SEVEN SENSES
経理実務・法対応9

請求書電子化の進め方|紙からデータへ切り替える5つの手順

請求書電子化は、対象業務の洗い出し→システム選定→取引先合意→運用移行→定着の5ステップで進められます。郵送企業46.9%・郵便料金値上げなど2026年8月時点の調査データを踏まえ、つまずかない進め方を解説します。

請求書電子化の進め方|紙からデータへ切り替える5つの手順

経理業務の棚卸しシート・登録不要

資料を受け取る

請求書電子化の進め方は、対象業務の洗い出し→システム選定→取引先への合意形成→運用移行→ルールの定着という5ステップです。紙の請求書を発行・受領している業務を一度に全部切り替えようとすると、取引先対応と社内の混乱が同時に起きて止まります。本記事では、電子化が進まない理由を調査データで確認したうえで、つまずかずに進める5ステップと、システムの選び方、やってはいけないNG対応までを解説します。

この記事は、請求書の電子化を検討しているものの、何から手をつければよいか分からない中小企業の経営者・管理部門責任者向けです。

※ 2026年8月時点の情報です。

この記事でわかること

  • 請求書電子化の対象範囲と発行側・受領側の違い
  • 調査データで見る、電子化が進まない3つの壁
  • つまずかずに進める5ステップの具体的な進め方
  • 電子化システムの選び方と、やってはいけないNG対応

請求書電子化とは?対象範囲と発行側・受領側の違い

請求書電子化とは、紙で発行・受領していた請求書を、データのまま発行・受領する仕組みに切り替えることです。

請求書電子化とは、印刷・封入・郵送で行っていた請求書のやり取りを、PDFやクラウドサービス、標準規格を使ったデータ送受信に置き換えることを指します。発行側は印刷・郵送の手間、受領側は開封・ファイリングの手間が、それぞれ対象になります。

発行側の電子化は、請求書を作成した後の送付方法を変える取り組みです。郵送していた請求書をメール添付やクラウドサービス経由での送付に切り替えます。

受領側の電子化は、届いた請求書の処理方法を変える取り組みです。紙で受け取ってファイリングしていた請求書を、データのまま保存・仕訳に回します。電子帳簿保存法が定める電子取引データの保存要件は、受領側の電子化と密接に関わります。

要件の詳細は、電子帳簿保存法とは?中小企業の対応3ステップ【2026年最新】で解説しています。

発行・受領のどちらを先に電子化するかは、自社の取引構造で決めます。取引先の数が少なく1社あたりの発行件数が多い会社は発行側から、逆に受領する請求書の件数が多い会社は受領側から着手すると、少ない工数で効果を実感しやすくなります。

私たちが経理BPOの相談を受ける中でも、「発行だけ電子化した」「受領だけシステムを入れた」という片側だけの電子化で止まっている企業をよく見かけます。両側を視野に入れて進め方を設計することが、二度手間を避ける近道です。

請求書電子化が進まない理由|調査データで見る実態

取引先との合意形成・システム選定の迷い・運用ルールの不足という3つの壁が、請求書電子化を止めています。

関連して、外注費に請求書がない場合の経費計上|証憑3つで対応もあわせてご確認ください。

請求書電子化が進まない3つの壁: 取引先との合意形成、システム選定の迷い、運用ルールの不足
請求書電子化が進まない3つの壁

freee株式会社は2024年4月9日〜12日、従業員数11〜1,000名の企業の経理・総務担当者1,000人を対象に請求業務の現状に関する調査を実施しました。主な請求書発行方法は「手作業での郵送」が46.9%で最多、クラウド請求書26.3%、メール送付25.6%という結果でした。

比較軸を決めきれずシステム選定で止まる企業や、移行後の運用ルールを決めないまま先送りする企業も、私たちが受ける相談の中で少なくありません。電子化の遅れの背景にあるのは、制度理解の不足よりも取引先対応という一番地味な作業。

同調査では、電子化のボトルネックとして「取引先に関する対応・合意取得」が最大の課題に挙がり、クラウド請求書を利用する企業のうち5割を超える企業が、取引先からの理解・合意取得を負担と回答しています。郵送がメインの企業のうち7割以上が「対策未定・対策なし」という結果も出ており、電子化はまだ道半ばです。

日本商工会議所・東京商工会議所は2024年5月20日〜6月14日、バックオフィス業務の実態調査を実施しました。売上高1千万円以下の事業者の25.8%がe-Taxによる電子申告に未対応という結果が出ています。請求書に限らずバックオフィス全体のデジタル化の遅れがうかがえます。

