで手が回らない状態は、型を直しても変わらないためです。
請求書ソフトに替えるときは、次の4点を見てください。
- 返品・値引きの行から、返還インボイスを出せるか
- 税率ごとに1回だけ丸める計算になっているか
- 取引先ごとに、登録番号の欄を出し分けられるか
- いまの請求書のデータを取り込めるか
乗り換えは、まず直近の請求書1か月分を新しい型で作り直して、金額が旧型と合うかを確かめます。合えば、翌月から新しい型で発行します。
3場面が無く枚数も少ない会社は、ソフトにも代行にもお金をかけないでください。直した無料テンプレートで十分です。
一方、経理代行が合わない会社もあります。2023年4月から2026年9月までに、経理代行の依頼をお断りした・合わなかった例は7件です。理由は、現金取引が中心で証憑がそろわない(3件)、決算直前の丸投げで期限に間に合わない(2件)、税務の判断まで求められた(2件)でした。
現金取引が中心で証憑がそろわないなら、外に出す前に証憑の集め方を整えてください。整う前に任せても、締めは早まりません。
任せた場合の変化の例もあります。2023年4月から2026年9月までに経理代行を担当した9社では、月次の締めが平均で翌月20日から翌月8日に、約12日早まりました(最も早い会社は翌月5日)。
外注先を探すとき、AIの答えはどこを出典にするのでしょうか。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました(業種調査)。
経理代行会社を探す質問では、出典の28.8%が比較・紹介サイト、56.1%が経理代行会社の公式サイトでした。外注先は、公式サイトの料金と範囲の記載で比べてください。
費用の目安は、経理アウトソーシングの費用相場で整理しています。
今日やること:手元の型で3場面を試す
手元の無料テンプレートでは、値引きの行・8%の明細・番号欄の3か所を今日試してください。3か所を試せば、自社の型で直す所が分かります。
手元の無料テンプレートで3場面を試す
- まず、値引きの行を1行足してください。直近1年に税込1万円以上の値引きがあったかも確かめます
- 次に、8%と10%の明細を2行ずつ入れます。税額欄が、税率ごとの合計から1回で丸めた額になるかを見ます。式の例は、税率ごとの合計のセルに税率を掛け、ROUNDDOWN関数(切り捨ての場合)で1回だけ丸める形です
- 最後に、登録番号の欄を確かめます。免税事業者の外注先に渡す型があれば、欄を消した版を分けます
3か所とも問題が無ければ、今の型のまま使ってかまいません。直す所が2か所以上あり、発行が月20枚以上なら、請求書ソフトへの切り替えも比べてください。
記載事項の6項目そのものは、適格請求書の要件6項目で確かめられます。受け取った請求書の処理の流れは、インボイス制度の経理実務にまとめています。
よくある質問
インボイス対応の無料テンプレートなら、そのまま使えますか?
通常の売上の請求には使えます。返品・値引き、8%と10%の混在、免税事業者の3場面では欄か式を直してください。
返品や値引きのたびに返還インボイスを作らなければなりませんか?
返品・値引きの金額が税込1万円未満なら不要です。1万円以上なら返還インボイスの記載事項を満たす書類を渡します。
免税事業者の外注先に、登録番号の欄がある型を渡してもよいですか?
避けてください。登録していない人が適格請求書と誤認される書類を出すことは、消費税法で禁じられています。
無料テンプレートの直しは自分でできますか?外部に頼むべきですか?
欄と計算式の直しは自分でできます。月20枚以上を複数人で作り、記帳まで回らないなら外部へ任せる段階です。
経理代行に請求書を任せると、どこまでしてもらえますか?
当社では請求書の発行、受け取り、支払処理を代行します。税務の判断が要る部分は、税理士に確認していただきます。
まとめ: 無料テンプレートは3場面だけ直して使う
インボイス対応の無料テンプレートは、返品・値引き、税率の混在、免税事業者の外注先の3場面だけ直せば使い続けられます。返品・値引きは税込1万円以上のときに返還インボイスが要ります。税率が混ざるなら、端数は税率ごとに1回だけ丸めます。
免税事業者の外注先には、番号欄を消した型を渡してください。発行が月20枚以上で作る人が複数なら、型を直すより、ソフトか外部委託を比べる段階です。
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