個人事業主が外注費の請求書を受けたら、「給与を払っているか」「消費税の計算方法」「相手が家族か」の3点で扱いが決まります。会社向けの解説をそのまま当てはめると、要らない源泉徴収をしたり、経費にならない支払いを計上したりします。
従業員のいない個人事業主なら、税理士報酬や原稿料も請求額のまま払えます。生計を一にする家族への外注費は、請求書があっても経費になりません。
この記事は、外注先に仕事を出していて、届いた請求書の処理を自分でしている個人事業主向けです。会社の経理担当者向けの仕訳は、別の記事で扱っています。
※ 2026年10月時点の情報です。源泉徴収・インボイスの経過措置・家族への支払いの扱いは、2026年10月25日に国税庁の案内で確認しました。
この記事でわかること- 従業員のいない個人事業主が源泉徴収をしなくてよい理由と、人を雇ったあとの変化
- 登録番号の無い請求書が、消費税の計算方法ごとにどう効くか
- 家族に払う外注費が経費にならない条件
- 自分で処理を続けるか、外に任せるかの分かれ目
個人事業主の外注費の請求書は、会社と何が違う?
個人事業主の外注費の請求書は、源泉徴収の要否・消費税・家族への支払いの3点で、会社と扱いが変わります。
あわせてsweeepの請求書は旧資料のまま決めるとNGもご覧ください。
関連する内容としてAI OCRの請求書読み取りで防げない誤り4つも公開しています。
外注費とは、自分の事業の仕事の一部を、雇っていない人や会社に請け負わせた対価です。所得税の計算では、事業の必要経費になります。
会社は、給与を払っているかどうかに関係なく、士業の報酬などから源泉徴収をします。個人事業主は、給与を払っていなければ源泉徴収が要りません。
消費税も、個人事業主の多くは免税事業者か簡易課税です。その場合、外注先の登録番号は納める消費税の額に影響しません。
もう1つの違いは、家族に仕事を出しやすいことです。同じ家計の家族への外注費は、所得税法で経費から外されます。
まとめると、給与を払っていなければ源泉は不要です。免税事業者と簡易課税なら登録番号は影響せず、同じ家計の家族への外注費は経費になりません。自分が外注先として請求書を出す側なら、書き方は外注費の請求書の書き方で扱っています。
給与を払っていない個人事業主は、報酬の源泉徴収をしなくてよい
従業員に給与を払っていない個人事業主は、税理士報酬や原稿料を払っても源泉徴収をしません。
国税庁のタックスアンサー No.2502は、給与の源泉徴収義務が無い個人は、弁護士報酬などの報酬から源泉徴収しなくてよいとしています。
常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人も、源泉徴収は要りません。家政婦のような家事の手伝いの人だけを雇っている場合です。
ひとりで事業をしている個人事業主が、個人の税理士から報酬55,000円(本体50,000円・消費税5,000円)の請求を受けた例です。55,000円をそのまま振り込みます。
| 立場 |
振り込む額 |
預かる源泉 |
| 給与を払っていない個人事業主 |
55,000円 |
0円 |
| 従業員に給与を払う個人事業主 |
49,895円 |
5,105円 |
人を雇って給与を払い始めると、立場が変わります。給与を払う個人事業主は源泉徴収義務者になり、報酬からも源泉を差し引きます。
家族に青色事業専従者給与を払っている場合も、給与を払っていることになります。家族だけを雇っている個人事業主が見落としやすい点です。
源泉の要る報酬は、原稿料・講演料、税理士・弁護士など士業の報酬といった種類に限られます(国税庁 No.2792)。税率は、1回の支払いが100万円以下なら10.21%です(国税庁 No.2795)。
まず、自分が今年だれかに給与を払っているかを確かめてください。払っていなければ、源泉の計算はしなくてかまいません。
登録番号の無い請求書の影響は、消費税の計算方法で決まる
外注先の請求書に登録番号が無いと困るのは、本則課税で消費税を計算する個人事業主だけです。
消費税の計算方法ごとの違いは、次の表のとおりです。
| 消費税の計算方法 |
登録番号の無い請求書 |
請求書の保存 |
| 免税事業者 |
影響しない |
所得税のために要る |
| 簡易課税 |
影響しない |
所得税のために要る |
| 2割特例・3割特例 |
影響しない |
所得税のために要る |
| 本則課税 |
消費税の7割だけ控除 |
消費税でも要る |
国税庁のインボイス制度の案内によると、簡易課税や2割特例・3割特例では、インボイスの保存は仕入税額控除の要件ではありません。所得税のための請求書の保存は、これまでどおり要ります。
本則課税の個人事業主は、登録番号の無い請求書の消費税相当額の7割だけを控除します。2026年10月から2028年9月までの仕入れが対象です(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