背景には、2024年10月の郵便料金の値上げもあります。日本郵便は2024年6月13日、定形郵便物(25g以下)の料金を84円から110円に引き上げると発表しました。月100通の請求書を郵送している会社では、値上げ後は月1万1,000円のコストがかかる計算になります。郵送を続けるコストは、今後も上がる前提で考える必要があります。

Service経理BPO・記帳代行記帳・請求・支払・給与を、実務ごと引き受けます。同じシステムを自社で使う形もお選びいただけます。

請求書電子化の進め方5ステップ

対象業務の洗い出しから運用の定着まで、5つのステップで請求書電子化を進められます。

関連する内容は、外注費の請求書の書き方で解説しています。

請求書電子化の進め方5ステップ: 対象業務を洗い出す、システムを選ぶ、取引先の合意を得る、運用へ移行する、ルールを定着させる
請求書電子化の進め方5ステップ

最初に電子化する業務範囲を洗い出し、次に自社に合うシステムを選びます。そのうえで取引先に合意を得てから、一部の取引先を対象に運用へ移行し、最後にルールを定着させます。5ステップを一度に進めようとせず、順番に1つずつ片づけることが、途中で止まらないコツです。次の章から、具体的な進め方を見ていきます。

ステップ1〜3|対象業務の洗い出し・システム選定・取引先への合意形成

最初の3ステップは、電子化する範囲を決めてから、システムを選び、取引先に合意を取る順序で進めます。

ステップ1は対象業務の洗い出しです。発行している請求書と受領している請求書、それぞれの件数・取引先数・現在の送付方法を一覧化します。取引先ごとに件数が偏っているケースが多く、件数の多い取引先から電子化すると効果が出やすくなります。

ステップ2はシステム選定です。次の章で解説する3つの軸で、自社の会計・請求書業務に合うシステムを比較します。既存の会計ソフトとの連携可否を、この段階で必ず確認してください。

ステップ3は取引先への合意形成です。調査データが示す通り、この工程が最大の壁になります。切り替え日だけを一方的に通知するのはNGです。変更内容・開始時期・従来方式への切り替え可否を、案内文で丁寧に説明してください。

案内文には、いつから電子データでの発行・受領に切り替わるか、従来通り紙での対応も希望できるか、問い合わせ先はどこかの3点を必ず盛り込みます。取引先ごとに反応の速さが違うため、返信がない先には1〜2週間後に個別で確認する運用にしておくと、合意形成の工程で止まりにくくなります。

ステップ4〜5|運用への移行とルールの定着

一部の取引先から段階的に移行し、運用ルールを固定して定着させます。

ステップ4は運用への移行です。全取引先を一斉に切り替えるのではなく、件数の多い取引先や協力的な取引先から先行して移行します。移行後1〜2ヶ月は、紙とデータの両方が混在する運用になることを見込んでおいてください。

ステップ5はルールの定着です。誰が・いつ・どのシステムで請求書を処理するかを、担当者が変わっても回るマニュアルに落とし込みます。定着させる工程を省略すると、担当者の異動や退職をきっかけに紙の運用へ逆戻りするケースが少なくありません。

移行期間中は、紙で届いた請求書とデータで届いた請求書を、同じ台帳で管理しておくことをおすすめします。どの取引先がどちらの方式かが一覧で分かる状態にしておくと、切り替えの進捗を把握しやすくなり、督促の連絡も迷わずに済みます。

請求書電子化システムの選び方3つの軸

対応範囲・既存システムとの連携・サポート体制の3つの軸で、電子化システムを選びます。

選定軸 確認するポイント 見落としやすい落とし穴
対応範囲 発行・受領どちらに対応するか 受領のみ対応で発行側が手つかずのまま
既存システム連携 会計ソフトへの仕訳連携可否 連携できず二重入力が発生
サポート体制 取引先への説明資料の有無 自社で案内文を一から作ることに

対応範囲は、発行・受領どちらか一方だけに強いシステムも多いため、自社が電子化したい業務がどちらかを先に明確にしてから比較することが欠かせません。デジタル庁は、Peppol(ペポル)という国際標準仕様をベースにした日本向けの標準仕様「JP PINT」を整備しています。対応システムを選べば取引先とのデータ形式の違いに悩まされにくくなります。

既存システムとの連携は、会計ソフトへの仕訳連携が自動化できるかどうかを確認します。手入力の二重作業が残ると、電子化してもかえって業務が増えることになりかねません。仕訳の自動化そのものは、仕訳の自動化方法とは?中小企業ができる4つのステップでも取り上げています。

サポート体制は、契約前の比較段階では見落としやすい軸です。取引先への案内文のひな形を用意しているベンダーもあれば、案内文の作成を自社に任せきりにするベンダーもあります。合意形成が最大の壁になる以上、最後に効いてくるのは料金表よりも案内文のサポート体制。

経理BPO・システム化で請求書電子化の負担を減らす方法

システム選定や取引先対応の負担は、経理BPOへの委託によって大きく減らせます。

当社は補助金を使った会計ソフト・受発注ソフトの導入支援を手がけており、中小企業が電子化のどこでつまずくかを申請の現場で見てきました。制度や機能の理解よりも、取引先対応の説明資料づくりでつまずく企業が多いというのが実感です。

経理BPOに委託すると、システム選定の比較検討から取引先への案内文作成、移行後の運用ルール整備までをまとめて任せられます。自社の担当者は日々の記帳や決算対応に集中しながら、電子化の切り替え作業だけを外部に任せるという進め方も可能です。

経理BPOそのものの委託範囲は、経理BPOとは?メリット3つと費用相場をわかりやすく解説を参考にしてください。

インボイス制度への対応で経理の確認作業がすでに増えている企業も多くあります。関連する負担軽減策は、インボイス経理の負担を軽減する6つの方法【2026年最新】にまとめています。

私も、担当者数名の会社から「電子化したいが取引先対応まで手が回らない」という相談を受けたことがあります。洗い出しとシステム選定だけを自社で行い、取引先への案内と移行後の運用を委託するという分担であれば、社内の負担を抑えながら進められます。自社だけで進め方を判断しきれない場合は、経理BPOの無料相談で、洗い出しから移行までどこまで任せられるか相談することもできます。

請求書電子化でやってはいけないNG対応

取引先への説明を省いて一方的に切り替えると、電子化そのものが取引の障害になります。

請求書電子化でやってはいけないNG対応: NG例は取引先への説明を省く・システムを比較せず決める・移行を一度に全部やる・運用ルールを決めずに始める、OK例は取引先に早めに説明する・複数システムを比較する・一部の取引先から始める・運用ルールを先に決める
請求書電子化でやってはいけないNG対応
注意: 取引先への説明を省くのはNG
切り替え日だけを通知して合意形成を省くと、取引先からの問い合わせ対応に追われ、かえって業務負担が増えます。

システムを比較せずに決めるのも避けたい対応です。発行・受領どちらに強いかを確認しないまま契約すると、結局もう一つ別のシステムが必要になるケースがあります。

移行を一度に全部やることも危険です。私たちが経理BPOの相談を受ける中でも、全取引先を一斉に切り替えて問い合わせが集中し、対応が回らなくなったという相談を受けたことがあります。件数の多い取引先から段階的に進めてください。

運用ルールを決めずに始める進め方も、定着とは逆方向です。誰が処理するかを決めないまま始めると、紙とデータが混在したまま何年も運用が固定されない状態になりがちです。移行と同時に決めておきたいのが、担当者不在でも回るルール。

自社の経理のどこに時間がかかっているかは、経理の現状分析(無料)からご相談いただけます。ご契約を前提としたご案内ではありません。

よくある質問

請求書電子化はどこから始めればいいですか?

まず対象業務を洗い出し、システム選定と取引先への合意形成を経てから移行します。

請求書電子化はどのくらいの企業が対応していますか?

freeeの調査では郵送をメインとする企業が46.9%で、電子化はまだ道半ばです。

請求書電子化で一番の壁は何ですか?

取引先との合意形成が最大の壁で、クラウド利用企業の5割超が負担と回答しています。

デジタルインボイス・Peppolとは何ですか?

請求書データを標準規格でやり取りする仕組みで、日本ではJP PINTとして整備されています。

取引先の合意なしに請求書電子化を進められますか?

送付方法が変わるため、事前に取引先へ説明し合意を得ることが欠かせません。

請求書電子化は経理BPOに任せられますか?

システム選定から取引先への案内、運用ルールの整備まで含めて委託できます。

まとめ: 請求書電子化は「洗い出し→選ぶ→合意→移行→定着」の5ステップで進める

請求書電子化の進め方は、対象業務の洗い出し、システム選定、取引先への合意形成、段階的な運用移行、ルールの定着という5ステップです。郵便料金は今後も上がる前提で考える必要があり、先送りするほど取引先対応の負担だけが積み上がります。経営判断として見るべきは、郵送コストの増加額と、電子化にかかるシステム費用・移行の手間を比べたときにどちらが自社にとって軽いかです。まずは自社が発行・受領している請求書のうち、件数の多い取引先から洗い出すところから始めてください。

進め方の設計や取引先対応の負担が大きいと感じる場合は、経理BPOの無料相談で、自社に合った電子化の進め方を相談することもできます。

Contact

まずは、無料相談から。

「何から始めればいいか分からない」段階のご相談こそ歓迎です。現状を伺い、貴社に合う打ち手を持ち帰りいただけます。