税込33,000円の請求なら、消費税相当額3,000円の7割、2,100円が控除の対象です。残り900円は外注費に含めます。所得税の経費としては、登録番号が無くても33,000円の全額を外注費にできます。
2割特例は2026年分の申告までです。登録をきっかけに課税事業者になった個人事業主は、2027年分と2028年分に3割特例を使えます。
2023年4月から2026年9月までに当社がインボイス制度に対応した22社では、登録番号の記載が無い請求書の受け取りが約30件ありました。免税事業者の外注先への対応の相談は8社です。
当社調べでは2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Gemini)へ本記事の論点5問を質問し、答え10件を得ました。ほかの論点を聞いた答え8件のうち、『登録番号』に触れたものは4件でした。
当社では、免税事業者の個人事業主でも、外注先の登録番号の有無を記録しておくよう勧めています。課税事業者になった年に、すぐ区分できるからです。
家族に払う外注費は、請求書があっても経費にならない
生計を一にする配偶者や子に払う外注費は、請求書を受け取っていても、個人事業主の経費になりません。
所得税法第56条は、生計を一にする親族に払う対価を必要経費に入れないと定めています。受け取った家族の側でも、その対価は所得になりません(国税庁 No.2210)。
家族が専らその事業に従事しているなら、青色申告の個人事業主は青色事業専従者給与を経費にできます。届出が要り、15歳未満の家族は対象外です(国税庁 No.2075)。
同じ家計の家族に請求書を書いてもらい、外注費として計上するのはNGです。形を整えても、所得税法の扱いは変わりません。
家計が別の親族、たとえば独立して暮らす兄弟に払う外注費は、ほかの外注先と同じく経費にできます。
家族に仕事を出しているなら、まず相手と家計が同じかを確かめてください。同じなら外注費をやめます。
青色申告なら、専従者給与の届出を出せば経費にできます。届出の期限は、国税庁 No.2075 で確かめてください。白色申告や届出の無い家族への支払いは、経費にできません。期限や要件で迷うときは、税理士に聞いてください。
個人事業主の外注費の請求書で起きる失敗3つ
外注費の請求書の失敗は、給与に近い支払いを外注費にする、雇ったあとの源泉漏れ、登録番号の区分漏れの3つです。
関連する内容はインボイス制度の外注費で整理しています。
2023年4月から2026年9月までに当社が経理代行で担当した7社では、直した仕訳の誤りが年間約90件ありました。そのうち外注費と給与の区分が約40件、源泉徴収の漏れが約10件です。
7社は個人事業主に限らない当社の担当先で、件数は記録をまとめた概数です。個人事業主だけの内訳は取っていません。
建設業の会社3社の経理代行で、実際に直した仕訳の誤りは接待交際費の扱いでした。外注費の請求書も、名目だけで科目を決めず、支払いの中身で区分するのが当社の判断です。
失敗1: 毎月同じ額を払う人を、外注費にしていた
外注費か給与かは、請求書の名目ではなく、時間や作業の指示を誰が決めているかで判断されます。
迷ったときは、次の5つを見てください。3つ以上が給与側に当てはまるなら、払う前に税理士に聞きます。
- 作業の時間や場所を、払う側が決めている
- 作業の進め方を、払う側が細かく指示している
- 毎月ほぼ同じ額を、時間に応じて払っている
- 道具や材料を、払う側が用意している
- 相手が、ほかの取引先の仕事をしていない
3つ以上とするのは当社の判断です。1〜2つなら、仕事の完成に対して払う外注費として自分で決めてかまいません。
外注費か給与かの失敗は、次の形で起きます。
- 外注費か給与かの失敗で起きたことは、給与と判断されると、源泉の漏れと消費税の控除の否認が同時に出ることです。
- 原因は、請求書の形が整っていたため、働き方を見なかったことです。
- 避け方は、時給×時間の請求や毎月同額の請求を見たら、払う前に税理士に働き方を見せることです。
失敗2: 人を雇ったあとも、報酬を全額振り込んでいた
従業員を雇った個人事業主は、雇う前と同じ手順で税理士報酬を振り込むと、源泉の漏れになります。
- 源泉漏れの失敗で起きたことは、翌月10日の納付が漏れ、あとから不納付加算税の対象になることです。
- 原因は、給与を払う前の「源泉は要らない」という手順を続けたことです。
- 避け方は、最初の給与を払う月に、源泉の要る外注先の一覧を作ることです。
失敗3: 課税事業者になった年も、登録番号を区分していなかった
本則課税に切り替えた年は、登録番号の無い請求書を区分しないと、消費税を控除しすぎます。
- 登録番号の区分漏れで起きたことは、申告の前に、1年分の仕訳の税区分を直す手間が出ることです。
- 原因は、免税事業者だったころの税区分を、会計ソフトにそのまま残したことです。
- 避け方は、課税事業者になる前に、外注先ごとに登録番号の有無を登録することです。
経過措置の税率の計算ミスも、先の22社で約12件ありました。仕訳の誤りの防ぎ方は、外注費の請求書の仕訳で起きる誤りで扱っています。
外注費の請求書の処理は、自分で続けるか外に任せるか?
源泉の要る外注先がいる、本則課税である、記帳が翌月にずれ込む、のうち2つ以上なら外に任せ、1つ以下なら自分で続けます。
| 個人事業主の状態 |
合うやり方 |
| 従業員がいない・外注先は毎月同じ数人 |
自分で続ける |
| 従業員がいて、源泉の要る外注先が毎月いる |
源泉の確認と記帳を任せる |
| 本則課税で、登録番号の無い外注先が混ざる |
記帳を任せ、判断は税理士と確かめる |
従業員がいなく、外注先が毎月同じ数人なら、外に任せる必要はありません。源泉の計算が無く、登録番号の確認も一度で済むからです。
仮に外注先が月5人で、請求書1枚の確認と入力に20分かけているなら、月100分です。月100分で済むなら自分で続けてかまいません。
任せるかどうかの目安は、源泉の要る外注先がいる、本則課税である、記帳が翌月にずれ込む、の3つのうち2つ以上です。当社の判断では、2つ重なると確認の手間が毎月増え、記帳の遅れが申告まで残るためです。
3つのうち2つ以上に当てはまるなら、源泉の確認を先に任せてください。源泉は翌月10日の納付期限があり、漏れるとあとから加算税がかかるからです。
業者に聞く質問は、次の3つです。
- 源泉の要る外注先の判定と計算は、どちらが担当しますか。
- 登録番号の無い請求書の税区分は、誰が確かめますか。
- 外注費か給与か迷う支払いは、税理士へどう引き継ぎますか。
費用は、任せる範囲ごとに見積りを取ってください。見積りは、月の請求書の枚数と、源泉の計算を含むかで比べます。
そのうえで、自分が記帳にかけている時間と並べます。見積りが、自分の月100分の作業に見合わないなら、自分で続けて判断を保留しません。
当社は2023年4月から2026年9月までに、請求書の受け取り・支払処理の代行を25社で担当しました。1社あたり月20〜150枚、全体で月約1,800枚の請求書を扱っています。
現金払いが中心で、請求書や領収書がそろわない個人事業主には、任せることを勧めません。同じ期間に当社が依頼をお断りした・合わなかった例は7件です。うち3件は現金取引が中心で証憑がそろわない、2件は税務の判断まで求められた例でした。
外注費か給与かのような税務の判断は、記帳の委託先ではなく税理士の業務です。手がいっぱいの税理士事務所から、業務を分担できないかという問い合わせがあり、業務を分担する提携を結びました。記帳は当社、税務の判断は税理士という分け方です。
業者を探すときは、比較サイトだけで決めないでください。当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Claude)へ経理代行・記帳代行に関する質問を50問聞き、答えの出典668件を種類ごとに数えました。
費用・選び方・税理士との違い・依頼できる範囲を調べる質問では、回答の85.0%が経理代行会社の公式サイトを1つ以上出典にしていました(当社の業種調査)。
同じ調べでは、10件の答えのうち、触れていたのは進め方の手順は0件、費用の金額(◯円)は5件、専門家への相談は5件でした。
個人事業主の経理全体の任せ方は、経理代行は個人事業主でも使える?で、帳簿のつけ方は個人事業主の帳簿のつけ方で解説しています。
よくある質問
従業員のいない個人事業主は、外注先の報酬から源泉徴収しますか?
給与を払っていない個人事業主は、税理士報酬や原稿料を払っても源泉徴収は要りません。請求額をそのまま払います。
個人事業主を雇ったら、外注費の源泉徴収は変わりますか?
変わります。給与を払う個人事業主は源泉徴収義務者になり、士業や原稿料の報酬から源泉を引き、翌月10日までに納めます。
免税事業者の個人事業主は、外注先の登録番号を確かめますか?
消費税の計算には影響しません。ただし相手を記録しておけば、課税事業者になったときにすぐ区分できます。
家族に払った外注費は、請求書があれば経費になりますか?
生計を一にする家族への外注費は、請求書があっても経費になりません。家計が別の親族なら経費にできます。
外注費の請求書の処理は、どこまで自分で決めてよいですか?
源泉の有無と登録番号の確認は自分で決められます。外注費か給与か迷う支払いだけは、払う前に税理士に聞いてください。
外注費の請求書の処理を外に任せると、何をしてもらえますか?
請求書の受け取り、源泉の計算、仕訳の入力、支払いの準備を任せられます。支払いの承認と税務の判断は残ります。
まとめ: 個人事業主の外注費は、給与・消費税・家族の3点を先に確かめる
個人事業主の外注費の請求書は、給与を払っているか、消費税の計算方法、相手が家族かの3点で扱いが決まります。給与を払っていなければ源泉徴収は要らず、免税事業者や簡易課税なら登録番号は消費税に影響しません。
まず、今年だれかに給与を払っているかと、自分の消費税の計算方法を確かめてください。そのうえで外注先の一覧に「源泉あり」「登録番号なし」「家族」の欄を足すと、来月の請求書から迷わず処理できます。
インボイスへの対応全体はインボイス制度の経理実務で解説しています。
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